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それからの森 8
しおりを挟む「イ…ぐぅ…っ! は…っ、も、死ん…じゃうっ」
はひはひ喘ぎつつ、それでも命令どおり口にする少年。その姿が如何にいじらしく艶めかしいか。本人だけが気づいていない。
イきっぱな肉体には凄まじい気持ち悦さが確かにある。しかし少年に情を寄せるドゥエルにとって、そんな余録は意味がない。むしろ、恥じらいと恐怖に混濁する敦を眺めているだけで、それ以上の愉悦を彼は得られた。
過剰な行為による肉体的反応より、心の伴った本物の快楽こそが至福。強制されて無理やり快感に身悶える様より、自ら受け入れて愉悦に戸惑う様の方が、彼の劣情を滾らせるのだ。
これもまた、生粋のティモシーっ子なドゥエルの知らない感情。アツシを暴き、淫靡な行為を仕込むにつれ、ドゥエルも新たな扉を開いていく。
可愛がると嬲るが同義のティモシー。そんな残酷な世界で、二人はお互いの感覚を共有し始めていた。
アツシは、ドゥエルの激愛を叩きつけられ、淫靡に溺れる官能を。ドゥエルは、アツシの心と身体を悦ばせることで得られる、身震いするほど優しい愛情を。
お互いに知らない未知の扉を開けて、二人の睦みは、どろりと粘着質に深まっていく。
硬く閉じられた涙目や、真っ赤な顔。その淫猥な唇からもれる蕩けた吐息を噛みつくような口づけで吸い上げ、ドゥエルは思う存分、少年の艶姿に溺れる。
「もっとだ…… もっと言え」
はあはあ荒らぐ二人の呼吸。ぬるりと絡まり合う舌に苦戦しつつ、敦は熱く潤んだ瞳をうっすらと開いた。
それを見た途端にドゥエルのモノが硬度を増す。
「……し…、死にゅ……、も…っ、……っぁああっ!」
潤み悩ましい瞳に煽られ、一際大きく突き上げたドゥエルは敦の最奥で爆発した。何度も鋭く穿ちながら、ぐりぐりと根本まで呑み込ませ、彼は苦しげな呻きをあげる。
未だドクドクと大きく脈打つ猛りを捩じ込んだまま、ドゥエルは失神寸前な敦をキツく抱きしめた。
涙目を裏返してヒクヒクと痙攣する少年。
ここまでやるつもりはなかったのに、なんのかんのと結局、いつも抱き潰してしまう。
「……君が可愛いのが悪い。うん」
ぐったりもたれる細い肢体を静かに横たわらせて、ドゥエルは一物を抜かずに背後から敦を抱きしめつつ眠りについた。名残惜しくて抜きたくない。酷く中が心地好く、彼のモノは再び立ち上がっている。
翌日、生理現象も手伝って、隆々と立ち上がった彼の御立派様に否応もなく可愛がられる敦である。
「ちぬ…… マジで……」
絶倫も極まれリな敦の御主人様。いや、この世界の人間にしたら淡白な方であるのだが。
日がな一日弄ばれ、突っ込まれ、少年の身体は疲労困憊。今も朝の御勤めが終わり、一時の休息を許された奴隷な敦。
なんのかんのと優しいドゥエルは、やりすぎたと思うと敦に休息を与える。惚れた弱みもあろうが、基本的に彼は敦を情人の位置に置いていた。
