異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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発展を遂げた国フェルトライン

ここまでの日々を思う

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 フレヤたちに休暇をもらってから、店のことを考えることはなかったか?
 そう問われた時、考えなかったと答えればウソになる。
 彼女やシリルが息抜きをするようにとくれた休みなので、なるべく考えないようにしていた。

 それでも旅先で目新しい食材を見かけた時、自分の焼肉屋で使えないかと考えることは何度もあった。
 フレヤたちを信頼していても、不測の事態が起きないか気にかかることも。
 とはいえ転生前の記憶を加味すれば、バラムのような町でそういったアクシデントが起きる可能性は低いことも分かっていた。

 俺は牛車の外を流れる景色を見ながら、そんなことを考えていた。
 御者台越しに見えるのは街道を行き交うフェルトライン王国周辺の行商人や旅人で、今自分がいるのは異国であることを実感する。

 移動中は乗っているだけで身体を動かしていないが、朝食から時間が経過して空腹になってきた。
 おもむろにバスケットを開けて、ロミーがくれたサンドイッチを頬張る。    

 食べながら多めに用意してあると気づいて、近くにいるアデルやミズキに分けた。
 食いしん坊キャラのアカネにもお裾分けしようとしたところ、今は空腹ではないから後で食べると返ってきた。

 それにしても、この辺りの街道は平和である。
 フェルトライン王国は発展していて、デックスなどの例外を除けば平和だし、反対側のヤルマは穏やかな南国なので、二つの国の街道は治安が保たれているようだ。

 帰り道では和風国家のサクラギに寄れるのを歓迎できる一方で、モルネア方面を通るのは気が進まなかった。
 安全のためにもサクラギでハンクと合流しておいた方がいいだろう。 
 彼は災害で壊れた民家の補修をしていたが、元気でやっているだろうか。

 アカネは口数が少ないため、時折アデルやミズキと世間的をしながら手持ち無沙汰な時間をすごす。
 何もすることがないせいか、取りとめのないことばかり考えていた。
 レイランドでは落ちつかない状況が続いたので、こうしてのんびりできることを歓迎したい気分だ。
  
 やがて停泊するためにヤルマへ到着した。
 ここでは勇者クーデリア、魔王オルス、宿屋の娘リンと再会を果たし、再び出会えたことを祝うように皆で食事をした。
 彼らに歓迎されることで、この世界に第二の故郷ができたような気持ちになった。
 
 翌日に地図のお礼に転生者のカイルに会いに行くと、レイランドの印象がどんなだったかを気にしていた。
 彼は都会よりも田舎を好んでいるよう人物なので、ネガティブな感想が聞きたかったのだと思った。
 空気を読まずにあの街を気に入ったと伝えたため、カイルの反応はいまいちだった。
 
 それから中継地点での停泊を終えた俺たちは、牛車に乗ってヤルマを出た。
 レイランドに向かった時と同じように、クーデリアとリンが見送りをしてくれた。
 今回もオルスは来なかったわけだが、彼はどっしりと構えているようで別れが寂しいらしいというのは勇者談である。

 意外といえばもう一つ印象に残った出来事があった。
 往路ではヤルマの手前で不可思議な旅籠に出くわしたわけだが、天真爛漫に見えるミズキでもあの時は肝を冷やしたらしい。
 クーデリアたちとの食事の席でミズキ本人は笑い話にしていたが、アカネは真剣な顔で聞いていた。

 その結果、アカネはクーデリアやリンに同じところを通らないルートはないかたずねたりしていたが、最終的に勇者の加護で「数日だけ晴天にする」という離れ業が行われることになった。
 通り雨の多い地域で雨が降らない日が続けば地元の人たちは不思議がったはずだが、主君思いの従者を許してあげてほしいと思った。

 ちなみに俺自身はミズキを笑うことはできない。
 あの旅籠の謎は残ったままで、できることならば近くを通りたくない。
 幸いなことにそれらしきところを通った時には目印がないことで、どの辺りだったか気づくことなく通過することができた。

 実際問題、バラムで幽霊を見たことは一度もないし、冒険者時代のでオカルトめいたものがあったこともない(怪しげな洋館や夜な夜な現れる怪しい人影とか)。
 古びた遺跡に足を運べば、グールやボーンナイトなどのアンデッドはいるものの、それらは実体を持っているため幽霊とは違うと思う。

 とにかく、クーデリアのおかげで水牛は快足を飛ばすことができて、往路よりも短い時間でサクラギへと戻ることができた。

 牛車が城下町の近くまで来たところで、ミズキは水牛を厩舎に預けに行った。
 彼女はこの国のお姫様であるため、戻るのを待って町へと足を運んだ。
 
 夕暮れのサクラギの町は風情を感じる。
 瓦屋根に当たる橙色の夕日と和服を着た町の人たち。
 転生してバラムのマルクになっても、そうした感性が残っていることに喜びと感慨を抱いた。

「あたしたちはお城に戻らないといけないから、二人は好きにしてて。モミジ屋ならあたしの紹介って伝えたら泊まれるから」

「ありがとうございます」

「長旅の後だし、すぐにバラムへは行かないでしょ? 明日、また合流しようね」

「はい、ではまた明日」

 ミズキは俺とアデルに手を振り、アカネは小さく一礼して去っていった。
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