天地の瞳

あのにめっと

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「そういうわけで、ラント、お前はメーア殿下の伴侶に選ばれた。くれぐれも粗相のないように」
「はい!」
 声だけは元気よく返事をしながら、俺は困惑していた。
 どうしてよりによって俺が選ばれちまったんだ…?



 この国の人間は目の色によって4種類の人間に分けられる。それぞれ「天の瞳」「空の瞳」「風の瞳」「地の瞳」と呼ばれている。「天の瞳」と呼ばれるのは王族だけ。彼らはこの国にしかいない特別な存在だ。本当に快晴の時の空のような青い瞳をしていて、そして絶大な魔力を持っている。
 なぜかってそりゃ、魔力は目に宿っているからだ。目が青いのは魔力量が多い証だ。王族じゃなくても「空の瞳」と呼ばれる魔術師連中なんかは青っぽい目の奴らが多い。「風の瞳」と呼ばれる一般市民は緑色の目をしていて、日常生活で使う魔法くらいなら扱える。で、目に青みの欠片もない「地の瞳」には魔力がほとんどない。
 じゃあ地の瞳はさぞかし苦労するだろうって?そういうわけでもない。地の瞳は魔力がないのを補うかのように筋肉が発達しやすい。そんな感じで騎士にうってつけな地の瞳達はほぼ無条件に王都で雇ってもらえるのだ。何やるかっていうと、街の犯罪を取り締まるとかたまに辺境の魔物を倒すとか、そういうやつだ。この国は高い山の上にあるし、天の瞳はマジで強いんで喧嘩売ってくる他国とかいない。天の瞳の目が届かない細かいところを地の瞳が担当するわけだ。正直訓練は「本当にここまでする必要あるか?」ってくらいめちゃくちゃきついんだが、給料はいいし魔力なしでも生活できるように魔石が支給されるんで恵まれている。俺みたいな魔力なしの上孤児みたいな詰んだ人間にはありがたい制度である。そう、俺も地の瞳だ。

 ただ、地の瞳が集められるのには他にも理由がある。それは天の瞳や空の瞳の体質に関係している。
 魔力量の多い彼らは、定期的に余剰の魔力を発散しなければならない。そうしないとどうなるかというと、「発情」するらしい。笑っちゃいけない。俺も最初はそんなことで、と思ったが、発情すると誰彼構わず押し倒そうとするわ、周りも周りでそれこそ魔法に魅せられたようにそいつを襲うわで大惨事になるらしい。発情の度合いが重くなると寝食も忘れてセックス漬けになって餓死するとかあとは普通に発狂するとかいう話もあって、結構恐ろしいのだ。
 で、発情を予防するためには魔力を消費する必要があるんだが、日常で使うような魔法で発散されるなら問題になってないわけで、かといってでかい魔法を何回も使えば先に体力が尽きるし相応の被害が出る。手っ取り早いのは魔力を他の奴に流すことらしい。粘膜接触は魔力の通りがいいので結局セックスすることになるんだが、それでも発情してしまうよりは断然マシだそうだ。魔力は魔力の低いやつに流した方がよく通る。中でも地の瞳は他に比べてめちゃくちゃ魔力をよく通す。だから魔術師連中あたりはよく地の瞳を誘っちゃセックスしてる。俺?俺は空の瞳とヤったことはない。めちゃくちゃ気持ちいいらしいけど、空の瞳の連中の誘いに応じたことはない。たとえそれがとんでもない美女だとしてもだ。なんかそういうのヤだから。給料も出ないし。面倒なことになったらやだし。
 でも、王族、天の瞳レベルになるとそれでも発散しきれない。性交で賄おうとしたら、それこそ四六時中ヤってないといけないレベルだ。本末転倒すぎる。ちなみに俺達に支給される魔石は畏れ多くも王族様方自らが魔力を込めているらしいが、そんなの微々たるものだ。
 しかし天の瞳には特別な方法があるのだ。それは目から直接魔力を出して相手の目に流すこと。しかもその相手は地の瞳じゃないといけない。これが1番効率のいい方法で、彼らを憐れんだ神が授けた能力なんだとか。人間に魔力を与えたのも神ってことになってるんだけどな。
 そして王族にはこれまた特異な性質がある。男しか生まれないのだ。しかも彼らには子宮があって、男なのに女を孕ませることは出来ず、自分で子供を産むんだと。これも昔世継ぎを巡る王妃(今じゃ死語だ)達の醜い争いを見て悲しんだ神がどうたらって聞いたけど、それにしちゃ王位継承権を巡る争いはその後も結構起きてるらしい。当人同士が争うならいいんだろうか?よく分からんが、まあとにかく事実なので仕方ないのである。
 で、地の瞳にも男しかいない。まさに地の瞳は天の瞳のために用意されたような奴らってわけだ。
 そういうわけで、王族は適齢期になると地の瞳達の中から伴侶を選ぶ。膨大な数からどうやって選ぶんだよって感じだが、なんかこう見たらビビッとわかるらしい。いいのかそれで。生涯の伴侶だぞ。ちなみに空の瞳の方は、色んな奴とヤリまくって1番気に入った相手を伴侶にするらしい。こっちはこっちで爛れている。
 それで話は冒頭に戻る。なんと俺、メーア殿下の伴侶に選ばれちゃったようなのである。

