国の法律により、ハムスターとお見合いしました。

篠原愛紀

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二、俺の話を聞けイエーイ

二、俺の話を聞けイエーイ ⑧

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それなのに。

「うー……」

夜中になると、滑車を回す音は響く。

夜行性のハムスターの習性みたいに、夜にも筋トレをしてるんだろうけど、私には回し車を回すハムスターにしか見えない。

でも閉所が苦手な彼がドアをあけて筋トレをするので、私の部屋にも聞えてくるのであった。

注意するべきか、でも体を鍛えるのが彼の仕事なので見守るべきか。

答えがでないために、今日も私は寝不足なのである。

***

一河は未だに亜里沙先輩が人魚に見えるらしい。

私もルームシェアしてるが、一慶さんはハムスターのまま。

水咲に聞いても『私には関係ない』と相手からどう見られているのかはもう興味がないらしい。

私も、恋愛云々を抜きにすれば一慶さんは嫌いじゃない。

 テンションについていけない部分は多々あるけれど、だ。

「流伽ちゃん」

「孔一くん」

 そして学園のアイドルだと思っていた孔一くんがちょっとだけ嫌いになった。

 こんなに爽やかで格好いいし、少女漫画の中から抜け出した理想の恋愛結婚相手だったのに。

 放課後のまばらになった教室で、こんなイケメンに声をかけられたらきっと嬉しいはずなのに。

「どうしたの?」

「流伽ちゃんが週末の吾妻プロレスを見に行くって聞いたから」


聞いたから、とは誰だろう。水咲は孔一くんとは最小限の会話しかしたことがないって言っていた。

「誰から聞いたんです?」

「森苺先輩。昨日、うちの父の立食パーティーに家族全員で参加してくれてて、お見合い中の俺を心配して声をかけてくれてね」

「政治家の立食パーティー……」

 そんなパーティーに物怖じせずに参加できちゃう家柄なんだ。

 孔一くんも小さな頃から政治家の大人と接しているなら、慣れていそう。

「で、それがどうしたの?」

「俺も行ってみたいなあって。だめ?」

「え……えーっと」

 水咲のお見合い相手だし断るのは失礼だし断る理由はない。

「人数決まっちゃった?」

「えっとね、来てくれるのは嬉しいし嫌じゃないし、水咲と孔一くんのお見合いに口出したくないから言うけどね」

 渋る私の様子に、整った顔で首を傾げる。

 ので、私は言いにくかったけど、職員室に行って席を外している水咲を思い、こぶしを握った。

「孔一くんが水咲とのお見合いを、冷めた発言するのが苦手なの」


 ちらりと孔一くんの顔を見ると、面食らったような目を見開いて呆然としているような、なんとも言えない表情をしていた。

「なんか俺、水咲さんを無意識に失礼なこと言ってた?」

「ううん。二人ともお見合いにストイックだから、なんていうのかな。国が定めたお見合いだから結婚するって雰囲気だから」

「それの何が悪いの?」

 孔一くんは首を傾げて、私を訝しげに見る。

 私の方が異端だと言わんばかりの視線に、こちらの方が面食らう。

「国が色んな角度から探してくれたお見合い相手だよ。補助金もお祝い金も出る。何か不満があるの?」

「そこには不満はないけど、やっぱ少女漫画みたいに恋をしてお付き合いして、結婚って素敵じゃない。孔一くんだって、恋愛結婚に夢があるから恋愛結婚憧憬症候群になったんでしょ」

 自分だって気づかないうちに、結婚に夢を見てるんじゃないの?

 私はただそう聞いただけだったのに。

 孔一くんは急に甘く妖しく笑ったのだ。

 イケメンだからこそできる、妖艶な微笑みだ。

「確かに。俺はお見合いに嫌悪感を持っていて、それを発言できる女性と結婚したいのかもしれない」

「え……」

「君みたいな、ね。流伽ちゃん」
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