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「今日、発情期来るから」
河原にかけた声は思ったより素っ気なくなってしまった。
「…はあ!?」
思わず椅子を蹴倒しそうになりながら河原がこっちを向く。
「道理で…いや、休暇は?準備とかしてないですよね?っていうか前もって言いますよね普通!?」
「休暇は榊君を通じて申請しといたよ」
「あんのαDom…!」
河原が唸るように言うが、今回は僕が悪い。なんとなく伝えそびれてたし、秘密にしておくよう言ったのも僕だ。その時の榊君の表情はちょっと滑稽だったね!
…僕は、あまり発情期が好きじゃない。いつも気分が落ちてしまう。
「準備してほしいものは紙に書いたから、今から買いに行ってほしいんだけど」
「今からぁ?この状態のあなたを置いて?」
「僕は大丈夫だから、早く行ってきてよ」
「…わかりましたよ、すぐ帰りますからね!」
河原はどたばたと準備をすると、すぐに出て行ってしまった。家の中が静まり返る。
…巣、作りたいな。
河原が脱ぎ捨てて行った普段着を集め、追加で物干し竿やタンスから服を集めて河原のベッドに山積みにし、その中で丸くなる。
河原のフェロモン足りないなあ、そりゃそうか。洗ったものばかりだし。
ちなみにこないだ使った縄…はやめといた。当然これも洗ってあるし、僕が縛られてるみたいで、なんかそれはダメな気がした。
発情期は嫌いだ。本能とか、感情とかがさらけ出されるこの時期は、自分が弱くなったみたいで嫌だ。
病気の時はいつも付きっきりで看病してくれた親は、発情期の時は何もしてくれなかった。当たり前だ。出来ることなんて何もない。分かってる。
寂しくて泣いても誰も助けてくれやしない。ただ、1人で耐えるしかない。
今回は河原がいるから何とかなると思ったんだけどな!どうやら相当根深かったみたいだ。
こんな少ないフェロモンでも、体は暑くなってくる。暑くて「巣」を剥ぎ取りたくなるけど、Ωの本能はそれを嫌がる。
河原がいればこんなことに悩まなくて済むだろうか。でも送り出したのは僕だ。事前に言っとけばよかったのに、弱った僕を見せたくないとDomの本能が邪魔をした。
…なんか泣けてくるね!
「っく、ぐす、」
疼く体に気づかないふりをして、僕は涙をぽろぽろこぼす。いつもより落ち込み度がひどいかもしれないな。番がいるのに、なんでこんなことやってるんだろ。
しばらく泣いていると、河原が帰ってくる音がした。早く泣き止まないと。Subにこんな弱いとこ見せちゃだめだ。それにαに弱みを握られたくない。
「…ふぇ、ぐっ、ひっく」
あれ?おかしいな。ますます酷くなってないか?
「ああもう!泣くくらいなら前もって…」
部屋に入ってきた河原が止まる気配がした。なんだ、僕が何かしたか。
「…あなた、まともな巣が作れるんですね」
失礼なって言いたかったけど、声が出ない。巣の上から河原が僕を抱きしめたから、声が詰まってそれどころじゃなかった。
「僕、巣作りを見たの初めてなんですよね。なんというか、ちょっと嬉しいです」
「う、るさいっ゙」
「はいはい、もう僕が戻ってきたから安心ですよ~」
プレイ中の僕の口調を真似して河原が僕をもみくちゃにする。だから嫌だったのに。僕が河原より偉いのに。
「作ってくれて嬉しいですけど、僕が帰ってきたから巣はいりませんね?」
「まっで、まっ…!」
「あーあ、ひどい顔…」
言葉とは裏腹に愛おしそうに河原が僕の顔を撫でる。こいつ僕と似たような性癖持ってるんじゃないか?
