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和の国サクラギとミズキ姫
アカネからの報告
「……姫様は嫁入り前の身であられる。不遜な振る舞いは万死に値する」
町娘風のミズキに目を奪われていると、アカネから冷たい空気を感じた。
行きがかり上、仲間になったはずなのだが、どこか様子がおかしいぞ……。
「はい、そこまでー。アカネの方こそ、気に触るものは全て斬り伏せるみたいな振る舞いは卒業しなさい」
ミズキが前に出て、アカネを制した。
まるで猛獣を御する動物使いみたいだ。
「ああっ、アカネ様……あの美貌に鋭い眼差し……恋してしまいそうです」
主人と番犬のやりとりをよそに、リンドウはアカネに見惚れている。
本人に気づかれていないからよいものの、アカネに目をつけられたら危ないんじゃないだろうか。
こちらの不安をよそに、アカネは仕切り直すように咳払いをして話し始めた。
「リンドウ殿も含めて村の衆は席を外してもらえるだろうか。これから我らは重要な話をせねばならぬ」
アカネの神妙な様子を汲み取るように、村の女たちがそそくさと立ち去った。
続いて、リンドウも一礼してこの場を後にした。
「それでは姫様、それにマルク殿とアデル殿。火山の状況と作戦について報告をさせて頂く」
会話の対象にミズキが入ると言葉尻が丸くなるなと思いつつ、アカネの話に集中する。
「――火山の状況ですが、攻めこまれるとは思いもしないようで、警戒は手薄でした。目的地の火口まで、拙者だけならば容易に侵入できるでしょう」
……おやっ、火口とは。
この作戦の肝心なところを聞きそびれたままなことに気づく。
「あの、流れで猿人族を退治するつもりでいたんですけど、目的は何か別のことですか?」
「ああっ、ごめん。重要なことなのに、余裕がなくて言いそびれちゃった」
ミズキが率先して謝罪の言葉を述べたが、アカネへの質問のつもりだった。
「姫様、拙者にも責任があります。お二人には申し訳なかった。この通りだ」
アカネは俺とアデルに対して頭を下げた。
「いやいや、そんなに気にしてないので」
俺はそう言いつつ、アデルの方を横目で見やる。
彼女も知らされていないはずなので、不満を抱いていないか気にかかった。
「……ミズキ。例の宝刀は実在するのね」
「そういえば、アデルに話したことがあったっけ」
アデルの態度には怒りや不満は見られず、彼女はミズキに問いかけていた。
その問いにミズキは自然な姿勢で応じたのだった。
「話の腰を折ってしまうんですけど、俺にはさっぱり……」
アデルの口にした宝刀というのは何か特別な意味がありそうだが、サクラギ初来訪の身としては理解が追いついていない。
「それじゃあ、あたしから話そっか」
「姫様、お願いします」
「今回の作戦で重要な位置づけなんだけど、その宝刀っていうのはサクラギの宝物庫に代々保管されている特別な武具なんだ」
ミズキに目を合わせて、先を促すように頷く。
「それで宝刀を火口に投げこめば、ヒフキ山の動きを鎮められると伝承に残ってる。これは迷信なんかじゃない。それだけ大事に継承されてきたから、お父さんは火口に投げこむことをよしとせず、猿人族の要求に応じることを村の人たちと話し合って決めたんだ」
今この瞬間、一国の大事を耳にしている。
少しずつそのことに実感が及び、両腕に静電気のような感覚が走った。
「それで今回初めて、猿人族が生贄を要求するという暴挙に出た。そのことを重く見たから、お父さんは宝刀を持ち出すことを許可した、そんな経緯なんだよ」
普段はあっけらかんとした雰囲気のミズキだが、重々しい口調で言い終えた。
「……となると、その宝刀というのはどちらに? ここまでの道中で見た覚えはないですね」
場の空気が重苦しいものに感じられるが、これだけは確かめておきたい。
「えっと、それならここに……」
ミズキが恥ずかしそうな表情で服の上からお腹の辺りに手を当てた。
帯が締められていて見えないものの、懐にしまってあると理解した。
その宝刀しかと見せよなどとのたまえば、アカネに悪即斬される可能性が高い。
「分かりました。そんなに大きくないんですね」
「片腕で抱えられる程度で、そんなに重くもない感じ」
宝刀についての確認を終えたところで、アカネが再び話を切り出す。
「猿人族は夜間にかがり火を焚くものの、そこまで広範囲ではない。暗闇に乗じて忍びこめば、容易に制圧ができると考えている」
アカネのような人物が制圧と口にすると、何だか物騒に聞こえてしまう。
「協力するのはいいけれど、日が暮れるまでまだかかるわよ」
成り行きを見守るように静かだったアデルが口を開いた。
「村の者に世話になるが、先に夕食を済ませて、その後に動き出そうと考えている」
「移動続きで休みたかったし、ちょうどいいわ」
「魔法が使えるお二人には、光魔法で助力を頼みたい。猿人族に奇襲をかけるのに重要な役目だ。作戦開始まで身を休めてほしい」
