赤髪探偵の事件簿

神部洸

文字の大きさ
2 / 8
第一章 本当に当たる占い師

第二話 カツ丼ください

しおりを挟む
 30分。これが何を指しているか。これは、僕が警察署の取調室に放置されている時間だ。

 時計の針を、僕が逮捕されたところまで戻そうと思う。

 手錠をかけた方のおじさんが河野刑事。もう一人が波多野刑事と言う。

 二人は、よく2時間サスペンスとかで見る、the・所轄の刑事みたいな感じで、誤認逮捕のくせして、我が物顔で同僚たちに手錠をかけた僕を見せびらかした。

 僕はそのままパトカーに乗せられて、警察署へと移動し始めた。

「あの~。質問いいですかね?」

「あぁいいぞ!」

 河野刑事はもう満足しているのだろう。気分が大きくなっているのが見て取れる。

「僕って、何で逮捕されたんですか?」

僕の質問を聞いて、僕の両サイドを挟む二人のおじさんと、パトカーを運転している警察官。合計で3人の顔色が急変した。

「何で逮捕されただ?お前なぁ。ふざけた髪色しやがって。自分の、心に聞いてみろ!」

そう言って河野刑事は僕の髪を掴んで頭を振り回した。

「痛いです!痛いです!」

「被害者の心もこれだけ痛くなってんだよ!」

結局、河野刑事は、僕の髪がボサボサになるまで頭を振り回した。

「僕、なんにもやってないです~!」

「うるさい!取調室で聞く!」

そう言って、河野刑事は僕の所持品をすべて回収すると、僕を取調室に中へ放り込んだ。それから、30分がたつ。

いや失礼。いま時計を見たら45分が経過していた。

その間、誰も目の前の扉を開けていない。放置だ。何?僕忘れられちゃった?


その頃、隣の部屋で~~

「河野さん。これまずくないですか?」

二人の後輩、相良巡査部長は冷や汗を書き始めた。

「カバンの中から出てきたのは、ブルーシート、懐中電灯、百均で売ってる重り、酒、惣菜、携帯とモバイルバッテリー、男物の財布。これ絶対…」

「上野公園で花見。だな。」

部屋の窓辺で所長の大杉が二人の刑事を睨んだ。

「被害者が入ってるものを間違えたのかもしれません。」

「バカを言うな!!ここまで来てもなお、あいつが犯人だというか。ひったくられた被害者は、買ったばっかの女性門の下着が入ってるって言ったんだぞ!」

流石に、手も足も出ない様子だった。

「あと少し。今日だけ時間を下さい。」

そう言って、河野は取調室に入っていった。


 僕が取調室で放置されてから一時間がたった。もう昼寝でもしようかと思って体制を変えたとき、扉が開いて河野刑事が入ってきた。

 僕は急いで座り直す。

「これから君の取り調べをする。河野次郎だ。」

「スミマセン。携帯返してくれますか?」

「なんでだ。」

「ボイスレコーダーで録音するんで。」

「大丈夫だ。こちらですべて録音されている。」

 絶対嘘だ。どうせ都合のいいところしか切り抜かない。そんなことも分からないほど馬鹿ではない。

「名前は。」

「赤田伸彦です。」

「チッ。髪も赤けりゃ名前も赤いってか。」

 なんだこの態度。すごくムカつく。

「職業は。」

「大学生です。」

「どこ大?ちなみに俺は慶応だ。」

こうやって自慢する人苦手なんだよなぁ。それに、絶対怒るし。

「T大です。」

「どこだよ!」

「東大です!赤門で有名な東京大学!」

 取り調べ室と言う小さな箱の中に、大きな隙間風が吹いた。ほら言わんこっちゃない。

「何でとったの?」

「何をですか?」

「何でひったくったのかって聞いてんだよ!」

 河野刑事は机を強く叩いて威嚇してきた。

「河野さん。先に言っておきたいことがあります。」

「僕がやりましたってか?」

「いいえ。違います。もし河野さんがこれからも僕を脅迫するようでも、僕は驚いても絶対に自供するような事はありませんししてません。あと、この件が一段落したところで僕は、裁判所に訴えを出します。下町所の河野という刑事に脅迫され、精神的苦痛を感じました。また、誤認逮捕による名誉毀損。よって、河野刑事個人と、この警察署の署長、それと研修を怠った警察全体を相手に3億8000万円の賠償金を求めて裁判を起こします。」

「バカ言え。そんな裁判。誰が弁護についてくれるってんだよ。」

「僕です。」

「はぁ?」

「僕司法試験合格してるんで、あともう一つ。」

僕は今までず~っと思っていたことを言った。

「カツ丼まだですか!?」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...