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ダークエルフの帰還
ヒイラギへの帰還
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吹雪とまではいかないが、風に乗って粉雪が舞い降りる。
俺を含めた寒冷地仕様の装備を身につけた者は凍えるようなことはないが、着の身着のままの状態だったダークエルフの人質たちは寒そうに見えた。
それでも数人の弓兵が上着を貸し与えたことで、多少はマシになっているようだ。
幸いなことに山賊側の土地から出た後、さらなる追撃を受けたり、追手が現れたりということはなかった。
ダイモンたちが怒涛の攻めを見せたことで、壊滅的な打撃を与えたことが大きいのだろう。
それにヒイラギの方が優勢だったため、精兵であるリリアとクリストフが負傷する可能性は低いと思った。二人の無事を願うばかりだ。
引き続きアンズが先頭になり、その後ろに人質たちを背負った弓兵という並びだった。
俺とラーニャ、それに他の兵士は後方を扇状に並んで歩いている。
特に陣形を意識したわけではないのだが、助け出された人質たちを守りたいという思いが影響があるからなのかもしれない。
念願叶ったわけだが、ラーニャの感情を読み取ることは難しかった。
いつも以上に口数が少なくなり、うつろにも見える様子で黙々と足を運ぶような状態だった。
故郷の仲間たちを助けることができたのに、無感情ということがあるはずないことだけは分かっている。
久しぶりの再会でどう接したらいいのか分からない、あるいは救出に成功したことが夢のようということもありえる。
どちらにせよ、部外者の自分に何かできるようなことはなかった。
今はただラーニャのことを見守るだけで十分だろう。
誰もが多くを語らず静かになった状態のまま、進行方向に通用門が見えた。
門の先はヒイラギの領地であり、門番を担う見張りと数人の兵士がこちら側に立っていた。
「アンズ殿が戻られたぞ!」
「弓隊は無傷みたいだ!」
門の近くで待機していた兵士たちが元気に声を上げた。
アンズは軽く手を振って応じて、手の空いた弓兵は拳を突き上げた。
俺の近くを歩く弓兵は、自分らの出番はほとんどなかったと気まずそうにつぶやいた。
それから先頭のアンズが門の近くに到達して、他の兵士たちもそれに続いた。
ヒイラギで待機していた兵士たちは弓隊と助け出された人質たちに交互に声をかけている。
兵士たちのやりとりでダイモンを含む前線の兵士たちが優勢に攻めていることが共有されていることが分かった。
勝どきを上げるにはまだ早いが、ヒイラギの兵士たちは喜んでいるようだった。
「ラーニャさ……ん」
様子が気にかかりラーニャに声をかけようと思ったが、助け出された人質たちと肩を寄せ合っているのが目に入った。
念願の再会を迎えたわけなので、そっとしておこうと思った。
兵士たちとダークエルフたち――俺の立場としてはどちらにも属さないため、ひとまず領地に入ることにした。
和の趣のある門をくぐり抜けた後、アンズが声をかけてきた。
「久しく姉上と会っていなくてな。元気だったか?」
「元気でしたよ。それにしてもアンズさんも強いですね。吸血忍者でしたか、その影響があるんですか?」
俺がたずねるとアンズは照れくさそうに視線をそらした。
そして一息おいて口を開く。
「やれやれ、姉上から聞いてしまったのか」
「どうでしょう? アカネさんではなく、主(あるじ)であるミズキさんから聞いた気もします」
「……そうか。まあ、どちらでもいい」
アンズはそう口にして、領地の中を歩いていった。
おそらく、モモカに報告に行くのだろう。
アカネと同じように冷静沈着な立ち振る舞いが特徴だが、吸血忍者の話題は触れられたくないことのように見えた。
アンズが離れた後、門の近くに置かれた椅子に腰を下ろした。
木を削ったもので手づくり感があり、触れるとひんやり冷えている。
屋内の方が温かいので、アンズについていくこともできたが、ラーニャの様子も気がかりだった。
椅子に座ったまま彼女がいた方を見ると、他のダークエルフたちとこちらに向かって歩いていることに気づいた。
ラーニャは白い息を吐きながら近づき、数メートル離れた位置で立ち止まった。
俺と彼女の間に静かな風が吹き、粉雪が視界の端から端へと流れていく。
わずかな沈黙の後、ラーニャはこちらをじっと見て口を開いた。
「ついさっき仲間たちから、私の家族はすでに亡くなっていたと聞くことができた」
「それは……」
かけるべき言葉が見当たらず、うっすらと雪の積もる地面に視線を落とす。
聞いていた様子よりも生存者が少なそうだったが、ラーニャの家族は犠牲になってしまったとは……。
「マルクが気に病むことではない。仲間たちが墓を作って弔ってくれたようだから、戦いが終わった後に見てこようと思う。お前やリリア、それにクリストフの協力がなければここにたどり着くことはできなかった。礼を言う」
「……どういたしまして」
ラーニャはかすかに頬を緩めていた。
望んでいた再会ではないのかもしれないが、墓があるだけでもいいと思いたい。
それにヒイラギの兵士たち――あるいはリリアとクリストフ――の活躍で山賊の拠点を崩壊させられることは、ラーニャにとって区切りになるのではないだろうか。
