異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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高級キノコを求めて

食材探しについて話し合う

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 老人から存在の隠ぺいを可能にする魔道具、そのリモコンの役目を果たすものをセットで受け取ると、お礼を言って山中のテントを後にした。
 それから、山道を抜けて街道に出た後、バラムの町に戻ってきた。
 足取りが軽いせいか、店の前に着くまであっという間だった。

 周囲の様子をちらちらと確かめた後、慎重に敷地に入る。
 バラムの町でこの道具を使いたがる人がいるかは予想もつかないが、誰かに知られてしまうことは避けておいた方がいいだろう。
 
 店の中に進んで人気がないことを再確認した後、懐(ふところ)から受け取ったばかりの魔道具を取り出した。
 
 老人はカップで見本を示していたので、こちらも同じように適当なカップで試してみることにした。
 光を照射する装置とリモコンもどきを同時に手に取る。
 片手で操作してオンにすると、反対の手にある装置から一直線に光が伸びた。

「――うわっ!?」

 すでにその効果を知っているはずなのに、驚きのあまり声が出てしまった。
 カップは最初からそこになかったかのように消えていた。

「……ええと、たしかこれを……」

 リモコンを操作してオフにする。
 すると、今度は何ごともなかったようにカップが現れた。

 自分で希望した効果だが、改めてとんでもない効果に絶句する。
 できる限り、テオの姿を隠すという目的に限定して使おう。
 これがあれば何でもできてしまいそうな気がする。

 光を照射する方の装置は陶器のように滑らかで、かといって割れやすそうな繊細さは感じられない。
 転生前の記憶と重なる部分があると思ったら、自動車の鍵をコントロールするキーレスエントリーに近いものだと気づいた。
 科学の進んだ地球でさえ、物体を不可視にする技術はなかったことを思い出す。

「……魔道具って、何でもできてしまうんだな」

 一見、不思議な小さな箱にしか見えないそれをしげしげと見つめた。



 翌朝。自分の店にやってきた。
 今日から何日かは店休日にして、珍しい食材を探しに行くつもりだった。
 まだ、目的地は決めていないため、昼からハンクと話して決めるつもりだ。

 すでに常連のお客には休みにすることを伝えてあるものの、それ以外のお客向けに休みの予定を書いて、店の入口付近に貼り紙をした。
 風雨にさらされたらひとたまりもないところだが、バラムは悪天候になることが少ないため、しばらく保ってくれるはずだ。

「マルクさん、おはようございます」
  
「おっと、おはよう」

 紙を貼り終えたところで、エスカがやってきた。
 一時期、気まずい状況が続いたものの、最近は今まで通りの関係に戻っている。
 彼女がギルドの依頼で忙しくない時は店を手伝ってもらうこともある。

「今日からお休みでしたね」

「何日かは留守にする予定なんだ」

「珍しい食材が手に入ったら、わたしにも食べさせてください」

「それはもちろん」

 エスカはほっこりするような笑顔をしていた。
 やはり、彼女とはこんな感じで、ゆったりまったりした関係が心地よい。

「散歩の途中で通っただけなので。お店が忙しい時は声かけてくださいね」

「うん、ありがとう。それじゃあまた」

 エスカは小さく手を振りながら、通りを抜けて歩いていった。

 それから、店の内外のメンテナンスをしたり、タレの具合を確かめたりするうちに気がつくと昼の時間だった。
 ハンクとは昼飯を食べながら話すつもりだったので、すぐに取りかかるとしよう。
 焼肉にするのもいいと思うが、休日に鉄板を使うのは手間なので、厨房で作れる料理にしておく。

 簡易冷蔵庫から残しておいた牛肉の切り落としを取り出して、焼き野菜で使うつもりだったタマネギを大まかに刻んでおく。
 アデル相手では上手くいかないだろうが、ハンクと二人なら問題ない料理。
 男の焼肉丼――米は手に入らないないのであくまで風――を作り始めた。

 かまどに火を入れてフライパンを加熱した後、油を引いて刻んだタマネギを投入。
 タマネギがしんなりしたところで、牛肉を一緒に炒める。
 そこへ店で使っているタレ、塩やスパイスなどを整えるために追加。

「っし、これで完成っと」

 時間的にハンクがいつ来てもおかしくないので、二人分を皿に取り分ける。
 続けて店の外にある普段はお客が使う席へと、料理の乗った皿や食器などを運ぶ。
 
「おっ、いい匂いがするな」

 店の入口からハンクが歩いてくるところだった。
 いつも通りの気さくな様子に、和やかな気持ちになる。

「今できたところです」

「これはまずは昼飯だな」

 ハンクが椅子に腰を下ろして、こちらはその向かいの席に座った。

「それじゃあ、遠慮なく」

「はい、どうぞ」

 俺たちは食事をしながら、会話を始めた。
 
「それで目的地なんですけど、どの辺りがいいですかね」

「珍しい食材といっても、ピンからキリまで色々あるんだが……テオが飛べるのを活かしつつとなると、バラムから北の方に行った山の中に美味いキノコがある」

「へえ、キノコ……」

 バラム周辺でも採れるが、そこまで希少価値のあるものはない。
 サバイバルに詳しいエスカに分けてもらったことが何度かある。

「何つったかな、コショネ茸だったか。丸々したキノコで香りもいいし、味と触感がしっかりしていて、それなりに高級品だったと思うぞ」

「それはいいですね。焼き野菜の一品としても使えそうで」

「この辺りには出回らねえみたいだが、デュラスの市場で見かけたことがある」

「そうか、北の方だからデュラス方面になるのか」 

 デュラスという単語からフランの顔が思い浮かんだ。
 久しく顔を合わせていないが、元気にやっているだろうか。

「そういえば、テオの背中に合う鞍を用意しておいたから、出発する時につけるのを手伝ってもらえるか?」

「もちろんです。鞍があるなら速く飛んでも大丈夫そうですね」

「その分だけ移動時間も短くなるから、荷物は少なめでよさそうだな」

 ハンクとのやりとりはスムーズに進み、食材探しの予定が順調に決まっていった。
 だいたいの話がまとまったところで、明日の朝にテオも含めた三人で出発するということになった。
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