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五、乱入者。
五、乱入者。⑦
しおりを挟む「意地でもないし、見栄でもないし、人の意見に左右されているわけじゃないの。価値観なんて、人それぞれだし。……うん。美鈴ちゃんのお陰でなんか少し、突っ掛かってたものが剥がれ落ちてきた」
晴哉の話を持ち出せば、美鈴ちゃんが黙ってしまうと分かっていたから言いたくなかったけれど、この話は晴哉が一番関わって来るから避けられない名前だった。
「幹太は、貴方が家の跡取りだからとか、年齢とか好みとかで冷たくしたんじゃないよ。私だけを思うからってのも違うと思う」
「でも、貴方が好きだなんて一目瞭然だもの。気を持たせないではっきり関係に名前を持たせたらいいんじゃないですか」
「確かに、結局はそうなるんだよね」
逃げてきた。
聞かないフリをしてきた。
言わないで黙って守って行こうとしている馬鹿も居た。
狂ってしまったのは、お互いに視線を外していたからだ。
太陽を見上げて、美しい桔梗を咲かせてくれてことに感謝する月。
絶え間なく温かい温もりに包まれて、夜は目を閉じて眠って月を見ない花。
どちらも、太陽を失ってから機能せずにただひっそりと生きていたのを、漸くやっと自分の意思でお互いを、お互いの光で認識始めたばかりだ。
「お待たせ、桔梗ちゃん」
睨みつけられていた私の前に、バイクで現れたのは巴ちゃんだった。
幹太とはまだ距離がある。ちょうど納品用のトラックが止まる場所に、私と幹太を引き裂くように現れた巴ちゃんに思わず笑ってしまう。
「ちょっと待って。スムージー零しちゃったの」
「あらやだ。私、何も持ってないわよ」
「私があるから大丈夫」
カバンからティッシュを取り出してそのまま座りこむ。
ティッシュのゴミを容器の中に入れたが、問題は美鈴ちゃんを納得させることと、この大型バイクに死んでも乗りたくないことと、――すぐそこに幹太が居ること。
「逃げるんですか? 幹太さんから。今もそこで桔梗さんを待っていてくれているのに」
確かに逃げることは卑怯だけど、今は会っても平行線のままな気がした。
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