異世界転移は草原スタート!? 勇者はお城でVIP待遇、俺は草原でサバイバル

ノエ丸

文字の大きさ
327 / 333
二人の歌姫編

374.パーティハウス工事中


 夜が明けた。
 一人の少女がある家の一階へと降りてきた。

 その少女は腰まで伸びた燃える様な紅い髪を靡かせ、ある場所へと向かった。

 目的の場所へ着くと少女は一言――

「朝からうるさいんだけど」

「そりゃあ工事してますからね。うるさいですよ」

 文句を言う少女に対して――俺はそう答えた。 

 我がハーデンベルギアのパーティハウスでは朝一から工事が行われていた。
 ちなみに突発的な工事ではなく、前々から予定していた工事だから仕方がない。

「それならそうと昨日の内に言ってよ……あと、その……なんで敬語なの? 最初はそうじゃなかったでしょ?」
「いや……お二人さんが俺の思っている以上に凄い人なんだなーと思って……」
「そうなの――別にいいわよ? いちいち敬語使わなくて。私はその方が楽……そう、楽だし」
「え、マジ? 同年代に敬語使うの結構違和感あるからさ、その方が助かるわ~」
「切り替え早いわね……」

 そう言われましても、クライアントのご意向なら従うしかないわけで……
 俺は取り敢えず敬語を取り払うことにした。

「まあいいわ。それで一体何をしているの?」
「風呂場を作ってるんだよ。工事自体は依頼の前から決まってたから、悪いが我慢してくれ」
「風呂場? なんで貴族しか使わないものを作るの?」

 おいおい、このお嬢さん。
 風呂の魅力を一ミリも知らないとみた。
 それならば出来上がってからその魅力をお伝えしようじゃないか。

「出来たら入るといいさ。良さがわかるからな!」
「そ、そう……なんにしても、もう少し寝てたいんだけど」
「アナが消音の魔道具を持っていたはずだから借りるといい」
「そのアナスタシアがまだ起きて来てないと思うんだけど?」
「じゃあ諦めてもろて」
「ほんと何なのアンタら…………」

 そう言いながらもルージュ嬢は二階へ向かった。
 
 昨日から感じていたが、かなり素直な子だな。
 変に偉ぶらなくて好感が持てる。
 …………なんか視線を感じるな。

 後ろを振り返るとマリアが俺をジッと見つめていた。
 起きるタイミングが一緒だったせいで既にマリアは起きている。
 というか一緒のベッドで寝ていたので起きるタイミングは必然的に同じになる。
 そんなマリアが俺をジッと見つめている。

 う、浮気なんてするわけないじゃないですか……

 そう思いながら工事を進める屈強な男たちへと視線を戻した。
 屈強な男たちが作業を進めながらも、朝食の時間になるまで俺の背中にはマリアの視線が突き刺さっていた。

 ◇

 魔法というものは凄い。
 お昼ごろには風呂場が完成したのもあり、俺は素直にそう思っていた。

 ちなみに今回の工事はちゃんと家主であるアネモス家の許可は取ってある。
 領主様に風呂が欲しいと提案したところ「その程度で一々面会を求めるな、ボケナスが。好きにしろ」と熱い声援を頂いたので勝手に進めることにした。

 ……やっぱりボケナス扱いはどうかと思うが、そんなことを気にしていてはこの人外魔境のドレスラードでは生きていけない。
 シャーリー亭の風呂場を建設した建築家に風呂場の増設を依頼したところ。
 今日この日になったという次第だ。

 なのでルージュたちが泊りに来たタイミングとは、たまたま合致しただけである。

「おう、魔王君。終わったから確認してくれ」
「ありがとうございます。あと、魔王呼びやめてくれません?」
 
 工事が終わった風呂場を確認した。
 
 何ということでしょう。
 キッチンから新たに作られたスペースには脱衣所と風呂場が新たに作られており、家主の意見を存分に取り入れられた造りとなっていた。
 風呂場は広々としており、その大部分を浴槽が占める形の造りとなっている。
 この世界には〈清潔魔法クリーン〉という体の汚れを落とす魔法があるため、体を洗うスペースは最小限に抑えられている。
 代わりにゆったりとできる大きさの湯船が備え付けられている。

 その湯船も大人が二人は余裕で浸かれるスペースがあり、片方には緩やかな傾斜が備え付けられていた。
 その傾斜に寝転ぶことにより、湯船で長時間浸かれる。

 最初に建築家にそう説明した時に「なぜ?」と疑問を持たれたが、実際に体験させる必要はない。
 俺たちが楽しめればそれでいいのだ。

 そんなわけで、我がハーデンベルギアのパーティハウスに風呂が完成した。
 寒い冬にはやはり湯船にゆったり浸かって体を温めるのがいい。
 俺が元の世界から学んだことの一つでもある。
 何せこの世界の住人は〈清潔魔法クリーン〉があるせいで、風呂に入らない。
 〈清潔魔法クリーン〉でからだの老廃物や、汚れが抹消できるので、風呂に入って清潔にする必要性がないのだ。
 なので、この世界の住人で風呂に入るのは貴族くらいしかいない。

