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婚約破棄されてどうしようもなくても私はあなたの事が大好きです
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「すみませんが、ここに婚約破棄を言い渡します」
「……そうですか」
私はそう言い、泣きそうな表情に鞭を打って無理矢理笑顔を浮かべる。
大丈夫だ。私が愛したリート様は今も変わらない。むしろ私よりもいい人を妻に迎え、この国を支えていく存在になるのだろう。ただただリート様の活躍を願うばかりだ。
「本当にすみません、でも僕はあなたを愛すことが出来ない」
自分の意志をはっきり伝えるこの人が好きだ。
だけど、優先すべきことは私の気持ちよりもリート様の幸せだ。
私よりもあの娘の方がリート様を幸せにできるならそっちの方が良いんだ。
「大丈夫です、私も、他にっ、好きな人が、います、からっ……」
途切れ途切れで明らかに嘘と分かってしまうが、ストレートに『あなたが好きです』と言うよりマシだと思う。
嗚咽が喉まで出かかっている。早くリート様から離れないとダメだ。
もう事務的な会話しかできないとしても。仕事の会話しかできなくても。二人で笑いあう日が永遠に来ないとしても私はこの場からすぐに離れなければもしかしたらリート様の心の傷が増えてしまうかもしれない。
好きな人に傷を負わすなんて言語道断だ。
「私、そろそろ行きますね。お幸せに」
「……」
リート様は居心地の悪そうな顔をして、何も言わなかった。
ごめんなさい。
「うえっ」
しばらくしたところで口から嗚咽が出る。
「ううっ」
目から涙がこぼれる。
「うあっ……ああっ……」
私は一人で誰にも見つからない様に静かに蹲り泣いた。
リート様と過ごした日々が脳裏によぎる。
今はそんなの邪魔でしかないと言うのに。
思い出の中で私たちは笑っていた。あの笑顔を私は一生背負って行かなければならないのだ。
私はひと段落したところで空を見上げた。
蹲って泣いていた私を嘲笑うかのように綺麗で、蒼く、すべてを包み込むかのような慈愛に満ちていた。
まるであの娘とリート様の今後を暗示するかのように。
「……そうですか」
私はそう言い、泣きそうな表情に鞭を打って無理矢理笑顔を浮かべる。
大丈夫だ。私が愛したリート様は今も変わらない。むしろ私よりもいい人を妻に迎え、この国を支えていく存在になるのだろう。ただただリート様の活躍を願うばかりだ。
「本当にすみません、でも僕はあなたを愛すことが出来ない」
自分の意志をはっきり伝えるこの人が好きだ。
だけど、優先すべきことは私の気持ちよりもリート様の幸せだ。
私よりもあの娘の方がリート様を幸せにできるならそっちの方が良いんだ。
「大丈夫です、私も、他にっ、好きな人が、います、からっ……」
途切れ途切れで明らかに嘘と分かってしまうが、ストレートに『あなたが好きです』と言うよりマシだと思う。
嗚咽が喉まで出かかっている。早くリート様から離れないとダメだ。
もう事務的な会話しかできないとしても。仕事の会話しかできなくても。二人で笑いあう日が永遠に来ないとしても私はこの場からすぐに離れなければもしかしたらリート様の心の傷が増えてしまうかもしれない。
好きな人に傷を負わすなんて言語道断だ。
「私、そろそろ行きますね。お幸せに」
「……」
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ごめんなさい。
「うえっ」
しばらくしたところで口から嗚咽が出る。
「ううっ」
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「うあっ……ああっ……」
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私はひと段落したところで空を見上げた。
蹲って泣いていた私を嘲笑うかのように綺麗で、蒼く、すべてを包み込むかのような慈愛に満ちていた。
まるであの娘とリート様の今後を暗示するかのように。
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