 メーア殿下の伴侶に選ばれた。そう聞いたら皆名誉なことだと思うだろう。今の国王様はもうほとんど引退しているようなもので、メーア殿下が主な執務にあたっている。つまり乱暴に言えばメーア殿下は既にこの国の王様みたいなものだ。その伴侶となるのだから名誉でないはずがない。
 で、もし当事者になったとしたら、緊張で大変なことになるかもしれないし、嬉しくて内心飛び上がって喜ぶかもしれない。しかし残念なことに、俺はどちらでもなかった。「ええ…嫌だ…」という感想しか湧いてこなかったのである。
 めんどくさいっていうのもなくはない。天の瞳の伴侶とか国中はもちろん国外まで知れ渡るからな。でも別に礼儀作法とかは騎士のやり方のままでいいし、何か勉強しなきゃいけないわけでもないし、そこはそんなに気にしてない。問題はそこじゃないんだ。
 なぜってそもそも俺には男を掘る趣味はない。男が性欲の対象になったことなんてないし、むしろそういうのに嫌悪感すらある。申し訳ないがさっきの言葉で鳥肌が立ったくらいだ。いくら殿下が王族にいがちな小柄で線の細くて金糸のような髪と透き通るような青の瞳の持ち主だったとしても、股間にはアレが付いてるんだぞ。しかも子宮だって女みたいに膣があるわけじゃなくて、ケツの中にあるらしい。ケツとか女相手ですら無理だ。ましてや殿下のケツを?ありえない。なんで殿下もよりによって数いる地の瞳の中で俺なんかにビビッときちまったんだ。騎士団の連中にはそっちもイける奴も多いんだからそういう奴の方がいいじゃんか。メーア殿下って結構あのすました感じがいいって人気なんだぞ。「氷殿下」とか呼ばれてるし。ほんとよく分かんねえな。
 それから天の瞳達が魔力を流す方法も好きじゃない。さっき目から魔力を直接出すって言ったが、普通魔力ってやつを放出するためには対象と効果を指定しないといけないらしい。そうでないと行き場を失った魔力が暴発するからだ。これを指定するのが呪文ってやつだな。じゃあ目から魔力を流す場合どうなるか。対象は当然視線の先の存在、つまり相手の地の瞳になる。そして効果は「命令」として口に出す。地の瞳はそれに抗えない。従いたくて従うならまだしも、それって操られるのと一緒じゃねえか?
 俺のような人間を保護してくれている国や王家への恩義は一応あるし、騎士としての忠誠心だってそれなりにはあるつもりだ。だけどそれとこれとは話が違う。こんなことなら早めに身を固めておくべきだったかなあ。さすがに既婚者は伴侶候補から除外されるのだ。でもそんな理由で結婚させられる嫁さんも可哀想だな。そもそも俺恋愛とかに興味なくて、後腐れないからって理由で娼館通いしてたくらいだし。仕方ない、そういう仕事だと思ってなんとか頑張るか…。それが出来ないから困ってるんだけど、そもそも俺にNOという権利ないし。拒否したら殿下とこの国が大変なことになるわけだし。だけど勃たなきゃ子作りできないと思うんですがねえ…。俺への重圧半端ないな?ほんとなんで俺なんだよ。確かにこの前メーア殿下の伴侶選びのために地の瞳が集められたし、その中に俺もいたけど、まさか俺が選ばれるなんて思わなかったんだよ。別の奴じゃダメなの?地の瞳大勢いるんだし、ほんとに俺以外にもビビっときたやついなかったの?



 時間は無情に過ぎていく。あれよあれよという間に殿下との結婚式が済み、初夜が来てしまった。どうすんだ俺。今日1日殿下と一緒にいたけどやっぱ勃つ気がしねえぞ。見れば見るほどやっぱ男なんだよな~って思っちまってダメ。一周回って殿下に申し訳ねえな…。
 先に体を洗っていかにもな感じのでかいベッドに座った俺はずっとそんなことを考えていた。風呂には魔石があったけど魔法でなんでも出来る殿下用とは思えないから、伴侶用なんだろうな。そうこうしているうちに殿下が風呂から上がってきた。いい香りが漂ってくるしチラッと見ると女っぽいけど、やっぱ骨格が男なんだよなあ…。
「ラント」
「はい」
 ほら、声もしっかり男だ。
「…私を抱くのは無理だという顔をしているな」
「…」
 やっぱバレるよなあ。伊達に王族してないもん。感情の読み合いに長けてる上流階級の方々にとっては俺みたいに素直な奴の頭の中なんて筒抜けだろう。
 殿下が俺の隣に座る。殿下は俺より頭2つ分くらい小さい。俺がでかいっていうのもあるけど、子供みたいだ。雰囲気だけなら俺よりめちゃくちゃ大人っぽいけど。
「地の瞳といえど、好みはある。それは重々承知しているつもりだ。済まない。だが君を見た時、君しかいないと思ってしまったんだ」
 んなわけあるか俺は嫌だと反射的に言いたくなるがそれよりもあまりにも殿下が気遣うような話し方をするから逆に申し訳なさすぎて殿下と目を合わせられない。他のことだったら比較的簡単に覚悟を決められるが、こればかりはちょっと厳しい。想像するだけで悪寒がするけどせめて俺が入れられる側ならセックスするという目的は達成できるんだが、世継ぎを作る役割のためには俺が殿下の中に入れなければいけない。俺も腹を括るべきだし、選ばれたからには慣れていくべきだ。だけど踏ん切りがつかない。
 殿下が隣にいるのにやっぱりそれで頭がいっぱいになって言葉すら出てこない。さすがに何か言わないと不敬だ、と思ったその時、殿下が口を開いた。
「…私とて無理強いはしたくない。だが…手を重ねてもいいだろうか?少しだけでも、魔力を流したい」
「…わかりました」
 それくらいなら出来る。というかそれくらいはするべきだ。そう思って殿下の横に手を置く。その上に殿下の小さい手が乗る。
 ぞわっ、と「何か」が手を通じて全身に流れ込んだ。本能的に逃げたくなるような、鳥肌が立つような感覚がしてそれはほとんどが通り抜けていったが、残ったそれが今度は俺の体を燃えるように暑くした。俺は一瞬で理性を奪われた。
 誰でもいいから今すぐぶち犯したい。早くこれを放出したい。そう思って隣の人間を見る。その瞬間、俺は吸い込まれるような青に閉じ込められて、そこからさらにあの「何か」が流された。
横になれ・・・・目を閉じろ・・・・・何も聞くな・・・・・何も・・話すな・・・
 その音が聞こえると同時に、俺は全てを奪われた。

