異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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王都出立編

交渉の結果と打開策

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 俺とリリアが屋敷の前で待っていると、しばらくしてブルームとランパードが戻ってきた。
 二人とも浮かない顔のように見えたので、上手くいかなかったのだと判断した。

「……どうでした?」

「一応、話はできたのだが、要領を得ない反応だった」

「領主様は別人のようで、ブルームさんが話しかけても反応が乏しかった……」

 二人から感想を聞くことはできたものの、どのような状況であったのかを想像することは難しかった。

「その様子だと、禁止令はそのままということですか?」

「……うん、そうだ。領主様があの調子じゃ、どうしたものやら」

 打つ手なしといった状況になり、ランパードには思い詰めるような気配があった。
 俺にできそうなことは思い浮かばず、彼にかける言葉が見つからない。

 俺たちが屋敷の前で話していると、広い額とちょび髭が印象的な中年の男が屋敷から出てきた。

「あれは……領主が出てきたぞ」

「二人が言っていた通り、どこか様子が変ですね」

 レアレス島の領主はボケるにはまだ早い年齢に見える。
 ただ、どこか上の空で心ここにあらずといった様子だった。
 領主は屋敷の前から彷徨うように歩いていった。

「まだ可能性の域を出ませんが、領主殿は何かに操られているような気配を感じます。遠くから見ただけでは、魔法かそれ以外の方法なのかまでは分かりません」

 静かに状況を見守るような様子だったリリアが口を開いた。
 これまでに見たことがないような神妙な面持ちをしている。

「やはり、優秀な剣士は観察眼が鋭い。リリアよ、領主変貌の原因を調べてはくれまいか」

「ええ、もちろん。私も魚が獲れた方がよいですから」

 リリアは緊張した表情を緩めてから、涼しげに微笑んだ。
 彼女の実力を見る機会はなかったが、本領発揮の場面が近づいている気がした。

「そういえば、マルク殿は冒険者をやっていたことがあるのですよね」

「はい、自分の店を始める前は」

「私一人では何かあった時に困るので、一緒に来てください」

「えっ、俺でいいんですか?」 

「ブルーム様は戦闘員ではなく、ランパードさんを巻きこむわけにはいきません。武術、魔法、何か得意な戦い方はありますか?」

「剣を少しと、魔法が多少使えます」

「そうですか。では、こちらをお使いください」

 リリアが腰に差していたのはミドルソードだけではなく、見えないところに脇差しのようなショートソードを抱えていた。
 彼女はそれを俺に差し出した。

 主力はミドルソードのようだが、ショートソードの方もそれなりに使いこまれた様子が見て取れる。
 鞘と柄をそれぞれの手に持って抜き出すと、磨き抜かれた剣身が姿を現した。

「……こんな立派な剣を借りてしまっても?」

「丸腰では危険に対処できませんから」

 リリアはこちらを気遣うように穏やかな顔を見せた。
 彼女の厚意に甘えて、ショートソードを使わせてもらうことにした。
 自分で持ちこんだ武器もあるため、状況に合わせて併用すればいいだろう。
 それにリリアの厚意を無下にしたくない気持ちもあった。

「マルク、リリア。レアレス島の土地勘はないだろうから、十分に用心するのだ」

「ええ、分かっております」

「リリアちゃん、部外者なのに力を貸してくれてありがとう。領主様はおれたち漁師の恩人なんだ。どうか、頼む」

「お任せください。あと、お二人はここから離れておいた方がいいかもしれません」

「うむ、ここは町から少し離れていて、人通りも少ないからな。ランパードと町へ戻っておこう。はぐれるといかんから、定期船を下りた辺りで待つことにしよう」

「それでは後ほど合流しましょう」

 俺とリリアは屋敷の前を離れて、領主の後を追った。
 二人で足早に歩くと、すぐに領主の後ろ姿が見えた。

「……どこへ行くんでしょうかね?」

 領主の進行方向は通りから外れており、大きな岩の転がる海岸線が見えた。
 今は手ぶらなので、釣りに行くということもないだろう。 
  
「何者かに操られているのならば、目的なく移動するとは考えにくいです。後を追えば何かが分かるかもしれません」

 リリアは言い終えると、軽やかな足取りで前に進んだ。
 俺は足音を立てないように気をつけながら、彼女についていく。

 距離を保ったまま領主の後を追っていると、草むらを通過して海岸に下りた。
 そして、彼の後ろ姿は海岸沿いの洞窟に吸いこまれるように消えていった。

「いかにもな洞窟ですね。中まで追いますか?」

「ええ、慎重に追跡します」

 リリアはこちらの質問に頷くと、ここまでと同じ足取りで洞窟へと向かった。
 俺も遅れないように彼女の後に続いた。

 正面まで来ると、洞窟の様子がよく分かった。
 岩壁にぽっかりと穴が空いて、奥まで薄暗い空間が広がっていた。
 冒険者でなければ、入ることをやめたくなるような雰囲気を感じる。

「この感じだとモンスターがいるかもしれませんね」

「剣を抜いておいた方がよいと思います」

 リリアは流れるような動きで、鞘からミドルソードを引き抜いた。
 俺もそれに倣(なら)って、借りたショートソードを構えた。

「使わせてもらいます」

「ええ、遠慮なく」

「気づかれそうですけど、サスペンド・フレイムかホーリーライトなしでは暗そうですね」

「足元も滑りそうですから、どうか気をつけて」

「分かりました。ホーリーライトだと光が広がるから、サスペンド・フレイムの方がいい気がします」

「私も賛成です。それでいきましょう」

 俺たちはサスペンド・フレイムを唱えて、洞窟の中へと足を踏み入れた。
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