 シンプルにそんな施設を持つ余裕があるのは貴族や金持ちくらいだけ、というのもある。
 うちは爺さん以外風呂のすばらしさを知っているので、この提案をした時は満場一致で決まった。
 ちなみに費用はアナもち…………ま、まあ同じパーティなので、仕方がない。そう思うことにした。

 なので一番風呂はアナが入ることになっている。

 俺は〈水生成魔法ウォーター〉で風呂に水を注ぎ始めた。
 それと同時に、キッチンでは水を温める様に石を熱している。

 いつも世話になっているアナの為にも、最高の一番風呂を捧げなくては……
 その一心で俺は魔力を水に変換し続けた。

 ◇

「皆で一緒に入るでしょ?」

 アナのその一言により。
 朝食後に俺、アナ、シャロ、マリアの四人で風呂に入ることになった。

 アナとマリアとなら俺も問題ない。
 むしろウェルカムカモーンだ。
 だがそこにシャロが加わるとなると話が変わってくる。
 アルファポリスのコンプラが怖いのである。
 担当編集さんに言われるだろう「それはちょっと……」と――一体何の話だ??
 
 俺は謎のコンプラ意識の元、シャロとの混浴はあと四年は待ってもらうことにして、三人で入ってもらうことに落ち着いた。

「アンタらどういう関係なの?」

 その会話を聞いていたルージュからの疑問に俺はこう答えた。

「アナとマリアとは……その、ね。シャロとは何もないです…………」
「アンタ。アナスタシア相手に他の女とも関係あるとか正気?」
「姉さんに手を出したら殺しますからね」
 
 元の世界の常識からしても非難されるが……別に良くない⁈ 平等に愛していればそれでいいと俺は思うよ!!
 俺はアナたちが風呂場に向かったのを確認してから双子に告げた。

「お互いが合意の上ならセーフ! セーフなんだ!!」
「うわ……うわぁ…………」
「姉さん。今からでも泊まる宿を変えませんか?」

 クソが!!!! 俺だって割と不可抗力……で……はないかなぁ……
 俺だって男子高校生だもの、俺を好きでいてくれる人間が二人いるならどちらも好きになっちゃうんだ!!
 俺は悪くねえ! デンジだって言っている「チ〇チ〇のせいで…! 逆らえなくてっ俺の周り全部を台無しにしていく…!」って!! ほんと……! マジ……! 抗えん!!

 そこら辺の女よりもアナとマリアの方が圧倒的に可愛いんだ!! くそう……! くそおおおお!!

 俺が地面に蹲るのを双子は憐れみの視線で見下ろしていた。

 まあ正直な話。
 アナとマリアの間でなにやら話はついているようなので、今更浮気も何もないのだろうな。
 
 …………まあいいか。
 
 そう結論付けた俺は、スッと立ち上がると二人はビクッと身構えた。
 

「さて、三人が風呂から出たら何する?」
「何よその切り替えの速さ……」
「クヨクヨしてても仕方ないだろ? で、今日の予定は?」
「……ステージが出来上がるまで休暇を楽しむ、くらいしかやることないわよ」
「そうか……なら観光でもするか?」
「そうね。この街は来るの初めてだから色々みて回りたいわね」
「よし。じゃあまずは妹さんをママに紹介するのから始めよう」

 俺はそう言うと玄関へ向かった。
感想 43

あなたにおすすめの小説

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
ファンタジー
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!

よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です! 僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。 つねやま  じゅんぺいと読む。 何処にでもいる普通のサラリーマン。 仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・ 突然気分が悪くなり、倒れそうになる。 周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。 何が起こったか分からないまま、気を失う。 気が付けば電車ではなく、どこかの建物。 周りにも人が倒れている。 僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。 気が付けば誰かがしゃべってる。 どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。 そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。 想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。 どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。 一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・ ですが、ここで問題が。 スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・ より良いスキルは早い者勝ち。 我も我もと群がる人々。 そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。 僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。 気が付けば2人だけになっていて・・・・ スキルも2つしか残っていない。 一つは鑑定。 もう一つは家事全般。 両方とも微妙だ・・・・ 彼女の名は才村 友郁 さいむら ゆか。 23歳。 今年社会人になりたて。 取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな

七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」 「そうそう」  茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。  無理だと思うけど。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。 ​「作品への感想代わりの『いいね❤️』や『エール📣』、心よりお待ちしております。」 ​「【応援のお願い】『いいね❤️』や『エール📣』をいただけると、作者のモチベーションが爆上がりします!」 ​「最後までお読みいただきありがとうございます。温かい『いいね❤️』が更新の支えです。」

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。