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ダークエルフの帰還
マリオとの別れ
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その後もラーニャとリリアの食欲が活発で、マリオが追加でもう一枚焼いてくれることになった。
やはりと言うべきか、彼はお客の入りが悪かったことでやる気の出しどころに窮していたようで、やらされているというよりも食べてくれる相手がいることを歓迎しているように見えた。
ちなみに俺とクリストフは二枚目のピザを数切れ食べたところで、お腹が満たされて手を止めていた。
一切れずつが大きかったため、食べ終えてからはお腹が重たく感じた。
そんなこちらの胃袋を案じるように、マリオが食後に薬草茶を出してくれた。
さっぱりした苦みが効きそうな感じで、意外と癖になりそうな味だった。
やがて食事が終わって片づけが済み、マリオも加わってティータイムになった。
たしか地球のペンションでもこのような感じで、オーナーと団らんのひと時をすごすような気がした。
彼のように気配りをしてくれる相手となら、くつろいですごしやすいだろう。
「ツヌーク山の件、本当に助かりました。今度、仕入れのために下山するタイミングで事情を説明して回ろうと思います。すぐに信じてもらうことは難しいけれど、客足が戻ることを信じています」
初対面の時にどこか無理をしているような素振りが窺えたものの、今のマリオは緊張が解けてリラックスしているように見えた。
今日まで孤軍奮闘するしかなかったことは負担になっていたことを実感した。
俺が同じような立場になったとしても、楽観的になるのは難しかったはずだ。
ましてや、彼はモンスターに関する知識のない一般人だから、対応に苦慮したであろうことも想像できる。
置かれた環境が日本であれ異世界であれ、相手の立場に共感できるのは同じ経験をしていなければ難しいことが多い。
俺がマリオに対して抱いたものと三人の仲間が抱いたものが同じであるはずがなかった。
それにしても、今回の件は考えさせられることが多い。
この世界には自分の店を経営する人は想像以上に存在しており、地球のように大規模な法人はほぼ皆無――ベナード商会を除いて――のため、個人経営の店が大半を占める。
バラムのような辺境であれば市場原理の働きは穏やかで、競争に巻きこまれることはほとんどない。
一方で王都やフェルトライン王国のように栄えているところでは、競合と渡り合うだけの売上や魅力がないと淘汰されることもある。
同業者との顧客の奪い合いを回避するのなら、マリオのようにこうして人里離れたところで営業することが一番の近道だ。
転生前に彼のようなライフスタイルに憧れることもあったが、今は自分の店が順調でストレスも少ないため、そんな気持ちになることは考えにくい。
それからマリオとしばらく会話を楽しんだ後、ペンションを出発する時間になった。
ラーニャに協力すると決めた以上、いつまでも長居するわけにはいかない。
全員が荷物をまとめてから、彼に頼んで預けてあった馬車を出してもらった。
「本来はこちらがもてなす側なのに、助けて頂いてありがとうございました」
「いえ、お構いなく。僕たちは当然のことをしたまでです」
クリストフが謙遜した態度で答えた。
嫌味のないさわやかさは男女問わず好感を持てると思った。
「マリオさん、お互い頑張りましょう。ペンションが繫盛することを願ってます」
「マルクさんもお身体に気をつけて、旅を楽しんでください」
別れ際、そう告げたマリオの目が潤んでいた。
難しい状況に参っているような様子は見せなかったものの、こちらが想像した以上に大変だったのだろう。
俺たちがペンションを訪れたことやツヌーク山の件を解決したことで、彼の負担が少しでも軽くなったのならいいと思った。
左右に大きく手を振るマリオに見送られながら、馬車は敷地から街道に向かった。
両脇を木々に囲まれた道を馬車が進んでいく。
昨日から休んでいたので、馬の足運びが軽いような気がした。
外から客車に流れてくる空気はさわやかで、昼下がりの陽光が木の枝や葉の間から差しこんでいる。
出発前に御者をどうするものかと考えたものの、クリストフが率先して引き受けてくれた。
理由を確認したところ、車外に面している御者台からは周囲の景色や空気が感じられるため、なかなか来ることのできない土地を記憶に残しておきたいと話していた。
王都周辺とは異なり風土であり、彼がそんなふうに考えることも理解できる。
この辺りのことを気に入ったというのも分かる気がした。
一方、客車の中には大食漢もとい大食女子がうつらうつらとしている。
昼時をすぎた時間帯というのに加えて、たくさんのピザを食べたことで眠気を催しているといったところだろう。
リリアとラーニャの横顔を眺めながら微笑ましい気持ちになった。
ツヌーク山の件で寄り道するかたちになったが、この先に解決しなければならないことがある。
本来の目的である、ラーニャの故郷であるダークエルフの里を襲った者たちと生き残りの人たちを探すことだ。
ラーニャ自身が失念しているようだが、彼女が洞窟にこもってずいぶん時間が経っているのだと思われた。
そのため、エスタンブルクの大きな街で情報を集める、あるいは実際に現地に足を運んでみるといった選択肢が候補にある。
