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一、過去系両想い
一、過去系両想い④
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クラスで一番人気者だった『なんとか カズヤ』。
苗字も覚えていないけど、他のガキみたいな男子と違って、女の子をからかうことも言わないし、誰かを馬鹿にして笑いものにしたりはしない上に、眉目秀麗、非の打ちどころのない子。
家も会社を経営しているとかで、庭園のある豪邸に住んでいて、私たちとは大きな壁がありそうな人。
男子からも人望はあり、驕ったところもない人。
なのに、私の席の近くになってから、やたらと髪の毛に触れてくるようになった。
『劉宮の髪って綺麗だな』
まるで白馬の王子様に言われたかのようにときめいた私は、他の女子の嫉妬が入り混じった視線に気づきながらも優越感を抱いていたのかもしれない。
「結婚する相手ってね、中学の時からお付き合いしていた真琴くんなの」
「同じ中学なの」
「……華怜は小学校も同じだったと思うよ」
「まじ?」
居たっけな。誰だろう。もう中学の同級生なんて同窓会すら行かないから分からなかった。
「真琴くんには、正直にあの事件の真相を言ってたの。で、一矢くんも華怜も式に呼びたいのなら、二人を和解させようって、彼がはっちゃけちゃって」
「ほうほう」
「一矢くんに華怜の仕事場を教えてしまったの。私がパソコン画面に華怜の住所表示したまま寝落ちしちゃってて、私が悪いし」
「気にしなくていいよ。でも中学生の時の同級生同士の結婚ってことは、同級生が沢山くるんでしょ。じゃあ、私、欠席するね」
「……華怜」
泣きじゃくる美里の隣に座り、シュークリームにかぶりついた。
むにゅっと生クリームとカスタードクリームが下から飛び出してきて慌てて二口目を頬張る。
美味しいは正義。美味しいシュークリームの前では、全く気にならない。
ただ、同級生ってことは私の髪の事件を覚えているかもしれない。
あのあと、うちの親が激怒してカズ君だけじゃなく、イジメ首謀者と取り巻きが謝ってきても許さなくて、私は私立のカトリック系の女学園中等部に転校を余儀なくされた。
放心していた私は、誰のことも許してあげるような心の余裕はなかった。
親や同級生から散々責められ、私からも許されなかった彼、彼女らのことを同情してしまう。
ので、会ってもいい思いはしない。美里の結婚式をお通夜みたいな状態にしたくない。
私は行かない方がいい。
「行けないお詫びに、ウエディングネイル私にやらせて」
「ウエディングネイル?」
「ドレスにあったネイルしてあげる。付け爪にして、純白、カラー、色打掛の三つ作ってもいいよ」
雑誌に載った自分のお店のページを開いて説明する。
泣いていた美里は目の縁を拭いながら、そのページに興味を持ってくれたようだった。
「でもね、華怜」
「もー、まだその話、続けるの?」
もうお腹いっぱいだよって笑いつつ、そういえばご飯を食べていなかったことに気づいた。
「美里はお腹空いてない? 朝作っておいたシチューがあるんだけど」
「華怜、お願い。真面目に聞いて」
最初から真面目に聞いていましたよ、と言いたかったが黙った。
結婚式前で美里からはピリピリした空気が感じられたから、刺激をしない方がいい。
「一矢くんは、華怜に会いたがってたよ。私が繋がってるのを知って驚いてた」
「……そう」
「華怜は、一矢くんのせいで男性恐怖症になったんでしょ。でもそれは私が悪かった。だから、華怜はもう男性を怖がる原因はないでしょ?」
苗字も覚えていないけど、他のガキみたいな男子と違って、女の子をからかうことも言わないし、誰かを馬鹿にして笑いものにしたりはしない上に、眉目秀麗、非の打ちどころのない子。
家も会社を経営しているとかで、庭園のある豪邸に住んでいて、私たちとは大きな壁がありそうな人。
男子からも人望はあり、驕ったところもない人。
なのに、私の席の近くになってから、やたらと髪の毛に触れてくるようになった。
『劉宮の髪って綺麗だな』
まるで白馬の王子様に言われたかのようにときめいた私は、他の女子の嫉妬が入り混じった視線に気づきながらも優越感を抱いていたのかもしれない。
「結婚する相手ってね、中学の時からお付き合いしていた真琴くんなの」
「同じ中学なの」
「……華怜は小学校も同じだったと思うよ」
「まじ?」
居たっけな。誰だろう。もう中学の同級生なんて同窓会すら行かないから分からなかった。
「真琴くんには、正直にあの事件の真相を言ってたの。で、一矢くんも華怜も式に呼びたいのなら、二人を和解させようって、彼がはっちゃけちゃって」
「ほうほう」
「一矢くんに華怜の仕事場を教えてしまったの。私がパソコン画面に華怜の住所表示したまま寝落ちしちゃってて、私が悪いし」
「気にしなくていいよ。でも中学生の時の同級生同士の結婚ってことは、同級生が沢山くるんでしょ。じゃあ、私、欠席するね」
「……華怜」
泣きじゃくる美里の隣に座り、シュークリームにかぶりついた。
むにゅっと生クリームとカスタードクリームが下から飛び出してきて慌てて二口目を頬張る。
美味しいは正義。美味しいシュークリームの前では、全く気にならない。
ただ、同級生ってことは私の髪の事件を覚えているかもしれない。
あのあと、うちの親が激怒してカズ君だけじゃなく、イジメ首謀者と取り巻きが謝ってきても許さなくて、私は私立のカトリック系の女学園中等部に転校を余儀なくされた。
放心していた私は、誰のことも許してあげるような心の余裕はなかった。
親や同級生から散々責められ、私からも許されなかった彼、彼女らのことを同情してしまう。
ので、会ってもいい思いはしない。美里の結婚式をお通夜みたいな状態にしたくない。
私は行かない方がいい。
「行けないお詫びに、ウエディングネイル私にやらせて」
「ウエディングネイル?」
「ドレスにあったネイルしてあげる。付け爪にして、純白、カラー、色打掛の三つ作ってもいいよ」
雑誌に載った自分のお店のページを開いて説明する。
泣いていた美里は目の縁を拭いながら、そのページに興味を持ってくれたようだった。
「でもね、華怜」
「もー、まだその話、続けるの?」
もうお腹いっぱいだよって笑いつつ、そういえばご飯を食べていなかったことに気づいた。
「美里はお腹空いてない? 朝作っておいたシチューがあるんだけど」
「華怜、お願い。真面目に聞いて」
最初から真面目に聞いていましたよ、と言いたかったが黙った。
結婚式前で美里からはピリピリした空気が感じられたから、刺激をしない方がいい。
「一矢くんは、華怜に会いたがってたよ。私が繋がってるのを知って驚いてた」
「……そう」
「華怜は、一矢くんのせいで男性恐怖症になったんでしょ。でもそれは私が悪かった。だから、華怜はもう男性を怖がる原因はないでしょ?」
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