 俺はベッドの上に寝かせられていた。誰かが俺のをしゃぶっていて、その間中ずっとあの何かを流され続けている。おかげでちんこが爆発しそうに熱くて、めちゃくちゃ射精したいのになんでか知らないけどそれが出来ない。早くこいつを犯したいのに、指1本動かせない。
 気が狂いそうになったその時、口が離れていった。そして、何か別の穴が押し当てられる。動きを封じられていなければ一気にぶち込んでいたであろうその穴に、じれったいほどゆっくりと俺のものが飲み込まれていく。なんだこれ?口とも女の穴とも違う。だが熱くてぬるぬるしていて気持ちいい穴であることは同じだ。そしてその中で唯一馴染みのある部分に触れて、そんなのどうでもよくなった。
 これは「女」だ。ここに射精したい。孕ませたい。そんな欲望で頭が塗りつぶされる。やがて穴が動き始めて、さっきまで出なかった精液が勢いよく上がってくるのを感じて…そこからは記憶がない。



 朝だ。開けた目に光が差し込んでくる。眩しさに目を細めたところで…俺は急いで起き上がり、トイレに駆け込んで、吐いた。もう何も出なくなるまでずっと。
 全部思い出した。油断していたところに思いっきり騙されて男のケツを掘らされた。でも1番気持ち悪かったのはそれを気持ちよく感じてしまった俺自身だ。
 すごく気持ちよかったのだ。自由が奪われていなければ殿下の腰を掴んで泣こうが喚こうが朝まで犯し抜いていただろう。それくらい気持ちよかった。女よりも。
 多分あの時流された魔力のせいだ。過剰な魔力は発情を招く。それは地の瞳だって同じに違いない。しかも持てる魔力が少ない分、多分少ない魔力で発情してしまうのだ。そして殿下はそれを分かってて俺に理性を失うくらいの魔力を流した。それでヤってる間もずっと魔力は流され続けていた。
 何が「無理強いはしたくない」だ。発情させて自由を奪って、そんなんレイプだろ。ただの棒扱いじゃねえか。しかも起きたらいないってどういうことだよ。文句のひとつも言わせないつもりかよ。いや顔を見たらもう色々思い出してダメだろうけど。
 散々吐いた後でも食事も鍛錬も普通にこなせるのが騎士の悲しい性だ。少しでも気を紛らわせようと鍛錬に打ち込んでいたら「熱心だな、殿下の伴侶としての自覚があるのはいいことだ」と団長に褒められた。笑うしかなかった。
 そんで夕方には娼館に行った。男を抱いたショックなんてもう女を抱いて忘れるしかない。不貞とか知らん。当然俺が殿下の伴侶になったことは娼館の女達も知っていて、俺を見て一瞬微妙な顔になったが何も触れないでいてくれた。そうそう、こういう後腐れないのがいいんだよって俺はその日の女を選んだ。
 で、ダメだった。入れるまではよかったんだ。でもそこで萎えた。どうしても昨日のあれを思い出して、あっちのが気持ちよかったって思っちまった。女は慰めてくれたし、何人か他の女も抱かせてくれたけど全然ダメだった。最早勃ちすらしなかった。後ろを試してみることは出来なかった。怖くて。
 帰ってからまた吐いた。女が抱けなくなったどころか、自分で扱いててもあの感触を嫌でも思い出して手が止まってしまう。1回ヤっただけなのに、その1回であのセックスじゃないとダメな体にされていた。俺はずっと殿下の棒生活をしなきゃいけないのか。
 だけどとにかく決定的な事実を突きつけられたことで、俺にもようやく諦めがついた。そもそもこれは俺の問題だ。俺だけが我慢すればいい。そうしたら殿下もこの国も安泰だ。俺も気持ちいいセックスが出来るんだからいいじゃないか。その相手が男なだけで。それが一番問題なんだが。
 湯浴みを終えた殿下が部屋に入ってくる気配がする。一瞬遅れて、殿下が何事も無かったかのように「私の目を見ろ」と言った。命令じゃなかったけど、俺はもうどうでもよくなって殿下の目を見て、その青の中に閉じ込められた。
横になれ・・・・目を閉じろ・・・・・何も聞くな・・・・・何も・・話すな・・・

