国の法律により、ハムスターとお見合いしました。

篠原愛紀

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立崎 流伽の場合。

立崎 流伽の場合。⑥

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「あの、いえ、私は……」

「俺が作った味噌汁、……一度も美味しいって言ってもらえなかったから。俺、流伽に食べてもらいたいなっとか思ったり」

このハムスター、私に情で訴えてきている。いや、わざと私の良心を擽ってるのかな。

分からなくて、仲人さんに助けを求めた。

「お味噌汁って、赤味噌? それとも白味噌かしら」

「全くどうでもいいです!」

「俺は赤ですかね。出汁は昆布が最強です」

「じゃあ赤を手配するわね」

 私の意見は全く尊重されず、この流れはルームシェアすることに決定している。

「あの、仲人さん」

「本当に嫌ならブザーが鳴るでしょ?」

 大丈夫よ、と仲人さんは嬉しそうに携帯を取り出してルームシェアの手配を始めだした。

 ハムスターは頬に手を当てて、佇んでる。

「……帰ったら、おかえりって言える家族がいるのかあ。すげえ楽しみだなあ」

「……」

 とても楽しみにしているハムスターを見ると、貴方は嫌だとはっきり断れない。

 この人、私が隣にいることを本当に喜んでくれているんだから。

「私たちって、どこで会ったんでしょうか」

 仲人さんの電話が終わるまで、ハムスターにそう聞いてみた。

 花巻 一慶。

 私の記憶の中に、その名前は確認できない。

「隠蔽されたかなあ。言っていいのかなあ。でも俺、公式プロフィールに公開してるからいいのかなあ」

 もじもじと、勿体ぶってハムスターはブツブツ言うだけではっきりしない。


勿体ぶった言い方に多少は腹が立つが、このお見合いは義務であり、彼を認識するまで拒否はできないと言うことなのだ。

お見合いの法律の穴にうまくつけ込まれた気がする。

「まあ、もし気になったら吾妻プロレス花巻で検索して。プロフに書いてるよ」

「それって質問の回答になってますか?」

ただ知り合いか聞いただけのはずなのに、全くすっきりできていない。

「全く覚えてないって意外とダメージがあるんだよ。今、HP一くらい」

「瀕死じゃん」

ブリッジしてたくせに、と思いつつハムスターはそれ以上口を破ろうとはしなかった。

あのハムスター、逆さ磔にして自供させてやろうか。

「一応、立崎さんは未成年ですので保護者の同意書が必要です。明日の放課後までに用意するので、今日は一度帰宅して大丈夫ですよ」

「……この状況で普通に家に帰って眠れません」

自分のお見合い相手がハムスターの時点で、普通になんてできないのに。

「凛口くんは、お見合いを終わらせて校門で貴方を待ってるみたいですよ」


「そうなんですか」

一河は確かに見た目も悪くないし、性格も穏やかで良いから相手が気に入らないわけないもんね。

「じゃあ、さっきのブザーは水咲かあ」

 

 水咲は確かに我が強いし、今回のお見合いで一番ピリピリしていたもんね。

「先ほどのブザーは、水咲さんのお相手ね。貴方も知ってるんじゃないかしら。クラスは違うけど、サッカー部の」

「七瀬くん!?」

驚いて思わず身を乗り出してしまった。仲人さんは私の迫力に、言いかけたまま頷く。

一年三組の七瀬孔一くんだとしたら、学年で一番モテる男の子だ。

女の子ならとにかく優しくて、フェミニストで、紳士的なんだけど、誰とでもすぐ付き合って別れちゃう人だ。

キザで甘い言葉ばっか喋るけど、あの顔なら許せる。

「ひええ。七瀬くんかあ。七瀬くんと高校で学生結婚って注目の的だし憧れちゃう少女漫画みたいな展開だなあ。いいなー」

同じ学年で一番モテる人でライバル多いとか絶対に、少女漫画の王道みたいな学園生活が待ってるでしょ。

「それぐらいでやめてあげて」

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