「もっ、早く抱けばいいだろっ」
顔を隠しながら言うと、河原が止まる気配がした。多分何か間違えた。河原の声が低くなったから。
「…いいでしょう。お望み通り、手加減しませんから」
その言葉とともに、いきなり服を剥ぎ取られた。その刺激だけでイってしまいそうだったのに、河原は僕を仰向けに押さえつけると、無理やり挿入してきた。こんなに乱暴にされても痛いどころか歓迎するように締め付けてしまうのだからΩの体というのは恐ろしい。
「ひ、ぎ、うぅ~っ!」
目の前に白い星が散る。
「っ、はあ、苦しくないです?」
こんなことをしといてよく言える。いっそ恨めしい。
「いいから、もっとっ」
だから、この声は僕じゃない。媚びるように自分から腰を振ろうとしてしまうのも、僕じゃない。
「…分かりました、動きますよ」
手加減しない、と言った通り、河原は本当に容赦なく僕を抱いた。途中から抑制剤が切れてタガが外れたのか、むせかえるようなフェロモンの中で貪るように腰を振られて僕は何度も意識を飛ばした。その間だけは嫌なことを忘れられた。
理性なんてほとんどないはずなのに行為の最中河原が僕をきつく抱きしめたり、気を使うような言葉をかけてくるから、僕に気があるのかも、なんて勘違いしそうになったりもして。一方的に縛り付けたくせに。
「…あ、起きました?」
発情期明け、河原が目を開けた僕を覗き込んでくる。
「休暇延長しておきましたよ。あんなカツカツじゃ休めないでしょう」
「発情期は体力の回復が早いんだからいいの!僕のSub君は心配性だな~」
頭を撫でると、河原が一瞬安堵した表情になった。なんだその顔。
「知ってますよそのくらい。全くふてぶてしい…同情して損しました」
と思ったら憎まれ口が飛んできた。どうも今のは見間違いだったらしい。
…よし、いつも通り!今晩のプレイが楽しみだな!!
ちなみに僕の発情期の周期はなぜかその次から河原に筒抜けになっていて、休暇は前もって申請されるようになった。なんでだ。
河原にかけた声は思ったより素っ気なくなってしまった。
「…はあ!?」
思わず椅子を蹴倒しそうになりながら河原がこっちを向く。
「道理で…いや、休暇は?準備とかしてないですよね?っていうか前もって言いますよね普通!?」
「休暇は榊君を通じて申請しといたよ」
「あんのαDom…!」
河原が唸るように言うが、今回は僕が悪い。なんとなく伝えそびれてたし、秘密にしておくよう言ったのも僕だ。その時の榊君の表情はちょっと滑稽だったね!
…僕は、あまり発情期が好きじゃない。いつも気分が落ちてしまう。
「準備してほしいものは紙に書いたから、今から買いに行ってほしいんだけど」
「今からぁ?この状態のあなたを置いて?」
「僕は大丈夫だから、早く行ってきてよ」
「…わかりましたよ、すぐ帰りますからね!」
河原はどたばたと準備をすると、すぐに出て行ってしまった。家の中が静まり返る。
…巣、作りたいな。
河原が脱ぎ捨てて行った普段着を集め、追加で物干し竿やタンスから服を集めて河原のベッドに山積みにし、その中で丸くなる。
河原のフェロモン足りないなあ、そりゃそうか。洗ったものばかりだし。
ちなみにこないだ使った縄…はやめといた。当然これも洗ってあるし、僕が縛られてるみたいで、なんかそれはダメな気がした。
発情期は嫌いだ。本能とか、感情とかがさらけ出されるこの時期は、自分が弱くなったみたいで嫌だ。
病気の時はいつも付きっきりで看病してくれた親は、発情期の時は何もしてくれなかった。当たり前だ。出来ることなんて何もない。分かってる。
寂しくて泣いても誰も助けてくれやしない。ただ、1人で耐えるしかない。
今回は河原がいるから何とかなると思ったんだけどな!どうやら相当根深かったみたいだ。
こんな少ないフェロモンでも、体は暑くなってくる。暑くて「巣」を剥ぎ取りたくなるけど、Ωの本能はそれを嫌がる。
河原がいればこんなことに悩まなくて済むだろうか。でも送り出したのは僕だ。事前に言っとけばよかったのに、弱った僕を見せたくないとDomの本能が邪魔をした。
…なんか泣けてくるね!