 1週間が経った。変わったことは何もない。相変わらず殿下とは夜しか会わなくて、会ったら即目と耳と口と体の自由を奪われて発情セックスさせられる毎日だ。ひとつ変わったことと言えば、俺が吐かなくなったくらいか。慣れたわけじゃなくて、吐く気力すらないだけだ。
 その日も鍛錬に打ち込んでいると、団長が話しかけてきた。
「レーゲン殿下がお呼びだ」
 遠目にレーゲン殿下がこちらを手招きしているのが見えた。目が合うとウィンクまでしてきた。メーア殿下の弟で、メーア殿下とそっくりな見た目なのに昔からあんな感じのレーゲン殿下は、それにも関わらず人気が高い。俺にはよく分からないけどメーア派とレーゲン派があるくらいだ。あっこれはもちろん好みの話な。対照的に見えるお2人はなぜか仲が良く、今の所争いの兆しすら見られない。あんな感じだけどメーア殿下の執務を補佐してるらしいし。
 そのレーゲン殿下が何の用だろうか。嫌なこと言われないといいんだけどな。そう思いながら招かれた部屋に入る。
「君、兄さんの伴侶になったみたいだけど上手くいってる?」
 ド直球で嫌な話題来たな。2人きりで部屋に遮音魔法かけられた辺りからなんかそういう予感はしてたけど。思わず言葉が詰まる。
「その様子だと全然うまくいってなさそうだね?大方兄さんが暴走したんだろうけど…」
 レーゲン殿下はため息をつく。
「僕だって君達のことに首を突っ込みたくはないよ?でもあんな兄さんを見てたらさすがに心が痛むんだよね。同じ天の瞳として」
 天の瞳だからなんだって言うんだ。っていうかメーア殿下も悪いだろ。一方的に選んでおいて、ずっと俺をモノ扱いしてるのはあっちの方だ。…と言うのは流石にはばかられた。だってレーゲン殿下の実の兄だし、あっちの方が身分が上だし。
「…まあ、なんだろうな…君も悪い、って言いたいところだけど、君は知らないんだもんな、天の瞳のこと。でも兄さん話したがらないだろうしさ…だから、これ、あげるよ」
 そう言うと、レーゲン殿下は俺に1本の鍵と地図を渡した。
「どうせ兄さんは何も話してないんだろうけど、天の瞳の伴侶になった者には特別な書架に行く許可が降りる。そこで天の瞳について調べてきたらいい。僕に出来るのはここまでだ。それでも君の考えが変わらないようなら、好きにしたらいい。でもこれだけは覚えておいてほしい」
 それまで真面目な話をしているとは思えないほど軽い調子で話していたレーゲン殿下の表情が変わった。感情を押し殺すように、低い声で、レーゲン殿下は言った。
「天の瞳は天啓には逆らえない。絶対に、逃れられないんだ。僕の兄を、これ以上苦しませないで」
 そう言い残すと、レーゲン殿下は椅子から立ち上がり、さっさと遮音魔法を解いて部屋から出ていった。俺は座ったまましばらく動けなかった。誰だよレーゲン殿下は話しやすいって言ったやつ。腰抜かしたんだけど。
 …あの悲しみと苦しみと怒りが混ざったような顔には、確かに少し俺への殺意が込められていたから。
 俺はレーゲン殿下に渡された鍵と地図を手に持つと、ようやく椅子から立ち上がった。



 それからさらに数日経った。
 今日もメーア殿下が部屋に入ってきた。だが俺はベッドに座ってるんじゃなくて、ドアを開けた殿下の目の前にいた。殿下は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐにいつもの表情に戻った。いつものっていうのはあれな、王太子として民の前に出たりする時のすました顔のことだ。何しろ結婚してからこちら、殿下の顔をまともに見た事ないんで。顔じゃなくて目だけを強制的に見せられるもんで。
 でも、その顔が少しやつれ気味に見えるのは、多分見間違えじゃない。
「どうした?今日は随分と積極的だな、自ら操られに来たのか?」
「殿下、1回話したいんですけど」
「私は君に話すことはない。さっさと…むぐ!?」
「俺にはあります。こっちへ来てください」
 殿下が何か言おうとする前に殿下の口を塞ぎ、目を視界に入れないようにしながらベッドまで運ぶ。どう考えても不敬な行為だし、天の瞳レベルだと無詠唱で魔法もぶっぱなせるはずだが、殿下は少し抵抗しただけだった。本気で抵抗できないのを今の俺は知っていた。
 俺はベッドの上に殿下を座らせ、自分もベッドの上に上がり、殿下が息を整える前に深々と頭を下げる。
「まず謝らせて下さい。本当にすみません」
 本当は謝る程度じゃ足りないんだが、他に方法が思いつかない。
「いや待て、君は悪くない、顔を上げろ」
 明らかに狼狽した声がする。まあ確かにな。いきなり土下座されても訳が分からんわな。
「いいえ。俺は天の瞳についてちょっとばかり、いやだいぶ誤解をしてました。伴侶って言っても、ただのちょっとこう都合のいい相手くらいの気持ちでいました。俺じゃなくても、別の地の瞳でも本当はいいんじゃないかって。突然一方的に伴侶として縛られるなんて理不尽だって。でもそれは全くの勘違いだった。天の瞳は天啓によって示された伴侶しか愛せない。その地の瞳にしか魔力を流せない。天の瞳こそ縛られているんだ。合ってますか?」
「…」
 顔を上げて目を見る。あからさまに目をそらされる。
「黙ってちゃ分からないんですよ。あなたには、俺しかいないんだ。それで合ってますね?」
「……そうだ」
「ちなみにいつから俺が好きなんですか?」
「…鍛錬しているお前を見かけてからだ」
「そうじゃなくて、何歳からなんですか?」
「……10になるよりは前だ」
 観念したように、殿下は呟いた。

