異世界で焼肉屋を始めたら、美食家エルフと凄腕冒険者が常連になりました ~定休日にはレア食材を求めてダンジョンへ~

金色のクレヨン@釣りするWeb作家

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ベナード商会と新たな遺構

二度目の探索

 翌朝、出発の準備をした後、エンリケが用意してくれた朝食を食べた。
 アウトドアを堪能するような状況でも遺構探索の目的を忘れてはならない。
 必要なものを詰めた荷物を背負って、キャンプの中心に行くとすでに何人かが待機している状態だった。

「おはようございます」

「マルクさん、昨日はどうも」

 サムエルが声をかけてきた。
 昨日の話では彼はポーター的な役割らしい。
 それを表すように動きやすそうな装いだった。
 
「その格好ということはサムエルさんも行くんですね」

「ルカさんとマルクさんと自分の三人で行くようです。昨日の鍛錬でマルクさんの評価が上がって人数を減らしてもいいという話になったそうで」

「それは恐縮ですね」

「元冒険者というのもポイントが高いでしょう」

 サムエルの方が年長者なのだが、尊敬の眼差しを感じる。
 遺構探索は専門外ではあるものの、何度か潜ったことはある。
 探索未経験の人と比較したら、一日の長があると言えなくもない。

 二人で話しているところへ、ルカがやってきた。
 今は槍を持たずに剣帯を装着して帯剣している。
 洞窟内では振ることが難しいので、剣にしたのだと推察できる。

「おはようっす。今日はいい天気なもんで」

「今回はこの三人で行くんですね」

「人数が増えると大所帯なもんで。少数精鋭でサムエルの負担が減る分、危ない時はあっしらで守るっちゅうことっすわ」
 
 ルカに気負いは見られず、いつでも探索を始められそうな様子だった。
 
「マルクさんすみません。ルカさんから魔法で灯りを確保できると耳にしまして、松明(たいまつ)はどれぐらい用意しましょう?」

「魔力に余裕があるので魔力切れは考えにくいですけど、いつも通りの方が安全だと思います」

「承知しました。ではそのように」

 サムエルは荷物の最終確認を進めていた。
 大型のバックパックだが、彼の体格なら運搬が可能なのだろう。
 改めて目を向けると俺やルカの腕の倍近い太さがある。

「サムさん、必要なものは揃ったんで?」

「はい、準備万端です」

 ルカがたずねるとサムエルがはっきりした声で応じた。
 すでに確認済みだが、荷物のボリュームはなかなかである。

「よかったら、少し持ちましょうか? 俺の方が身軽なので」

「いえ、これぐらい運び慣れていますから」

 エンリケと同じような答えが返ってきた。
 ベナード商会はたくましい人が多いのだ。

「それよりも頼りにしてますので、危ない時はどうぞ頼みます」

「はい、もちろんです」

 サムエルは冗談っぽく笑っていた。
 今回の探索はルカと自分が戦闘員なので、ポーターの役割を担うサムエルを危険に晒すわけにはいかない。
 
「ほんじゃあ、そろそろ行きやしょう」

「「はい」」

 三人でキャンプの中心から移動を開始する。
 洞窟の入り口まではキャラバンの人たちが見送りをしてくれた。

「婿殿、ルカ、サムエル。安全第一で頼むよん」

「未知なことが多いので慎重に進みます」

「社長、高価な素材を見つけたら臨時ボーナスを弾んでほしいっすわ」

「ははっ、まあ考えておこう。成果も大事だけども、全体像を把握するために情報を集めておくんなまし」

 こうして、俺たちは洞窟の入り口から内部へと足を踏み入れた。

 ルカ、自分、サムエルというかたちで並び、縦列のかたちで進んでいる。
 前回は高揚感で気づかなかったが、中へ足を踏み入れるほどに冷たい風が顔を撫でていた。
 やがて宮殿跡のようなところに至り、薄暗くなったところでホーリーライトを唱えた。

 一旦、三人で立ち止まって周囲を確認してみたが、脅威は見当たらなかった。
 遠くでルミナイトが淡い光を放ち、幻想的な景色を作り出している。

「今んとこ大丈夫っすわ。もうちょい進んだら地図を見ながらになるんで、ペースを落として進みやす」

 先頭のルカが地図を取り出していた。
 まだ彼らが深部へ行ったわけではないそうだが、これまでの経過が反映されているのだろう。
 入り口から奥の方へやってきたが、この辺りにも人の手が入った形跡がある。
 壁画などの様子からこの場所に栄えた文明の片鱗を見出すことができる。

「おっ、これは……」

 以前、夢のような空間で出会った偉大なる者に似た風貌の老人が描かれている。
 同じようにテオを思わせるような飛竜も見受けられる。

「マルクさん、気になることでも?」

 ルカが足を止めて振り返った。
 偉大なる者のと顔を合わせたとは言えるはずもなく、適当な言い訳を考える。

「始まりの三国では信仰が禁じられて久しいので、こういう神話を思わせるものは珍しいなと」

「そういえば、ランス王国は禁止されてやしたね。この辺りは壁画だけっすわ」 

「分かりました。先に進みましょう」

 壁画から視線を話して移動を再開する。
 しばらく平坦な道だったが、下層へ続くように階段が延びている。
 
「便宜上、ここまで第一階層っすわ」

 ルカが松明を階段の先に向けながら言った。
 
「こういう感じで下にも階段があるんです?」

「今んとこ第三階層までは調査済みなもんで。第四階層への階段は見つけたんすが、その先へはまだ行けてないっすわ」

「奥行きもさることながら、地下にも続いてるんですね」

 冒険者の頃に探索した時はここよりも規模が小さい遺跡を踏破した経験がある。
 第四階層を目指すのならば、今回よりも増員して進むべきだろう。
 とにかく、まずは第二階層を覗いてみよう。
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