再び仲間たちの元に向かうラーニャの姿を見ながら、感慨深い思いに浸った。
あとがき
いつも読んで頂き、ありがとうございます。
エールやいいねなど励みになっています。
俺を含めた寒冷地仕様の装備を身につけた者は凍えるようなことはないが、着の身着のままの状態だったダークエルフの人質たちは寒そうに見えた。
それでも数人の弓兵が上着を貸し与えたことで、多少はマシになっているようだ。
幸いなことに山賊側の土地から出た後、さらなる追撃を受けたり、追手が現れたりということはなかった。
ダイモンたちが怒涛の攻めを見せたことで、壊滅的な打撃を与えたことが大きいのだろう。
それにヒイラギの方が優勢だったため、精兵であるリリアとクリストフが負傷する可能性は低いと思った。二人の無事を願うばかりだ。
引き続きアンズが先頭になり、その後ろに人質たちを背負った弓兵という並びだった。
俺とラーニャ、それに他の兵士は後方を扇状に並んで歩いている。
特に陣形を意識したわけではないのだが、助け出された人質たちを守りたいという思いが影響があるからなのかもしれない。
念願叶ったわけだが、ラーニャの感情を読み取ることは難しかった。
いつも以上に口数が少なくなり、うつろにも見える様子で黙々と足を運ぶような状態だった。
故郷の仲間たちを助けることができたのに、無感情ということがあるはずないことだけは分かっている。
久しぶりの再会でどう接したらいいのか分からない、あるいは救出に成功したことが夢のようということもありえる。
どちらにせよ、部外者の自分に何かできるようなことはなかった。
今はただラーニャのことを見守るだけで十分だろう。
誰もが多くを語らず静かになった状態のまま、進行方向に通用門が見えた。
門の先はヒイラギの領地であり、門番を担う見張りと数人の兵士がこちら側に立っていた。
「アンズ殿が戻られたぞ!」
「弓隊は無傷みたいだ!」
門の近くで待機していた兵士たちが元気に声を上げた。
アンズは軽く手を振って応じて、手の空いた弓兵は拳を突き上げた。
俺の近くを歩く弓兵は、自分らの出番はほとんどなかったと気まずそうにつぶやいた。
それから先頭のアンズが門の近くに到達して、他の兵士たちもそれに続いた。
ヒイラギで待機していた兵士たちは弓隊と助け出された人質たちに交互に声をかけている。
兵士たちのやりとりでダイモンを含む前線の兵士たちが優勢に攻めていることが共有されていることが分かった。
勝どきを上げるにはまだ早いが、ヒイラギの兵士たちは喜んでいるようだった。
「ラーニャさ……ん」
様子が気にかかりラーニャに声をかけようと思ったが、助け出された人質たちと肩を寄せ合っているのが目に入った。
念願の再会を迎えたわけなので、そっとしておこうと思った。
兵士たちとダークエルフたち――俺の立場としてはどちらにも属さないため、ひとまず領地に入ることにした。
和の趣のある門をくぐり抜けた後、アンズが声をかけてきた。
「久しく姉上と会っていなくてな。元気だったか?」
「元気でしたよ。それにしてもアンズさんも強いですね。吸血忍者でしたか、その影響があるんですか?」
俺がたずねるとアンズは照れくさそうに視線をそらした。
そして一息おいて口を開く。
「やれやれ、姉上から聞いてしまったのか」
「どうでしょう? アカネさんではなく、主(あるじ)であるミズキさんから聞いた気もします」
「……そうか。まあ、どちらでもいい」
アンズはそう口にして、領地の中を歩いていった。
おそらく、モモカに報告に行くのだろう。
アカネと同じように冷静沈着な立ち振る舞いが特徴だが、吸血忍者の話題は触れられたくないことのように見えた。
アンズが離れた後、門の近くに置かれた椅子に腰を下ろした。
木を削ったもので手づくり感があり、触れるとひんやり冷えている。
屋内の方が温かいので、アンズについていくこともできたが、ラーニャの様子も気がかりだった。
椅子に座ったまま彼女がいた方を見ると、他のダークエルフたちとこちらに向かって歩いていることに気づいた。
ラーニャは白い息を吐きながら近づき、数メートル離れた位置で立ち止まった。
俺と彼女の間に静かな風が吹き、粉雪が視界の端から端へと流れていく。
わずかな沈黙の後、ラーニャはこちらをじっと見て口を開いた。
「ついさっき仲間たちから、私の家族はすでに亡くなっていたと聞くことができた」
「それは……」
かけるべき言葉が見当たらず、うっすらと雪の積もる地面に視線を落とす。
聞いていた様子よりも生存者が少なそうだったが、ラーニャの家族は犠牲になってしまったとは……。
「マルクが気に病むことではない。仲間たちが墓を作って弔ってくれたようだから、戦いが終わった後に見てこようと思う。お前やリリア、それにクリストフの協力がなければここにたどり着くことはできなかった。礼を言う」
「……どういたしまして」
ラーニャはかすかに頬を緩めていた。
望んでいた再会ではないのかもしれないが、墓があるだけでもいいと思いたい。
それにヒイラギの兵士たち――あるいはリリアとクリストフ――の活躍で山賊の拠点を崩壊させられることは、ラーニャにとって区切りになるのではないだろうか。
再び仲間たちの元に向かうラーニャの姿を見ながら、感慨深い思いに浸った。
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