 レーゲン殿下に渡された鍵で入れた部屋。そこで天の瞳についての文献を漁っていたら、俺の知らなかったことが次々と明らかになった。
 天の瞳は最初は全員魔力があまりない状態で生まれる。そして大体10代、あるいはそれより前に「天啓」を受ける。要するに伴侶を見つけるわけだ。目があんな感じに青くなって魔力量が増えるのはそれ以降らしい。その代わり、天の瞳はそれ以降伴侶の地の瞳に縛られる。その地の瞳にしか魔力を流すことは出来ないし、その地の瞳にしか恋愛感情も性欲も抱けない。というか、天啓を得て初めて恋愛感情も性欲も芽生えるので、初恋であり、最後の恋でもある。
 地の瞳にはそんな制約ない。伴侶に選ばれたことすら気づけないし、普通に誰とでも恋をすることができる。女しか抱けない奴だっている。それをまだ子供の頃から天の瞳が縛るわけにもいかない。だから国民にはこの事実は伏せ、天の瞳は適齢期になったら伴侶を選ぶ、ということにしている。
 天の瞳は持てる魔力量が空の瞳よりはるかに多いから、発情状態に陥るまで何年ももつ。でも適齢期になる頃にはそれもギリギリだ。その時までに伴侶が何らかの理由でその天の瞳と結婚できないことが確定した時点で…天の瞳は謀反とかの罪を着せられて、殺される。魔力量の多い天の瞳は、1度発情したら正気に戻ることは二度とないから。そうなる前に、別の天の瞳が、殺すのだ。
 なんだよこれ。最早呪いじゃんか。そう思った。でも思ったことは、それだけじゃなかった。

 もう隠しても無駄だと思ったのか、メーア殿下がぽつりぽつりと白状し始める。
「…私は君のことがずっと好きだった。でも君は男を抱きたくはないだろう?私は同情や義務感で抱いてほしくはなかった。そもそも君が抱いてくれるとは思えなかった。だから、憎まれたとしても強引に押し倒すしかなかった」
 始める前から諦めるってどうなんだよ?…とは言えなかった。だってさ~!初夜の俺どう考えても嫌そうっていうか吐きそうな顔してたもん。実際嫌だったわけだし。そして殿下には猶予がなかった。これからゆっくり慣れていきましょうね、とかそんな時間なかった。何年も初恋拗らせてて魔力だけは沢山ある殿下がそんな状況に置かれたら、暴走してレイプ紛いのことをするのも分かる。てか俺だったらタイムリミットなくても多分そうしてた。
 そんなことをした後に顔を合わせられるか?多分俺が吐いたり娼館行ったりしたのも筒抜けだろうし。だから殿下はずっと俺のことを避けた。夜だけは仕方ないから、何か言われる前に自由を奪って事を済ませた。そうしてる内に後に引けなくなった。
「…もうほんと、何から謝ればいいのか分からないんですけど」
「君が謝ることは何もない。悪いのは君を縛りつけた私自身だ。君の自由を私が全部奪ってしまった。私の醜い欲望と体質のせいで」
 だめだこりゃ、このままだと平行線だ。でも殿下、重要な問題から目を逸らし続けているんだよな。
「あ~…でもですよ、この生活いつまで続けるつもりです?殿下はお辛くないんですか?」
「…」
 そう、そこなんだよ。殿下絶対辛いじゃん。10日くらいでこのやつれようだぞ?伴侶って一生だぞ?一生こんなこと続けるつもりなの?無理だろ。むしろこのまま死んだ方がいいとか馬鹿なこと考えてるんじゃないだろうな?さすがに次期国王第一候補なんだからそれはないよな?いや、俺のせいなんだけどな。…でも。
「俺もね、そろそろ辛いんですよ」
 殿下が息をのみ、目に涙が浮かんでくる。多分なじられると思ってるんだろう。それにしても結構表情豊かだよな。感情押し殺せてたの最初の一瞬くらいじゃねえか?それって俺に対してだけかな?
 それを嬉しいと思っちまうんだから、俺ももう末期だ。
「だって殿下は俺の事見放題だし、自分の好きなように動けるのに、俺はできないんですよ?俺も殿下が乱れてる姿が見たい。殿下のことめちゃくちゃにぶち犯して、何も考えられなくしたい。あっこれ発情中じゃなくて今もですよ?それにあんな態度取っておいてなんですけど、昼だって会いたいし話したい。もっと殿下のことが知りたいんです。もうそういう風になってるんですよ、俺は。」
 我ながらヤバい奴だと思う。最初は本当に嫌だった。ガチで嫌だった。それについて謝ろうとは思わない。嫌だったのは事実だから。でもレーゲン殿下の話を聞いて書架の本を読んで、よくよく考えたら、もしかすると、今は違うのかもしれないと思い始めた。本当はもう男同士とかそういうのはどうでもよくて、メーア殿下のことひょっとしたら好きになりかけてるんじゃないの?って。で、何をとは言わないけど1人でいる時に試してみた。そしたら全然イけた。
 苦しんでた殿下をよそにそんな身勝手なことを考えているなんて、自分でも認めたくなかった。それに俺という存在が足元から崩れていく気がして、気持ちの整理を付けるのに数日かかった。でもいくら考えても、俺の今の気持ちはそれで間違いなかった。いつから俺の気持ちが変わっていったのか分からないけど、俺がそれを受け入れるまでに殿下を待たせてしまったことについては謝らなくてはいけない。
 実を言うと神様とかあんま信じてないし、天啓だって眉唾ものだ。でも殿下が一生俺に縛られるなら。一生俺しか愛せないんだったら。
 それ以上嬉しいことはない。
「そんなっ、それは…!」
「ええ、殿下のせいです。殿下が望む望まないに関わらず、俺は殿下しか抱けない体にとっくにされちまったし、殿下のことしか考えられない頭になっちまったんです。だから…」
 責任取ってくださいね。
 耳元で言うと、殿下がびくりと体を震わせる気配を感じた。