捕まえそこねた魔物使いのことが気になるところだが、行方を見失って以降は気配を感じていない。
本来の目的ではないため、デュラス公国の関係機関に任せるべきだと思った。
やはりと言うべきか、彼はお客の入りが悪かったことでやる気の出しどころに窮していたようで、やらされているというよりも食べてくれる相手がいることを歓迎しているように見えた。
ちなみに俺とクリストフは二枚目のピザを数切れ食べたところで、お腹が満たされて手を止めていた。
一切れずつが大きかったため、食べ終えてからはお腹が重たく感じた。
そんなこちらの胃袋を案じるように、マリオが食後に薬草茶を出してくれた。
さっぱりした苦みが効きそうな感じで、意外と癖になりそうな味だった。
やがて食事が終わって片づけが済み、マリオも加わってティータイムになった。
たしか地球のペンションでもこのような感じで、オーナーと団らんのひと時をすごすような気がした。
彼のように気配りをしてくれる相手となら、くつろいですごしやすいだろう。
「ツヌーク山の件、本当に助かりました。今度、仕入れのために下山するタイミングで事情を説明して回ろうと思います。すぐに信じてもらうことは難しいけれど、客足が戻ることを信じています」
初対面の時にどこか無理をしているような素振りが窺えたものの、今のマリオは緊張が解けてリラックスしているように見えた。
今日まで孤軍奮闘するしかなかったことは負担になっていたことを実感した。
俺が同じような立場になったとしても、楽観的になるのは難しかったはずだ。
ましてや、彼はモンスターに関する知識のない一般人だから、対応に苦慮したであろうことも想像できる。
置かれた環境が日本であれ異世界であれ、相手の立場に共感できるのは同じ経験をしていなければ難しいことが多い。
俺がマリオに対して抱いたものと三人の仲間が抱いたものが同じであるはずがなかった。
それにしても、今回の件は考えさせられることが多い。
この世界には自分の店を経営する人は想像以上に存在しており、地球のように大規模な法人はほぼ皆無――ベナード商会を除いて――のため、個人経営の店が大半を占める。
バラムのような辺境であれば市場原理の働きは穏やかで、競争に巻きこまれることはほとんどない。
一方で王都やフェルトライン王国のように栄えているところでは、競合と渡り合うだけの売上や魅力がないと淘汰されることもある。
同業者との顧客の奪い合いを回避するのなら、マリオのようにこうして人里離れたところで営業することが一番の近道だ。
転生前に彼のようなライフスタイルに憧れることもあったが、今は自分の店が順調でストレスも少ないため、そんな気持ちになることは考えにくい。
それからマリオとしばらく会話を楽しんだ後、ペンションを出発する時間になった。
ラーニャに協力すると決めた以上、いつまでも長居するわけにはいかない。
全員が荷物をまとめてから、彼に頼んで預けてあった馬車を出してもらった。
「本来はこちらがもてなす側なのに、助けて頂いてありがとうございました」
「いえ、お構いなく。僕たちは当然のことをしたまでです」
クリストフが謙遜した態度で答えた。
嫌味のないさわやかさは男女問わず好感を持てると思った。
「マリオさん、お互い頑張りましょう。ペンションが繫盛することを願ってます」
「マルクさんもお身体に気をつけて、旅を楽しんでください」
別れ際、そう告げたマリオの目が潤んでいた。
難しい状況に参っているような様子は見せなかったものの、こちらが想像した以上に大変だったのだろう。
俺たちがペンションを訪れたことやツヌーク山の件を解決したことで、彼の負担が少しでも軽くなったのならいいと思った。
左右に大きく手を振るマリオに見送られながら、馬車は敷地から街道に向かった。
両脇を木々に囲まれた道を馬車が進んでいく。
昨日から休んでいたので、馬の足運びが軽いような気がした。
外から客車に流れてくる空気はさわやかで、昼下がりの陽光が木の枝や葉の間から差しこんでいる。
出発前に御者をどうするものかと考えたものの、クリストフが率先して引き受けてくれた。
理由を確認したところ、車外に面している御者台からは周囲の景色や空気が感じられるため、なかなか来ることのできない土地を記憶に残しておきたいと話していた。
王都周辺とは異なり風土であり、彼がそんなふうに考えることも理解できる。
この辺りのことを気に入ったというのも分かる気がした。
一方、客車の中には大食漢もとい大食女子がうつらうつらとしている。
昼時をすぎた時間帯というのに加えて、たくさんのピザを食べたことで眠気を催しているといったところだろう。
リリアとラーニャの横顔を眺めながら微笑ましい気持ちになった。
ツヌーク山の件で寄り道するかたちになったが、この先に解決しなければならないことがある。
本来の目的である、ラーニャの故郷であるダークエルフの里を襲った者たちと生き残りの人たちを探すことだ。
ラーニャ自身が失念しているようだが、彼女が洞窟にこもってずいぶん時間が経っているのだと思われた。
そのため、エスタンブルクの大きな街で情報を集める、あるいは実際に現地に足を運んでみるといった選択肢が候補にある。
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