猿人族には十分な照明がないため、ホーリーライトによって優位に攻められるのだろう。
アカネの少しマシになった態度から、俺とアデルが重要な役割であると認識した。
町娘風のミズキに目を奪われていると、アカネから冷たい空気を感じた。
行きがかり上、仲間になったはずなのだが、どこか様子がおかしいぞ……。
「はい、そこまでー。アカネの方こそ、気に触るものは全て斬り伏せるみたいな振る舞いは卒業しなさい」
ミズキが前に出て、アカネを制した。
まるで猛獣を御する動物使いみたいだ。
「ああっ、アカネ様……あの美貌に鋭い眼差し……恋してしまいそうです」
主人と番犬のやりとりをよそに、リンドウはアカネに見惚れている。
本人に気づかれていないからよいものの、アカネに目をつけられたら危ないんじゃないだろうか。
こちらの不安をよそに、アカネは仕切り直すように咳払いをして話し始めた。
「リンドウ殿も含めて村の衆は席を外してもらえるだろうか。これから我らは重要な話をせねばならぬ」
アカネの神妙な様子を汲み取るように、村の女たちがそそくさと立ち去った。
続いて、リンドウも一礼してこの場を後にした。
「それでは姫様、それにマルク殿とアデル殿。火山の状況と作戦について報告をさせて頂く」
会話の対象にミズキが入ると言葉尻が丸くなるなと思いつつ、アカネの話に集中する。
「――火山の状況ですが、攻めこまれるとは思いもしないようで、警戒は手薄でした。目的地の火口まで、拙者だけならば容易に侵入できるでしょう」
……おやっ、火口とは。
この作戦の肝心なところを聞きそびれたままなことに気づく。
「あの、流れで猿人族を退治するつもりでいたんですけど、目的は何か別のことですか?」
「ああっ、ごめん。重要なことなのに、余裕がなくて言いそびれちゃった」
ミズキが率先して謝罪の言葉を述べたが、アカネへの質問のつもりだった。
「姫様、拙者にも責任があります。お二人には申し訳なかった。この通りだ」
アカネは俺とアデルに対して頭を下げた。
「いやいや、そんなに気にしてないので」
俺はそう言いつつ、アデルの方を横目で見やる。
彼女も知らされていないはずなので、不満を抱いていないか気にかかった。
「……ミズキ。例の宝刀は実在するのね」
「そういえば、アデルに話したことがあったっけ」
アデルの態度には怒りや不満は見られず、彼女はミズキに問いかけていた。
その問いにミズキは自然な姿勢で応じたのだった。
「話の腰を折ってしまうんですけど、俺にはさっぱり……」
アデルの口にした宝刀というのは何か特別な意味がありそうだが、サクラギ初来訪の身としては理解が追いついていない。
「それじゃあ、あたしから話そっか」
「姫様、お願いします」
「今回の作戦で重要な位置づけなんだけど、その宝刀っていうのはサクラギの宝物庫に代々保管されている特別な武具なんだ」
ミズキに目を合わせて、先を促すように頷く。
「それで宝刀を火口に投げこめば、ヒフキ山の動きを鎮められると伝承に残ってる。これは迷信なんかじゃない。それだけ大事に継承されてきたから、お父さんは火口に投げこむことをよしとせず、猿人族の要求に応じることを村の人たちと話し合って決めたんだ」
今この瞬間、一国の大事を耳にしている。
少しずつそのことに実感が及び、両腕に静電気のような感覚が走った。
「それで今回初めて、猿人族が生贄を要求するという暴挙に出た。そのことを重く見たから、お父さんは宝刀を持ち出すことを許可した、そんな経緯なんだよ」
普段はあっけらかんとした雰囲気のミズキだが、重々しい口調で言い終えた。
「……となると、その宝刀というのはどちらに? ここまでの道中で見た覚えはないですね」
場の空気が重苦しいものに感じられるが、これだけは確かめておきたい。
「えっと、それならここに……」
ミズキが恥ずかしそうな表情で服の上からお腹の辺りに手を当てた。
帯が締められていて見えないものの、懐にしまってあると理解した。
その宝刀しかと見せよなどとのたまえば、アカネに悪即斬される可能性が高い。
「分かりました。そんなに大きくないんですね」
「片腕で抱えられる程度で、そんなに重くもない感じ」
宝刀についての確認を終えたところで、アカネが再び話を切り出す。
「猿人族は夜間にかがり火を焚くものの、そこまで広範囲ではない。暗闇に乗じて忍びこめば、容易に制圧ができると考えている」
アカネのような人物が制圧と口にすると、何だか物騒に聞こえてしまう。
「協力するのはいいけれど、日が暮れるまでまだかかるわよ」
成り行きを見守るように静かだったアデルが口を開いた。
「村の者に世話になるが、先に夕食を済ませて、その後に動き出そうと考えている」
「移動続きで休みたかったし、ちょうどいいわ」
「魔法が使えるお二人には、光魔法で助力を頼みたい。猿人族に奇襲をかけるのに重要な役目だ。作戦開始まで身を休めてほしい」
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