異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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ダンジョンのフォアグラを求めて

アデルとのフォアグラの調理

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「まあ、無事でよかった。フォアグラが手に入ったんだ。アデルに教えてやろうぜ」

「ああっ、そうですね」

「えっ、フォアグラがあったの?」

 アデルは目尻を手の甲で拭うと、驚いた様子で言った。

「俺が閉じこめられた洞窟にボードルアがいて、シルバーゴブリンと捕まえました」

「……シルバーゴブリン?」

 彼女は戸惑いの浮かぶ表情を見せた。
 いきなりいなくなった人間がこんな話をすれば、そうなるのも自然な反応だろう。
 俺は連れ去られる前の経緯と洞窟での出来事を説明した。
 
「――そんなことがあったのね」

 洞窟内でシルバーゴブリンに助けられたことを伝えると、アデルは納得するような表情になった。

「食堂の男と香水の店の女性が関係しているとは思えないですが、これだけ広い街だと誰が盗賊とつながってるか分かりません」

「その店の女をとっ捕まえて、洗いざらい話してもらおうかしら」

 アデルは表情を変えず、声音に怒りを含ませている。
 傍目に見て、とても恐ろしいことになっている。

「まあ、落ちつけって。ムルカの規模じゃ尻尾を掴ませるようなことねえだろ」

 ハンクはそんなことお前も分かるだろと言いたげな態度だった。
 彼の言葉で冷静さを取り戻したのか、アデルは普段の様子に戻った。

「そうね、妙な連中に目をつけられても厄介だから」

「ああっ、そういうこった」 

 アデルとハンクが手を合わせれば、そこらの盗賊に遅れを取ることはないだろう。
 冒険者が束になったところで、上位ランクでなければ負けはありえない。
 だからといって、二人が戦いを望むことは考えられない。

「身の回りに注意するように聞いていたのに、俺自身に気の緩みがあったと思います。フォアグラが手に入ったわけですし、三人で食べませんか?」

「私としたことがフォアグラがあるって聞いたのに」

「おれも食べたい。ここはキッチンはないのか?」

「そういえば、ここは城か何かですか?」

 他に重要なことがあったので、聞きそびれていた。

「ああっ、ここはムルカの有力者の邸宅を再利用した宿泊施設なのよ。どこか安全なところで待機しようと思って」

「そういうことなら、料理ができる場所はありそうですね」

「私も詳しくないから、皆で行きましょう」

 俺たちは必要なものをまとめて、三人で部屋を出た。
 アデルが受付で確認をしてくれて、料理のできる場所に移動した。
 本格的な調理場では客向けの料理を作るはずなので、ここは家庭料理を作るような大きさだった。

「そこまで広くはないですけど、必要な道具はありそうかな」

 俺は室内を見回しながら言った。
 調理器具は幅広く用意されていて、棚の中には食材が並ぶ。
 
「マルクはフォアグラを調理したことある?」

「いえ、ありません」

 荷物をテーブルに置いてから、アデルと会話を続ける。
 
「それなら、私が作るわね。何度か作ったことがあるから」

「はい、お願いします」

 彼女と話していると、ハンクはフォアグラの包みを開いていた。
 こちらから見る限り、鮮度は保たれたままで見た目に変わりはない。
 
「おれも経験がないから、ここはアデルに任せるとしよう」

「ええ、任せて」

 フォアグラの調理はアデルに一任されることになった。
 
「よかったら、手伝ってもいいですか。フォアグラを調理してみたくて」

「ええ、いいわ。ほとんど一人でできてしまうから、あまり頼める作業はないかもしないわよ」

「それで大丈夫です」

 洞窟でボードルアを捕まえたり、しばらく閉じこめられたりしていたので、がっつり料理をしたい気分ではなかった。
 今は補助程度の作業がちょうどいいと思う。

 アデルは両腕の袖をまくると調理を開始した。
 彼女は包みの上に置かれたボードルアの肝――つまりフォアグラ――を眺めた後、お湯を沸かすように指示を出した。

 俺はかまどに火をかけて、火力を確保してから水の入った鍋を置いた。
 お湯が沸くのを待っていると、アデルは調理場の中から必要な調理器具や材料を集めてテーブルにまとめた。
 その様子を眺めるうちにお湯が沸いて、彼女に声をかける。

「あっ、お湯が沸きました」

「すぐ使うから、そのままにしておいて」

「はい」

 アデルは金属製のパッドにフォアグラを並べると、沸いたお湯をサッとかけて湯引きのようなことをした。

「これでだいぶ臭みが取れるのよ」

「へえ、勉強になります」

 それから彼女は別のパッドを用意して、下味をつけ始めた。
 白ワイン、塩コショウ、名前の分からないハーブ。
 なかなかの手際で早いペースで作業が進んでいる。

「ここにある蒸し料理に使う布を洗っておいてくれる?」

「はい、分かりました」

 何に使うのかは想像できないが、白い布を調理場の水で洗い始めた。
 うちの店と同じように湧き水を通しているようで、手に触れた水がずいぶんと冷たく感じられる。

 その布を洗い終えてアデルに渡すと、彼女が味つけ済みのフォアグラを布に包み始めた。
 あまり見たことのない調理法に目が釘づけになる。

「布は何枚かあるし、よかったらやってみる?」

「そうですね、やってみます」

 彼女の手元を見ながら、同じように形を整えていく。
 太めの筒状にして少しずつ長さを伸ばす要領だ。

「思ったよりも簡単です」

「そんなに難しくないわよね。柔らかくて加工しやすいし」

 二人で話しながら、順調に包むことができた。
 その作業を終えたところで、今度はアデル自らかまどの用意を始めた。

「これから、今包んだものを蒸すわ。火加減を人任せにはできないから、ここからは私がやるわね」

「お願いします」

 アデルは真剣な表情で、火力の調整を蒸し器の用意を進めている。
 完成形がどのようなものになるか、期待が高まっていた。
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