奴隷という意識もなくはないが、それと重ね合わせて愛しさも抱いている。だから甘やかすし可愛がりもするのだ。
ただ、この世界の可愛がるは嬲ると同義。如何に深い愛情を相手に叩きつけ、刻みつけられるか。そこが矜持にもなっているため、結局、敦には泣き叫ぶしかないのである。
ソレを知らない少年は、これでも街の奴隷らと比べればずっと平穏なのだとしか認識していないので、未だドゥエルの愛情に気づいていない。お間抜けも極まれりな敦だった。
ふう……っと寝台で微睡み、しばしの休息を甘受していた敦だが、ふと大きく目を見開いて起き上がる。
「しまった…… ナズナに食事させなきゃ」
無体で軋む身体を引きずり、敦はテーブルに用意されていた彼女の食事を持ち上げた。四肢を失ったナズナに食事を与えるにはドゥエルを満足させねばならない。
彼の情けを受けてナズナは生かされているのだ。敦がドゥエルに献身を捧げれば、彼は敦の願いを受け入れてくれる。
『君が私を想ってくれるなら、私も君を想おう。ナズナを飼うことも許すよ?』
涙が出るほど嬉しいドゥエルの申し出。
この感謝を忘れず彼のために働こう。心から仕えよう。何をされても従い、受け入れよう。
想うの部分を慮ると脳内変換した敦は、ドゥエルが求めているのは身を粉にする献身だと考えた。少年が真摯に仕えれば彼は応えてくれるのだと。
完全に擦れ違った二人の思惑。
この勘違いは長く払拭されず、二人は擦れ違ったまま妙な関係を築いていく。
ちなみに、勘違いの元になったのは数刻前。
「アツシ、小用」
「はい……」
ドゥエルの前を寛げて、自ら呑み込むように根本まで咥えた少年。その頭を掴んで押さえ込み、ドゥエルは静かに放尿する。
んぐんぐと蠢く喉の肉壁。それを堪能するかのように最後の一滴まで飲み干させ、彼はしばらく余韻に浸った。
「上手に出来るな、アツシ。可愛いよ」
呑み込ませたまま上目遣いな少年の顔を撫でてやり、ドゥエルは蕩けた眼差しを向ける。苦しげに高揚した敦の顔や潤んだ瞳が堪らない。
撫でた手に、すりっと可愛らしく頬を寄せられ、ドゥエルの興奮はさらに高まる。
なんだ、この可愛いが過ぎる生き物はっ! アツシの世界は、こんな人間ばかりなのか? 人畜無害にもほどがあるっ! 楽園だろ、ソレぇぇっ!!
脳内でだけで身悶え、ドゥエルは確認するかのように敦を見つめた。
「私のモノだな? 君が私を想ってくれるなら、私も君を想おう。ナズナを飼うことも許すよ?」
切なげな彼の本心。
だが、敦はこれをドゥエルの専属奴隷なのだとの意味にとった。ドゥエルだけに使われるのだと。想おうの部分も慮る的に捉え、敦が真摯に彼に尽くすなら、それなりの待遇を約束してやるな意味に解釈する。
ドゥエルの元にいればナズナも救えるし、敦も奴隷だが人並な暮らしが出来た。
ぱあっと顔を煌めかせて、必死に頷く少年。
そのあまりの眼福に、思わずドゥエルは額を押さえて天を仰ぐ。
………私のモノを咥えたままで、お前……… っかぁぁーっ、何度も思うけど、可愛いが過ぎるでしょうがぁぁっ!!
