10 / 27
第一章
お仕置きは平等に
しおりを挟む
* 『カチッ』
「ロゼリア」
「なによ」
唐突に立ち上がったシルクハットの少年に、ロゼリアは朱色の瞳をまっすぐに向ける。
「だって、“彼”の自業自得じゃない。それに、わたしには関係ないわ。だめと言われたって……」
にらみつける――と言うには、彼女の瞳の中には、怯えのような感情がにじんでおり、鋭さはない。そしてなぜか、頬がほんのりと赤みを帯びていた。
シルクハットの少年は、彼女の背後まで歩いていくと、
「君のそういうところ、嫌いじゃないんだけどね」
「――っ!?」
少年の腕に肩を抱き込まれ、ロゼリアは驚愕した様子で目を見開いた。
「けど、ちょっとやりすぎだよ」
シルクハットの少年はそう言って、右手側の手袋をロゼリアの目の前で外し、その手袋を彼女の膝の上に置く。
「心苦しくはあるんだよ……けど、悪いことをしたら罰を受けなければならないのは、きみだって一緒なんだ。……こんなこと、本当はしたくないんだけどね。言うことを聞けないっていうんなら――しかたがないよね?」
「しかたがない? そんな顔で言われても、説得力なんて、っ――ぁ!」
電気を流されたように――ロゼリアの身体が、ほんの少しだけはね上がる。
唐突な出来事だった。
その要因は、はたから見ただけでは、よくわからない。
少年の手が、ロゼリアのお腹の辺りに触れているだけなのだから。
「ロ……ロゼリア?」
「ああ、エレナは知らなかったっけ? まあ、説明するようなことでもないんだけどさ。簡単にいうと、少し特殊な力を使って、神経に軽ーい刺激を送ってるんだ」
少年の腕の中で、ロゼリアは静かに座っていた。
しかし、何か様子がおかしい。
時折硬直するようにはねる体。口からは荒い息がもれており、頬は真っ赤に紅潮している。
だが彼女の顔は、違和感のあるほどに、無表情を浮かべていた。
その様子を見て、心配げな表情を浮かべるエレナに「ロゼリアなら、大丈夫だよ」と、シルクハットの少年は笑みを向ける。
「これは痛みではないんだ。苦しみでも、精神を支配したりしているわけでもない。……とにかく、正の感情なんだよ――どちらかといえばね。だから、おれはこのやり方が一番好きなんだけど、加減が難しいんだ。やりすぎてしまうと、中毒を起こしてしまうからね」
さて、と彼は一息吐くと、ロゼリアから手を離し、その手に白い手袋をはめる。
「それじゃあ、ロゼリアの状態が戻り次第。仕切り直しをしよう」
シルクハットの少年はそう言いながら、ディーラーの席へ戻っていく。
――小刻みに痙攣し、失神したような状態のロゼリアをそのままにして。
「ロゼリア」
「なによ」
唐突に立ち上がったシルクハットの少年に、ロゼリアは朱色の瞳をまっすぐに向ける。
「だって、“彼”の自業自得じゃない。それに、わたしには関係ないわ。だめと言われたって……」
にらみつける――と言うには、彼女の瞳の中には、怯えのような感情がにじんでおり、鋭さはない。そしてなぜか、頬がほんのりと赤みを帯びていた。
シルクハットの少年は、彼女の背後まで歩いていくと、
「君のそういうところ、嫌いじゃないんだけどね」
「――っ!?」
少年の腕に肩を抱き込まれ、ロゼリアは驚愕した様子で目を見開いた。
「けど、ちょっとやりすぎだよ」
シルクハットの少年はそう言って、右手側の手袋をロゼリアの目の前で外し、その手袋を彼女の膝の上に置く。
「心苦しくはあるんだよ……けど、悪いことをしたら罰を受けなければならないのは、きみだって一緒なんだ。……こんなこと、本当はしたくないんだけどね。言うことを聞けないっていうんなら――しかたがないよね?」
「しかたがない? そんな顔で言われても、説得力なんて、っ――ぁ!」
電気を流されたように――ロゼリアの身体が、ほんの少しだけはね上がる。
唐突な出来事だった。
その要因は、はたから見ただけでは、よくわからない。
少年の手が、ロゼリアのお腹の辺りに触れているだけなのだから。
「ロ……ロゼリア?」
「ああ、エレナは知らなかったっけ? まあ、説明するようなことでもないんだけどさ。簡単にいうと、少し特殊な力を使って、神経に軽ーい刺激を送ってるんだ」
少年の腕の中で、ロゼリアは静かに座っていた。
しかし、何か様子がおかしい。
時折硬直するようにはねる体。口からは荒い息がもれており、頬は真っ赤に紅潮している。
だが彼女の顔は、違和感のあるほどに、無表情を浮かべていた。
その様子を見て、心配げな表情を浮かべるエレナに「ロゼリアなら、大丈夫だよ」と、シルクハットの少年は笑みを向ける。
「これは痛みではないんだ。苦しみでも、精神を支配したりしているわけでもない。……とにかく、正の感情なんだよ――どちらかといえばね。だから、おれはこのやり方が一番好きなんだけど、加減が難しいんだ。やりすぎてしまうと、中毒を起こしてしまうからね」
さて、と彼は一息吐くと、ロゼリアから手を離し、その手に白い手袋をはめる。
「それじゃあ、ロゼリアの状態が戻り次第。仕切り直しをしよう」
シルクハットの少年はそう言いながら、ディーラーの席へ戻っていく。
――小刻みに痙攣し、失神したような状態のロゼリアをそのままにして。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
6
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる