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参、被害者で加害者で、今はただの恋に溺れた美形魔王で。
十一
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体中に花びらを散らす、なんて比喩が全く似合わないぐらい。
機嫌が悪くなったダンに、身体に貼り付いた花びらを全て唇で取られた。
吸い付いて取るわけではなく、時折戯れのように花びらを噛む。
吸われるのか、噛まれるのか。痛みを恐れて、唇が触れる度に身体が震えた。
全てはダンのさじ加減なので、俺は抵抗もできず、ただただ虚しく身体をこわばらせていくだけ。
「魔王……」
体中が痛む俺を、ベットまで優しく抱いて運んでくれたダンに、天蓋のカーテンを引っ張りながら、睨み付けた。
「だから名前を呼べと」
「お前の愛ってなんなの。痛いのが愛とでも思ってんの。好きなら何しても許されるの」
また機嫌が悪くなるんだろうなってげんなりしたけど、言わずにはいられなかった。
急落下した。大学に迎えに来てからお風呂までの甘い雰囲気が全て風呂の中で泡と一緒に流れてしまった感じ。
「俺は嘘を言っていない。お前は可哀想なやつだ」
ダンが冷たい目で俺を見下ろしている。
「お前なんて大嫌いだ。ばーか」
睨み付けて、引っ張ったカーテンを力強く引っ張った。
ビリビリと裂けていく音を聞き、切れたあと、ベットの外へ捨ててやった。
「嫌い。大嫌い。ばーっか、ばか」
子どもの喧嘩みたいに、語彙力の無い攻撃を続けるとダンの手が俺の首に伸びた。
「お前に、人を好きになる資格なんてねえよ」
喉仏を親指で押されて、痛みを覚悟したものの手はすぐに離れ、ベットから離れたダンは部屋から出て行った。
……やってられるか。
帰る。もう借りてたアパートはダンが荷物を運んで退去しちゃったから、大学の知り合いの研究室にいくか、野宿の方がましだ。
知らん。嫌い。馬鹿。
噛まれるのか吸われるのか、怖いのに抵抗できない。力じゃ敵わない。
結局この先、喧嘩しても俺は何一つダンに敵わないんだからさ。
力関係ができてしまっている。ダンの手のひらのでしか好き勝手できないなんて、馬鹿みたいな関係じゃん。
惚れ薬? 知るか。勝手にずっと呪われてろ。勝手に俺のことを好きでいろ。
好きな相手を服従させるやつが、幸せになれるわけない。
起き上がって、部屋の隅に置かれた俺の荷物から服を取り出そうと立ち上がる。
噛まれた部分が痛むけど、一番痛いのはやっぱ乳首だ。
痛みで涙が出るなんて、前世ぶりだった。けど前世の戦乱の世でさえ乳首なんか痛まなかった。
キャリーケースを持って、キャスターが大理石を転がる音が響く中、悔しいのか虚しいのか怒りなのか分からない涙が襲った。
明日からまた、就活生活に逆戻りだな。
俺がとぼとぼ玄関へ向かっていると、一階オートロックの解除音と革靴が吹き抜けの空間に響きわたる音が聞こえてきた。
エスカレーターの下を覗くと白く小さな鞄を持ったダンが、二段抜かしでエスカレーターを上がってきていた。
急いで隠れる場所を探すが、腰ぐらいの高さしかない観葉植物しかない。
キャリーケースと観葉植物の後ろに隠れたが、駆け上がってきたダンに簡単に発見されたのは言うまでも無い。
「なにを勝手に出て行こうとしている」
「……俺の勝手だろ」
一緒のベットに眠れるわけがないだろう。
「これを貰ってきたから、機嫌を直せ」
機嫌が悪くなったダンに、身体に貼り付いた花びらを全て唇で取られた。
吸い付いて取るわけではなく、時折戯れのように花びらを噛む。
吸われるのか、噛まれるのか。痛みを恐れて、唇が触れる度に身体が震えた。
全てはダンのさじ加減なので、俺は抵抗もできず、ただただ虚しく身体をこわばらせていくだけ。
「魔王……」
体中が痛む俺を、ベットまで優しく抱いて運んでくれたダンに、天蓋のカーテンを引っ張りながら、睨み付けた。
「だから名前を呼べと」
「お前の愛ってなんなの。痛いのが愛とでも思ってんの。好きなら何しても許されるの」
また機嫌が悪くなるんだろうなってげんなりしたけど、言わずにはいられなかった。
急落下した。大学に迎えに来てからお風呂までの甘い雰囲気が全て風呂の中で泡と一緒に流れてしまった感じ。
「俺は嘘を言っていない。お前は可哀想なやつだ」
ダンが冷たい目で俺を見下ろしている。
「お前なんて大嫌いだ。ばーか」
睨み付けて、引っ張ったカーテンを力強く引っ張った。
ビリビリと裂けていく音を聞き、切れたあと、ベットの外へ捨ててやった。
「嫌い。大嫌い。ばーっか、ばか」
子どもの喧嘩みたいに、語彙力の無い攻撃を続けるとダンの手が俺の首に伸びた。
「お前に、人を好きになる資格なんてねえよ」
喉仏を親指で押されて、痛みを覚悟したものの手はすぐに離れ、ベットから離れたダンは部屋から出て行った。
……やってられるか。
帰る。もう借りてたアパートはダンが荷物を運んで退去しちゃったから、大学の知り合いの研究室にいくか、野宿の方がましだ。
知らん。嫌い。馬鹿。
噛まれるのか吸われるのか、怖いのに抵抗できない。力じゃ敵わない。
結局この先、喧嘩しても俺は何一つダンに敵わないんだからさ。
力関係ができてしまっている。ダンの手のひらのでしか好き勝手できないなんて、馬鹿みたいな関係じゃん。
惚れ薬? 知るか。勝手にずっと呪われてろ。勝手に俺のことを好きでいろ。
好きな相手を服従させるやつが、幸せになれるわけない。
起き上がって、部屋の隅に置かれた俺の荷物から服を取り出そうと立ち上がる。
噛まれた部分が痛むけど、一番痛いのはやっぱ乳首だ。
痛みで涙が出るなんて、前世ぶりだった。けど前世の戦乱の世でさえ乳首なんか痛まなかった。
キャリーケースを持って、キャスターが大理石を転がる音が響く中、悔しいのか虚しいのか怒りなのか分からない涙が襲った。
明日からまた、就活生活に逆戻りだな。
俺がとぼとぼ玄関へ向かっていると、一階オートロックの解除音と革靴が吹き抜けの空間に響きわたる音が聞こえてきた。
エスカレーターの下を覗くと白く小さな鞄を持ったダンが、二段抜かしでエスカレーターを上がってきていた。
急いで隠れる場所を探すが、腰ぐらいの高さしかない観葉植物しかない。
キャリーケースと観葉植物の後ろに隠れたが、駆け上がってきたダンに簡単に発見されたのは言うまでも無い。
「なにを勝手に出て行こうとしている」
「……俺の勝手だろ」
一緒のベットに眠れるわけがないだろう。
「これを貰ってきたから、機嫌を直せ」
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