「っく、ぐす、」
疼く体に気づかないふりをして、僕は涙をぽろぽろこぼす。いつもより落ち込み度がひどいかもしれないな。番がいるのに、なんでこんなことやってるんだろ。
しばらく泣いていると、河原が帰ってくる音がした。早く泣き止まないと。Subにこんな弱いとこ見せちゃだめだ。それにαに弱みを握られたくない。
「…ふぇ、ぐっ、ひっく」
あれ?おかしいな。ますます酷くなってないか?
「ああもう!泣くくらいなら前もって…」
部屋に入ってきた河原が止まる気配がした。なんだ、僕が何かしたか。
「…あなた、まともな巣が作れるんですね」
失礼なって言いたかったけど、声が出ない。巣の上から河原が僕を抱きしめたから、声が詰まってそれどころじゃなかった。
「僕、巣作りを見たの初めてなんですよね。なんというか、ちょっと嬉しいです」
「う、るさいっ゙」
「はいはい、もう僕が戻ってきたから安心ですよ~」
プレイ中の僕の口調を真似して河原が僕をもみくちゃにする。だから嫌だったのに。僕が河原より偉いのに。
「作ってくれて嬉しいですけど、僕が帰ってきたから巣はいりませんね?」
「まっで、まっ…!」
「あーあ、ひどい顔…」
言葉とは裏腹に愛おしそうに河原が僕の顔を撫でる。こいつ僕と似たような性癖持ってるんじゃないか?
「もっ、早く抱けばいいだろっ」
顔を隠しながら言うと、河原が止まる気配がした。多分何か間違えた。河原の声が低くなったから。
「…いいでしょう。お望み通り、手加減しませんから」
その言葉とともに、いきなり服を剥ぎ取られた。その刺激だけでイってしまいそうだったのに、河原は僕を仰向けに押さえつけると、無理やり挿入してきた。こんなに乱暴にされても痛いどころか歓迎するように締め付けてしまうのだからΩの体というのは恐ろしい。
「ひ、ぎ、うぅ~っ!」
目の前に白い星が散る。
「っ、はあ、苦しくないです?」
こんなことをしといてよく言える。いっそ恨めしい。
「いいから、もっとっ」
だから、この声は僕じゃない。媚びるように自分から腰を振ろうとしてしまうのも、僕じゃない。
「…分かりました、動きますよ」
手加減しない、と言った通り、河原は本当に容赦なく僕を抱いた。途中から抑制剤が切れてタガが外れたのか、むせかえるようなフェロモンの中で貪るように腰を振られて僕は何度も意識を飛ばした。その間だけは嫌なことを忘れられた。
理性なんてほとんどないはずなのに行為の最中河原が僕をきつく抱きしめたり、気を使うような言葉をかけてくるから、僕に気があるのかも、なんて勘違いしそうになったりもして。一方的に縛り付けたくせに。
「…あ、起きました?」
発情期明け、河原が目を開けた僕を覗き込んでくる。
「休暇延長しておきましたよ。あんなカツカツじゃ休めないでしょう」
「発情期は体力の回復が早いんだからいいの!僕のSub君は心配性だな~」
頭を撫でると、河原が一瞬安堵した表情になった。なんだその顔。
「知ってますよそのくらい。全くふてぶてしい…同情して損しました」
と思ったら憎まれ口が飛んできた。どうも今のは見間違いだったらしい。
…よし、いつも通り!今晩のプレイが楽しみだな!!
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