 殿下をベッドに押し倒し、服を脱がせていく。殿下は期待半分、罪悪感半分みたいな顔をしていた。うーん、あまり悲しそうな顔はしてほしくないんだけどなあ…。
 ようやく拝むことができた殿下の体を舐めるように見る。小柄とはいえ薄い筋肉があるし、胸はないし、股間には小さいとはいえアレがついている。どう見ても男だが、なんかこう、悪くない。
「…気持ち悪くないか?」
「いいえ?これが他の男だったら反吐が出ますけど、殿下の体だと思うとむしろ感慨深いですね」
「……君も、脱げ」
 これは「命令」じゃなかった。今日は魔力を流さずにやりましょうって説得した。調べてみたし当然殿下にも確認したが、「命令」って本当にめちゃくちゃ効率がいいらしくて、本来あんなに余計に魔力を流さなくても十分余剰魔力は消費できるらしい。むしろ殿下は使いすぎの部類だった。ずっと発情させてたら俺も殿下のせいに出来るしな。マジで自己嫌悪がひどい。やつれていたのは魔力の使いすぎのせいもあるかもしれない。まあほとんどは精神的ストレスだろうけど。
「全部ですか?」
「…全部だ」
 目を覗き込むと顔を真っ赤にして目を逸らす。俺は少し迷って、上から脱ぎ始めた。
「…っ」
「見たかったんじゃないですか?今までは下しか脱がしてませんでしたもんね」
「…言うな」
 そう言いながら案の定ちらちら見てくるのがかわいらしい。
「触りたいですか?」
「…触りたい」
「どうぞ?」
 下も脱ぎながら言うが、なかなか殿下は俺に触れようとしない。でも俺が勃ってるのを見てちょっと安心した顔してた。まあ同情や義務感だけで勃ちゃしないわなあ?特に俺の息子は素直なんで。
「触ってくださいよ。触れるタイミング今しかないですよ?これからそんな余裕ないくらいヤるんですから」
「でも、その…」
「散々人に跨っておいて、体に触るのは恥ずかしいんですか?」
「…やめろ」
 おっといけない。落ち込ませるつもりはなかったんだが。どうもこの減らず口は言うことを聞かない。
「ほら、どうぞ」
 殿下の手を握って俺の体に触れさせる。最初はおっかなびっくりだった手が、思ったより大胆に筋肉を撫でたり揉んだりし始める。
「…すごいな」
「そりゃあまあ、騎士ですし?」
「………」
 無言で殿下が俺の筋肉を一つ一つ確かめるように触っていく。ひとしきり触って満足したのか、殿下がため息をつく。
「…何かに目覚めそうで怖い」
「どう考えても既に目覚めてる顔でしたけど」
 しばらく無言の状態が続く。またしくじったか?わかんねえな。俺恋愛経験ゼロなんだって。ってそれは殿下もか。いや触らせたのは俺だけど殿下がマジで真剣だったからちょっと引いたのは本当。ごめん殿下。そんなところも悪くないって思っちゃったんで許して。
「殿下、他にもしてほしいことがあったらなんでも言ってください。今の俺ならなんだってしてあげられますから。できる範囲でですけど」
「本当に、なんでも?」
「はい」
 殿下は本当に黙ってしまった。ただ、何か言いたいことはあるようなので俺は待った。息子は早くしろとうるさいが、殿下のために待つのは苦ではなかった。
「……じゃあ、抱きしめてほしい」
「わかりました」
 いやなんだこのかわいい生き物やっぱ早くぶち犯したい。違う違うせっかくの殿下のお願いなんだ抱きしめるってどうやるんだっけ?
 俺がぎこちなく殿下の背中に腕を回すと体格が小さい殿下はすっぽり収まってしまう。殿下はしばらくそのままでいたが、不意にすすり泣き始めたものだから焦った。慌てて様子を見ようとすると殿下がいきなり抱きついてきた。めちゃくちゃビビったが、殿下との密着度が増して俺の鼓動が速まる。
「…すま、ない…っ!顔、見ないで…っ!」
 殿下の泣きじゃくる声を聞きながら俺は殿下の頭を撫でた。そっか、そうだよな。俺と抱きしめ合うとか昨日までの殿下なら考えられなかっただろうしな。
「…いいですよ、好きなだけこうしていましょう」
 信じられないほど指通りがよくて柔らかい髪を撫でながら俺は言った。