こうして盛大な勘違いをやらかしたまま、二人はなんとなく平穏に暮らしていく。
しばしの平穏。そう思っていた敦だが、それが続くにつれ少年は言葉に出来ない焦燥感に襲われた。
「三日……? マジで?」
明けて暮れても敦を抱き潰していたドゥエルが、ここ数日何もしてこないのだ。時々小用に呼ばれることはあるものの、ただそれだけ。終わるとズルズル一物を抜き出して仕事に戻る御主人様。
「ん? どうしたのアツシ。檻で寝てなさい」
「はい……」
しょぼんとする少年を不思議そうに見つめるドゥエル。
「飽きられた……? どうしよう?」
己の想像に全身を凍りつかせ、敦は檻の中のナズナを眺めた。四肢と正気を失った彼女は、朦朧とした顔で横たわっている。
「どうしよう……? ねぇ、ナズナ」
今までを考えても、ドゥエルにとって敦は性的遊具な価値しかない。事実、そればかりしかされていないのだ。彼が酷く満足げだったので考えもしなかったが、ペットの愛玩奴隷以外は何をやるものなのだろうか。
「重労働とかって御主人様は言ってたけど…… ここで労働って何があるかな? 掃除や洗濯? そういや、それってどうしてるんだろう?」
何か役にたたなくてはと敦は考える。
玩具として飽きられたなら、いつお払い箱になるか分からない。彼は優しいから、ずっと置いてくれるかもしれないが、それに甘えていたらいけない。
しかし、だからといって、敦は自分がやれそうなことも思いつかなかった。なぜか知らないが、家はいつも綺麗だし、洗濯物とかが庭ではためいていたこともない。
ドゥエルがやっている風もないし、魔力や魔法がある世界なのだ。何かしらの道具で行っている可能性もある。
と、なれば敦にやれることはない。
「あとは…… ご飯?」
食事だけはドゥエルが奥から持ってきていた。広いリビングに設置された檻と、研究室。あとは寝室と庭しか知らない敦は、他の部屋を見たことがなかった。それだけで一階の半分ほど。
二階建ての大きな家だ。当然、台所や他にも部屋があるだろう。特に禁じられていたわけではないが、いつもドゥエルに抱き潰されていた敦は、他の部屋に興味を持つ余裕がなかったのだ。
檻と研究室と寝室しか知らない己に愕然とし、少し好奇心がもたげた少年は、小さな冒険に興味を持った。
まずは、いつもドゥエルが食事を持ってきてくれる部屋。
かちゃっとノブを下げ、敦は少し開けた隙間から恐る恐る中を覗き込む。
「わあっ!」
そこには広いキッチン。家族用のこしらえなのだろう。食堂を兼ねたようなキッチンには、壁に並んだシンクやコンロの他に控えめな食卓も置かれている。
長方形で四人掛けなソレを見て、敦は喉の奥から言いしれぬ何かが込み上げるのを感じた。
「……みんな元気かな」
少年には家族がいる。両親と妹が一人。
これより少し大きなテーブルで、和気藹々、家族と食事をしていた。他愛もないお喋りや笑い声。
あまりの懐かしさに少年の口元が酷く震えた。戦慄くように震えるその唇を温かな涙が伝う。
顔をくしゃくしゃにして敦は泣いた。涙が溢れるのを止められない。
なんでこんなことになっちゃったんだろう? 僕が何をしたっていうのさ。
突然の異常事態に翻弄された敦は、こんな事も忘れていた。家族のことを思い出しもしなかった。
毎日嬲られ、悶絶し、真っ白に弾ける頭。気絶するかのように深い眠りにつき、疲労困憊な身体は夢も見ずに泥のように眠る。
そして翌日にはまた責め苛まれ、考える余裕などなかった。凄絶な世界でナズナや己を助くことしか考えられなかった。非現実的な毎日が終わることなく続き、敦の精神を摩耗させていく。そんな日々が一年も続けば、幸せな記憶など追憶の彼方に押しやられる。
心が回復するには時間が必要なのだ。
ひょんなことから、その時間を得た敦。なぜか分からないが、ドゥエルに放置されたことによって、幸か不幸か少年の摩耗した精神がドゥエルの家に好奇心を持てるくらい回復し、この懐かしいキッチンがさらなる憧憬を蘇らせた。
「……帰りたいよぅ。お父さん……お母さん……」
ふぐふぐ袖を絞るような涙を流し、敦は静かに泣いた。
パタパタと落ちる涙の雫。
それが幾つも水玉模様を描いた頃。少年の姿が見えないことを不審に思ったドゥエルがキッチンにやってくる。
扉を開けた彼は、テーブルに突っ伏すよう泣きぬれる敦を見て、何事かと眼を見開いた。
「アツシ? 何して……?」
「う…… ううううぅぅっっ!」
声をかけられた途端、少年は床に崩折れ蹲って号泣する。涙が止まらない。止められない。
「帰りたいよぅぅ!! お母さん、お父さんんんっ!! うわあぁぁぁっっ!!」
あーーーっ!! っと全身を震わせて叫ぶ敦。げふげふ呼吸困難を起こすほど嗚咽をあげ泣き狂う敦に駆け寄り、ドゥエルは黙って見守るほかなかった。
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