防蝕

河方 杞憂

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翻って…

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  ここまで読んで、君は本当に実もなく変化もない物語に出会ってしまったと思っただろう。確かにこの物語には、私の身におこる重大な事件も、変化もなく、ただただ悲観的な自己を否定しようと自己暗示する話である。机に向かいながら私の物語を書いているにも関わらず、私はこの私に共感することが出来ないでいる。
  白く濁った紙を見つめながら、私はそうである原因を探るために思考の渦へと身を投じる。
作中、私は昔と変わってしまった私に、押し入れで見つけた本を見て気付かされる。昔との変化に嫌気が差して何気なく散歩へと赴く。過去を思い返しながらばったりと会ってしまった電車に自分を投影する。結局、私を言い表し難い不安にさせるのは現状であることを薄々感じながらレンタルビデオショップへと逃げる。その後は…

  やはり私は「変わった」ことが嫌なのだろうか。あの無垢で純粋な頃に比べて夢と価値観は多くのことを諦めるように衰えていった。今の目のように。
中学から高校にかけての成長の過程で、価値観は大いに揺らぎ変わっていく。それは私の目と同じよう急激な変化をもたらし、その目で見える世界は二重にも三重にもなり、逆説的に多様な世界へと様変わりしてしまった。

  この世に置ける問題が「正義と悪」で表しきれないように、思考は単純では無くなり、世界は悲観的になっていく。

  人は手にしてないものを欲しがるのだと、私は思っていた。それは私にとって、日常であり、永遠であり、今である。しかし、この今を永遠に続けるとなれば、「手にしてないものを欲しがる」という今の自分は居なくなり、それは永遠の今を手に入れたことにはならない。

  甚だ酷い仕打ちである。
作中、変わらないことを望む私は、実の所私ではないのだろう。
だから私は彼に共感出来ないし、感情移入も出来ない。

  私が本当に望んでいるものがなんなのか。
私は、この黒く濁った自分を探してみようとペンを置く。
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