 ひとしきり泣いて落ち着いたのか、殿下は無言で俺を引き離す。顔を上げる頃にはもう全然涙も鼻水も消えてさっきの顔に戻っていた。ちくしょう便利だな魔法って。後でめちゃくちゃ泣かせる。
 時間が経っても萎えてない俺のちんこをみて殿下が顔を赤くする。なんでそんなうぶな反応なんだよ毎日これを入れてよがってたの誰だよいやよがってたかどうかは分からんけど。泣いてたのかもしれんけど。
「待たせたな。準備はしてあるからいつでも構わない」
 そういうことを真顔で言わないでほしい。
「いやさすがにいきなりぶち込みはしませんよ、ほら横になって」
 殿下を横にさせて、再度その体を眺める。
「なんかこう、芸術品みたいですね」
「そうだろうか…」
「体も小さいし、なんかいけないことをしている気になります」
「これでも歳は君と、同じくらいだ…っ」
 殿下の体に触れるとびくりと震えた。さっきのお返しとばかりに撫で回す。つんとたちあがっている乳首を触ったら体が跳ねた。乳首で感じる男って実在するんだ。女でも感じないやついたのに。
「っ、そこは…!」
「触ってほしそうだったので」
 つまんでくにくにと弄ると面白いように体をビクつかせる。
「そんな…言うな…!」
「俺に触ってもらうこと想像して弄ってたんですか?」
「そうに決まっているだろう…っ」
「ならいいじゃないですか」
 そう言って片方を舐める。こんな小さい突起だけでいいようにされている殿下が可愛くて仕方がない。
「っ、~~~!」
 つねりながらもう片方をきつく吸うと、殿下が一際大きく体を震わせた。
「えっ、今のでイっちゃったんですか?」
 そう言って見上げると殿下は耳まで真っ赤にして顔を隠していた。それを無理やり覗き込む。
「ねえ、今ので、」
「言っておくが初めてだからな!!自分で、ここだけで達したことは1度もない!」
 何の言い訳なのか分からんがそう言い募る殿下のアレを見る。イったばかりでくったりしているそれはぐしょ濡れだったが精液は出ていないように思えた。
「…ああ、天の瞳が射精するのは稀だ。出ても種はないのは君も知っていると思うが」
 もうそれってほとんど女なんじゃないですか?と言いたくなるのを堪える。多分殿下は、というか天の瞳達は何度もそれに苦悩してきたに違いないから。
「ふーん、さっきから思ってましたけど殿下ってここも綺麗ですよね、綺麗というかかわいい」
 代わりに子供のみたいなそれを扱く。
「ひっ…!?ダメだ、イったばかりだから…!やめ、先端を擦るな!」
 答える代わりにそれを口に咥えると、一瞬信じられない物を見るような目になった。いや俺のちんこすごいしゃぶってたじゃん。魔力流すためもあっただろうけど、あれ絶対ちょっとは好きでやってただろ。それを思い出しながら吸ったり舐めたりする。細かい感じは娼館の女達がやってたのも参考にしてるけど。ごめん、知識の引き出しそこくらいしかないし。
「無理だ、出るから…!あっ、もう…っ!」
 殿下がぶるっと震え、口の中に何かがとぷっとぷっと出る。精液特有の匂いはないから先走りか何かか?とにかく多分また射精せずにイったんだろう。
 ちんこから口を離すと、殿下はぜいぜいと息をしていた。これからが本番なんだけどな。大丈夫かな。
 足を割り広げると、殿下がおずおずとこちらを見てくる。
「その…本当に大丈夫か?」
「今更何を言ってるんですか?俺のちんこ見てもそれ言えるんですか?この通り入れたくてすごいイライラしてますよ」
「…そうだな」
 殿下が安心したように笑う。ちょっとまだ罪悪感が残ってそうな顔だけど、そんなこと考えられないくらいめちゃくちゃにしてやろうじゃないか。

