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奇跡のスカウト

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すぅーすぅー

  俺が高校に入るまであと1週間。

  そんな中、俺はソファーベッドで昼寝をしていた。
  隣には一生懸命勉強してると見せかけて雑誌を読んでいる姉の海季(みき)がいる。

「ふんふんふふん」

かなりご機嫌な様子だ。

「ん…ふあ~」

「あ、たーくん。おはよー」

 さっと雑誌と参考書を入れ換える

「勉強、してたか?」

「う、うん」

 嘘だな。
 今月の小遣い100円マイナスだな。
 そんなこと考えているなんて思ってもいないだ ろう。
 バレていないと思った姉は、また鼻歌を歌い始める。

「あ!そー言えばたーくん。今月号のANGEL SMILE(エンジェル スマイル)の動物(アニマル)高校特集にこんなストラップ紹介されてるんだけど…」

 と、さっきまで読んでいた雑誌を見せてくる。

「ホンットお前は嘘が下手だな。」

「え?」

「何でもない」

 ほんっとにバカな姉だ。

「..で?いくらなの?」
 
姉はもじもじして

「単品500円で200円足りないけどペアだと450円なんだ。ねえたーくん、150円貸してくれない?」

 …まあ明後日の小遣い日を少し早めたと思って
財布から100円マイナスした小遣い1900円を取り出す。

「ほれ、小遣いだ」

「やた!ありがとたーくん。のついでに一緒に
買い物付いてきてくれない?最近ストーカーが多くて」

 アホでも見た目が良かったらよってくる男共って…

「しょうがね、ついでに買い物も行くか」

「ありがとたーくん!」

                                                            



「彼女一人?」

「俺の姉に手出さないでくれる?」

「ッチ、なんだ男持ちか」

はあー

 ったくうちの姉は少し目を離すとすぐナンパされるんだから...
 
 このANGEL SMILE専門店に来てからかれこれ10分。

 ナンパしようとしてくるやつらの胸ぐらをつかみ、俺の姉に手を出すな。ということ合計6回。

俺はふぅ。と短く息をはく。

「おい、姉。早く買って早く帰るぞ」

「うん!あった!これこれ。たーくん、付いてきて」

 と、姉は俺の服を引っ張りレジへと連れていかれる。

「いらっしゃいませ!このストラップペアで450円になります!あの、モデルさんですか?」


  ───  は?


「すいません!こいつ新人で。ほら、お前も謝れ」

 戸惑っている俺たちを見た先輩らしき人は必死に謝る。

「いえ、大丈夫です。そのくらい」

 まあ毎日のように言われているからな。
 ひどいときはサインとか写真とかあったし
 
先輩が謝っている間に新人は俺が出した金を受け取り、会計を済ませる。

「おい、姉。行くぞ」

「うん!」

「ありがとうございました!またのお越しをお待ちしてます!」

そう言った新人の頭を叩き、先輩は

「人がせっかく謝ってやってんのに。だが、あのお客様は常連客だ。次来たときに絶対謝るんだぞ」





 「ふんふんふふん」

 またまたご機嫌のようだ。

「なんだ?ねだってもなにも買わないぞ?」

「何でもなーい!それよりたーくん、みー外で待ってるね」

 外?

 「またナンパされるぞ」

 「だいじょーぶ!たーくんのだて眼鏡借りるから!」

 姉は俺の大事な眼鏡と交換に大量のお菓子をかごにいれて外へ行った。

 「ねだらんって…ねだってないか」

 ぶつぶついいながら姉が入れたお菓子を戻していると

 「あの、手伝いましょうか?」

 と、かごの中からお菓子を取り出して戻してくださる親切な方がいる。

 男か女か分からないくらいのとても綺麗な方だ。

 「あ、どうも。ありがとうございます」

 親切な方はクスリと笑う。

 「いえ。──これも一応仕事ですから…」

 「え?」
 
 なんて言ったのか聞こえなかった。
 こんな近くに、しかも俺の耳は地獄耳だってのに…
 
 何者だ?

 「さてと、もう菓子類は無くなったようですし…そろそろ仕事に戻りますか」

 「ほんとにありがとうございます。何かお礼‥あれ?いない」

 んなはずはない。
 ほんの、ほんの一瞬目を離しただけなのに。
 隣にいたはずの、きれいな、そう、猫のような…


 とりあえず一週間ほどの食材を買い、姉のもとへと行く。
 案の定ナンパされていた。

 「ちょっと人の姉にちょっかいかけないでくれます──っ!」

 獣耳?

 しかも猫?

 「おっと失礼。お宅のお姉様があまりにも綺麗すぎて…」

「姉、何かされたか?」
 
「ううん。でも動物高校の生徒に、ならないかって」

──動物高校!?

 「そうです。私は三年の生徒会長で、″白猫″です」

──白猫!?

「先程あなたの手伝いをしたのは副会長の″黒猫″です」

──黒猫!?

 「我々三年は一週間後の入学式までに次期生徒会員をスカウトしなければならないのです」

  そこでニュッと後ろから先程の親切な方が顔をだす。

 「容姿が綺…ムグッ」

  親切な方は″白猫″とか言う人に口を押さえられる。

 「「??」」

 「あはは、何でもないよ。それより君達、名前は?」

 「えと、私は海季。で、こっちの弟が拓真」

  俺は名前を呼ばれたので軽く顎をひいて挨拶をする。

 「みきちゃん。僕は″白猫″谷風 光(たにかぜ ひかり)。あっちは″白猫″森谷 闇(もりたに やみ)。ってことで生徒会になってもいいっていう契約書にサイン書いてくんない?」

 光はそう言い、内ポケットから契約書の紙と思われるシワひとつない紙を取り出す。

 「これで僕の役目も終わりだ。さあ!」

 「む、無理です!」

  姉はそう言うと俺の後ろに隠れる。

 「む、困ったなあ。でも君には是非我が動物高校に入って欲しいんだが…。入学料金とか無料にするから、生徒会じゃなくていいから…っていうのはダメかなあ?」

  姉は少し考えて

 「いいですよ」

  と、答える。

  まあその方が金銭面上では助かる。

 「おお、では早速契約書を…」

 「でも、ひとつ。条件があります」

  またまた内ポケットから紙を取り出し、ペンを持って何かを書こうとする光の手が止まった。

 「条件?」

 「はい。私は生徒会にならないけど、私の弟のたーくんで良ければ生徒会に」

 「はい?そもそも彼は容…」

 



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