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青い鳥
【01】――怪しげなオブジェ
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薄暗い森の奥。
なにやら、作業をしている様子の人影があった。
その者はランプの明かりで周囲を照らしながら、何かをしているようだ。深々とフードをかぶっており、顔は確認できないが、恐らく少女だろう。
彼女は何かの作業を一通り終わらせると、
「よし、これで準備はできたわ」
その視線の先には誰もおらず、何かのオブジェように地面に突き立てられた何かがあり、
「さあ、これで逃げられないわよ。まあ、その状態なら、空腹や疲労を感じることはないし。穏やかな眠りの中にいるように、心地がいいはずだけど……。本番は、明日になってからだから、それまではその快楽をあじわっておくといいわ」
と、少女はそんなふうに話しを続けるが、返事を返す者がいるはずもなく。しかし、目の前にいるオブジェに、まるで意思でもあるかのように、少女は語り、
「あとは、人が来るのを待つだけね」
そう言って、彼女はその場を去っていったのだった。
+ + + +
――夜が明けて。
日が昇ってから数時間たち、昼ごろといった時間。昨晩フードの少女がいたその森には、穏やかな光は差し込んでいた。
そして、昨晩少女がなにかの作業をしていたその場所には――、
「なにこれ」
そうつぶやいたのは、十六、七歳くらいといった見た目の少女だった。身長は百五十五センチくらいだろうか。平均よりも若干小柄な感じの、可憐な少女である。くりっとした目をしており、すきとおるような緑色の瞳には、好奇心がまじっていた。
髪は、赤みがかった明るめの髪色をしており、肩の上でふんわりと、ゆれている。その少女の手からは、バスケットがぶらさがっており、その中には、山菜が雑にほうりこまれていた。そして、その少女の視線の先にあったのは、山菜ではなく、植物ですらない。そこにあったのは、何のために作られたのかもわからないような――謎のオブジェだった。
高さは、一メートルよりも少しひくめ。地中から、細長い管がまっすぐに伸びており、その先端部分に、青い鳥がとまっているような形になっている。しかし、鳥というには――くちばしの部分が、いささか奇妙な形をしていた。
料理用のボウル……というには小さめのそれを、そのままくっつけたような、何かを受け止めようとしているかのような、特徴的な形をしており、そのボウルのような、おおきく口を開けたような状態になっているくちばしの底――鳥で言うところの喉の部分には、豆粒ほどの穴があいている。鳥の部分を除けば、地中へと伸びる管のようだが――、
「カテリーナぁ~! ねえぇ~! なんか、こっちに変なものがあるんだけどぉ~!」
まのびした少女の声が、木々のあいだを通りぬけ、おだやかな日差しが照らす森の中へと、響きわたっていく。
しばらくして、がさがさ、と茂みの中を何かが通る音が聞こえてくる。その音は、少女のいる場所へと近づいてくると、
「クレアぁ~、どうかし――わっぷ、うぇ……ぺっぺ。葉っぱが口に……」
音の鳴った方から草木をかき分けながら出てきたのは、ブロンドの髪をした、さきほどの少女と同い年くらいの少女だった。
整った目鼻立ちをしており、落ち着きのある可愛らしい少女であるが、さらさらの長い髪には、何枚かの葉っぱがからみついており、その――カテリーナという少女のありさまに、
「なにやってんのさ」
クレアとよばれた少女はため息をつくと、カテリーナの髪についた葉っぱをとりながら、苦笑いをうかべる。
「だって、向こうのほうに、良い感じの場所があったから……」
カテリーナは手にしていたバスケットを持ち上げていう。そこには、様々な山菜が種類ごとにわけられ、きれいに整えられて、おさまっていた。
「で? 変わったものって……」
カテリーナはいいながら、琥珀《こはく》色の瞳を――鳥型オブジェにむけると、
「なに……、これ……。なんだか……」
だんだんと、声に力を無くしていくカテーリーナ。まるで、何かの暗示でもかけられたかの様子だ。しかし――すっと。彼女ににじむ違和感はすぐに引いていき、
「……変だね。なんていうか、この鳥。見てると――おならをかけてみたくなって……、あれ? なんか、私も、変になってない?」
「い、……いや? 変じゃない、と思う?」
ここに第三者がいたならば、その会話がおかしいことを理解できただろう。だが、二人のなかで、『それ』は、“常識ということになっている”様子で、
「けど、出そうにないや……」
「うん、私も……。あ、いや……、ちょっとまって」
カテリーナはクレアの言葉、に同意しかけて、首をかしげる。手は円をかくようにお腹をなでまわしており、
「もしかしてカテリーナ、いけそう?」
クレアが言うと、カテリーナは頷く。