 とはいえ、前戯に時間をかけすぎた。いくらなんでも殿下のケツに濡れる機能はない。そばにあった香油を使って丹念にほぐしていく。
「いや、風呂で十分したから、大丈夫、ひあっ!?」
 中のしこりを触って余計なことを言おうとする殿下を黙らせる。前立腺って言うらしいな。知らんけど。一応俺も男同士のやり方を勉強してきたのでなんとなくわかる。殿下以外の男がセックスしてる図が気持ち悪くて薄目でしか読めなかったけど。ともあれ書架様々だ。
 指を増やしてバラバラに動かすと、それだけで殿下は髪を振り乱してひんひん鳴く。もうなんか既にエロい。ほんと俺に乗っかってた時どんな顔してどんな声出してたんだろうな。魔石で盗撮しときゃよかったかな。多分バレて壊されてたと思うけど。
 あ、また殿下がイった。やっぱ透明の液体しか出てない。多分指突っ込んでから3回くらいイってる。ちんこ突っ込んだらマジで気絶させちゃうかもしれねえな。今更だけど俺騎士だから体力すごいし殿下がエロすぎるんで多分朝まで抱ける。我慢…出来るかねえ?するしかないけど。
 多分十分ほぐせたので指を引き抜くと寂しそうにひくひくするそこは、やっぱ性器としか思えなかった。ちんこ当てると吸い付いてくるもん。
「ね、入れますよ」
 半分意識を飛ばしかけている殿下の顔をぺちぺち叩いて起こす。
「ん…あ、ラント、夢?」
 どうも寝ぼけているらしいがふにゃふにゃの殿下の顔が可愛いんでとりあえずよしとする。っていうか名前呼びはヤバい。オナってたときとか乗っかってた時とかこっそり呼んでたのかな。呼びたかったのかな。
「夢じゃないですよ、ねえ、入れていいですよね?」
 ちんこを当てたり離したりするとちゅっ、ちゅっと殿下の下の口がキスしてくる。軽い気持ちでやってみたけどこっちが持ってかれそうだ。
 殿下は少し首を傾げた後、頷いた。
「ん、入れて、お願い」
 言い終わる前に入れ始めた。どうやら完全に起きたらしい殿下がひっ、と言うのが聞こえたが気にしない。だってこんな催促ずるいだろ。散々よがり狂っても冷静さを崩さなかった殿下がさあ、あんなこと言ったら。
 地の瞳はちんこがでかい。もちろん俺のも結構でかい。娼館のやつらも慣れてないと痛いらしくて、俺を相手してくれるのはいつもそこそこベテランの女だった。そのくらいでかいのが正直こんな小さいところに入るのか心配だったが、散々解した甲斐あって割とすんなり飲み込んでいく。それどころかきゅうきゅう締め付けて歓迎してくる。っていうか毎日これ入れてたんだもんな。すごいな。あとシーツにしがみついて進むごとに声を高くして幸せそうに顔を蕩かせていく殿下エロいな。白い喉仏のところとかマジでエロい。
 進んでいくと切っ先が子宮口に触れて思わず腰を動かしそうになった。連日のあれで体に染み付いちゃってるんだよな。ここを、殿下のメスの部分を孕ませなきゃいけないって。発情してる間はもうほとんどここのことしか頭になかった。殿下のこととか頭になくて、ここを犯すことしか考えてなかった。でも俺が今したいのはそういうことじゃない。
 さらに進んで行き止まりみたいなところに突き当たった。ここ結腸って言うんだっけ?正直まだ進めそうだけど、まあ無理にやると怪我するっていうからやめとこ。途中で入りそうになったら入れるけど。
「殿下?入りましたよ」
「ああ、入ってる…っ」
 殿下が落ち着いたところで声をかけると、殿下は泣き笑いの表情で俺を見てそう言って、夢みたいだ、とまた呟いた。目を閉じて口も開かず耳も聞こえない人形みたいな俺じゃなくて、「生きてる」俺とセックス出来るなんて思ってなかっただろうからな。そう思うとなんだか泣けてきて、殿下を抱きしめた。そのまま少しづつ動き始める。
「ラント、ラントっ!」
「メーア殿下…!」
名前を呼ぶと、ぎゅうう、と締め付けられた。殿下が俺の背中に手を回す。
「好き、だっ、ずっと、好きだった…!」
 殿下の声が震える。ようやく自分の口から言ってくれた。
 正直この感情が恋とか愛とかなのか分からなかった。ただの性欲や刷り込みなのかもしれなかった。今でもよくは分からないけど、多分、少なくともこの瞬間、俺は、殿下を。
「愛してる、メーア…!」
「私も、ああ、うれしっ、あ、くるっ、イっ、~~~!」
 殿下の中が震えて、俺も同時に出した。
 2人とも息をつきながらお互いの顔を見て、どちらからともなく唇を合わせる。舌を差し入れると、苦しいはずなのに殿下も応えておずおずと舌を絡めてきた。頑張って鼻で呼吸をしようとしているのがかわいらしい。
 とはいえすぐ殿下が酸欠になりそうだったので口を離す。ちなみに俺のちんこは萎えていない。
「…俺はまだ出来ますけど、殿下は無理そう…ですよね。ここまでにしておきます?」
 さっさと抜けばいい話なのに名残惜しくて聞いてしまった俺も馬鹿だった。あろうことか答えの代わりに返ってきたのは魔力が流れ込む感触と、殿下の「命令」だった。
「…君の気の済むまでしてくれ・・・・・・・・・・・・
 発情のあまり視界が赤くなるのを感じる。嬉しそうに殿下が見上げるのがかろうじて見える。おい、何やってくれてんの?てか魔力流さないでやろうって言ったじゃんね?!
「くっそ、ぶっ壊れても知らないからな…!」
「君に壊されるのなら本望だ」
「俺が本望じゃねえよ、畜生…っ!」
 その後俺はマジで殿下が気絶するまで犯しまくった。っていうか気絶してもその後数時間はヤってた。途中で結腸ぶち抜いて殿下がイきながら起きてガチ泣きしてたがそれでも止まれずもう1回気絶させた。
 止まれたのは夜が明ける直前だった。殿下は一応呼吸していた。なんで自分が限界なのに煽ってくんの?馬鹿なの?そう思いながらなんとか後始末をして医師を呼んだらなんとレーゲン殿下が来た。天の瞳を診れるのは天の瞳しかいないらしい。でも明らかにめちゃくちゃした後ですって言わんばかりの光景を王族、しかも身内に見られるのって恥ずかしくないか?メーア殿下が寝ててよかった。良くないけど。ってかレーゲン殿下はまだ伴侶と結ばれてないから普通に気を使うわ。誰だか知らんけど結ばれるといいな。
 レーゲン殿下は俺達をすごく生ぬるい目で見た後、「…まあ、君達がうまくいったのなら喜ばしいことだけど。別に兄さんは疲労で寝てるだけだよ。天の瞳は見た目より頑丈にできてるから。じゃ、とりあえずおめでとう」と言ってさっさと部屋を出ていった。実の弟で同じ天の瞳のレーゲン殿下が言うことだから少し安心したが、目を離すのは怖くて鍛錬は休んだ。

 殿下が起きたのは実に昼過ぎだった。その殿下はまず起き上がろうとして小さく悲鳴をあげ、それから回復魔法を使ったらしくようやく起き上がった。
「…申し訳ない」
 結局徹夜した俺にも回復魔法をかけてから、殿下はベッドの上で深々と俺に頭を下げた。
「俺への回復は別にいいです。むしろ自分の限界を考えてください。俺生きた心地しませんでしたよ」
「本当に申し訳ない。やっと想いを通じあえたと思ったら、かなり浮かれてしまった」
 ベッドに頭を擦り付けんばかりの殿下を起き上がらせる。
「…まあ浮かれるのは分かりますし入れるまでに無理をさせた俺も俺ですけど。さすがに今回は殿下が悪いです。本当に、心配したんですからね」
「返す言葉もない。…その、今言うことではないのは分かっているが…メーア、とは呼んでくれないのか?」
 顔が熱くなる。素面で言えるか。
「マジで今言うことじゃないですね。ちょっと今すぐには無理なんで、今はメーア殿下、で許してください」
「そうか…敬語も、出来れば…せっかく伴侶になったのだし…もう君は私と対等の立場なわけだから…」
 結構崩してるつもりなんだけどな。まさか発情入って頭のネジがぶっ飛んでた時の口調がいいとか仰らないよな。そうだとしても、一応メーア殿下の頼みなんで頑張るけど。
「まあ、善処します。メーア殿下ももっと俺のことラントって呼んでくださいね」
「わかった…ラント」
 うわ破壊力がすごい。照れながら俺の名前を呼ぶ殿下の声が股間に直撃する。やめろ相手は病み上がりだ、どうどう鎮まれ俺。
「…コホン、では、改めて伴侶としてよろしくお願いします、メーア殿下」
「ああ、よろしく、ラント」
 そう言ってメーア殿下は、ようやく花が綻ぶように微笑んだ。
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