「たぶん……。なんだか、きちゃったみたい……」
なにやら、作業をしている様子の人影があった。
その者はランプの明かりで周囲を照らしながら、何かをしているようだ。深々とフードをかぶっており、顔は確認できないが、恐らく少女だろう。
彼女は何かの作業を一通り終わらせると、
「よし、これで準備はできたわ」
その視線の先には誰もおらず、何かのオブジェように地面に突き立てられた何かがあり、
「さあ、これで逃げられないわよ。まあ、その状態なら、空腹や疲労を感じることはないし。穏やかな眠りの中にいるように、心地がいいはずだけど……。本番は、明日になってからだから、それまではその快楽をあじわっておくといいわ」
と、少女はそんなふうに話しを続けるが、返事を返す者がいるはずもなく。しかし、目の前にいるオブジェに、まるで意思でもあるかのように、少女は語り、
「あとは、人が来るのを待つだけね」
そう言って、彼女はその場を去っていったのだった。
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――夜が明けて。
日が昇ってから数時間たち、昼ごろといった時間。昨晩フードの少女がいたその森には、穏やかな光は差し込んでいた。
そして、昨晩少女がなにかの作業をしていたその場所には――、
「なにこれ」
そうつぶやいたのは、十六、七歳くらいといった見た目の少女だった。身長は百五十五センチくらいだろうか。平均よりも若干小柄な感じの、可憐な少女である。くりっとした目をしており、すきとおるような緑色の瞳には、好奇心がまじっていた。
髪は、赤みがかった明るめの髪色をしており、肩の上でふんわりと、ゆれている。その少女の手からは、バスケットがぶらさがっており、その中には、山菜が雑にほうりこまれていた。そして、その少女の視線の先にあったのは、山菜ではなく、植物ですらない。そこにあったのは、何のために作られたのかもわからないような――謎のオブジェだった。
高さは、一メートルよりも少しひくめ。地中から、細長い管がまっすぐに伸びており、その先端部分に、青い鳥がとまっているような形になっている。しかし、鳥というには――くちばしの部分が、いささか奇妙な形をしていた。
料理用のボウル……というには小さめのそれを、そのままくっつけたような、何かを受け止めようとしているかのような、特徴的な形をしており、そのボウルのような、おおきく口を開けたような状態になっているくちばしの底――鳥で言うところの喉の部分には、豆粒ほどの穴があいている。鳥の部分を除けば、地中へと伸びる管のようだが――、
「カテリーナぁ~! ねえぇ~! なんか、こっちに変なものがあるんだけどぉ~!」
まのびした少女の声が、木々のあいだを通りぬけ、おだやかな日差しが照らす森の中へと、響きわたっていく。
しばらくして、がさがさ、と茂みの中を何かが通る音が聞こえてくる。その音は、少女のいる場所へと近づいてくると、
「クレアぁ~、どうかし――わっぷ、うぇ……ぺっぺ。葉っぱが口に……」
音の鳴った方から草木をかき分けながら出てきたのは、ブロンドの髪をした、さきほどの少女と同い年くらいの少女だった。
整った目鼻立ちをしており、落ち着きのある可愛らしい少女であるが、さらさらの長い髪には、何枚かの葉っぱがからみついており、その――カテリーナという少女のありさまに、
「なにやってんのさ」
クレアとよばれた少女はため息をつくと、カテリーナの髪についた葉っぱをとりながら、苦笑いをうかべる。
「だって、向こうのほうに、良い感じの場所があったから……」
カテリーナは手にしていたバスケットを持ち上げていう。そこには、様々な山菜が種類ごとにわけられ、きれいに整えられて、おさまっていた。
「で? 変わったものって……」
カテリーナはいいながら、琥珀《こはく》色の瞳を――鳥型オブジェにむけると、
「なに……、これ……。なんだか……」
だんだんと、声に力を無くしていくカテーリーナ。まるで、何かの暗示でもかけられたかの様子だ。しかし――すっと。彼女ににじむ違和感はすぐに引いていき、
「……変だね。なんていうか、この鳥。見てると――おならをかけてみたくなって……、あれ? なんか、私も、変になってない?」
「い、……いや? 変じゃない、と思う?」
ここに第三者がいたならば、その会話がおかしいことを理解できただろう。だが、二人のなかで、『それ』は、“常識ということになっている”様子で、
「けど、出そうにないや……」
「うん、私も……。あ、いや……、ちょっとまって」
カテリーナはクレアの言葉、に同意しかけて、首をかしげる。手は円をかくようにお腹をなでまわしており、
「もしかしてカテリーナ、いけそう?」
クレアが言うと、カテリーナは頷く。
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