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11話
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「生きてる。マジで、生きてる。」
よくわからないことを口走っているが、仕方がないと思う。全力疾走というものを初めてした。正確には、この状態になって、初めて、なので、生まれて初めてではない。けれど、記憶に記録として残っていても、その体験を自分自身の物として認識していないのだから、間違っていないはず。そんなことを、考えるあたり思いのほか余裕がある、のにびっくり。もしかして、全力ではなかったかも。
「それにしても、本当に消えるんだな。」
さっきまでいた方向に目を向ける。僕らより先に出入口へと向かっていったネズミの姿かたちは一つもない。僕らのあとかた出てきたであろうネズミは外に出るなり、空気に溶けけむように消える。こういうのを揮散というのだろう。その結果、空気の中に流れ込む魔力的要素。もしここに、魔力測定器というものがあれば、出入口付近はかなりの高密度になっているに違いない。人体にどのくらい影響ってあるのかな。濃い魔力にあてられて酔う、だけでは済まない気もするが。気にしても仕方がないか。そういうのは学者の仕事だろう。
少なくとも、今すぐに、どうこうなる、ということにはならない。はず。多分。
「それより、それ、そろそろ下ろしたらどうですか。」
肩に抱えている者を土水門さんが指さす。完全な物扱いである。膝を折り、頭を右手で押さえ、背中に左手を添えて、前かがみになりながら、ゆっくりと膝を伸ばす。所謂、背負い投げ、のような形になった。肩から滑るように、頭から地面に向かいゆっくりと動く土水門くんが一回転する。踵が地面に勢いよくぶつかった。1人でおろしたのだから仕方ない。背中や、膝裏辺りはぶつけていない。怪我していなければいいけど。
こういう場合は、所謂、御姫様抱っこ、前で抱きかかえるか、背中に背負くか、するのが普通なのかもしれない。だが、申し訳ないことに、インスタント麺の出前のパッケージ、それか、米俵を持ち運ぶや、木材を持ち運ぶ、がごとく、肩に担いでの来た。実を言うと、初めは小脇に抱えて、走り出したのだが、残念なことに、僕の腕はほんの少し足りなかったようだ。腰に手を回して持ち上げたが、髪と手足が水につきそうなうえに、走るのに安定性を欠いていた。足りないのは手の長さではなくて、身長と筋肉? 画面上で活躍する主人公は、遠い。彼ら簡単にやっていたと思うんだけどな。脇に抱えて走るって思っていたよりも邪魔になる。一つ賢くなった気分だ。腕を振る動作が大事なのかな?
結果、肩で担ぐのが丁度いい、と思った。気絶しているから軽いと思ったのだが。人の体は、思いのほか重い。
「これでも起きませんか。むしろ、感心します。」
何に対しての、むしろ? むしろ、なんなのか聞かないでいよう。
「睡眠薬でも飲んでたりして。」
「電源が切れただけじゃないですか。」
適当なことを言ったら、適当なことが返ってきた。家電製品じゃあるまいし。よっぽどネズミが嫌いなのだろう。
「そんなことより、あれは、何をしているんでしょうか。」
土水門さんが顔を向けた先、大人が群がりながら、パソコン画面を食い入るように見ている。最初なのだから、出迎えがいてもおかしくはないと思ったが、それがない理由。
「えっと、映像確認?」
「見ればわかります。」
怒られた? 予想できることを言ったつもりだったが、そうではないようだ。ラジコンヘリがコード付きで飛んでいた。出力する先があるなら、そこに張り付くように見ていても不思議ではない。条件がそろっている。
「出てこないか。」
実際、逃げるのに夢中で、アレがどのくらいの速さで動いているのか知らない。時間単位どころか、きっと、30分も経ってはいない現状では、アレが出てくる、と思う方がおかしいのかもしれない。そして、仮に出てきたとしても、空気中に分解して溶け込む。それなのに、何故か、不安でしかない。アレは外まで来ない。それが、なんとなくそう思わせるのかもしれない。
「放置するのが吉か。」
「触らぬ神に、というやつですか。」
「そうかもしれない。」
いまのところ、会ったことがある神様は、基本、沸点が低い分類に入っているらしいので、触ったとしても、一回か、2回は、見逃してくれそう。
「さて。さて。何だったんだろうね。」
土水門くんを放置するのは、少し後ろめたさがある。けれど、好奇心の方が強かった。それにしても、本当に起きないな。何故だ?
「透明な触手からすると、定番のスライムでしょうか。ここに出たんですね。」
土水門さんの口ぶりからすると、ここには、ファンタジーゲームでよく見るモンスターの類は、聞いたことがないようだ。
突然変異か。深い層から上がってきたか、それとも、追いやられてきたか。いずれにせよ、初心者を対象とする迷宮うではないな。
何が、ちょっと見てみる、だよ。クソが。
よくわからないことを口走っているが、仕方がないと思う。全力疾走というものを初めてした。正確には、この状態になって、初めて、なので、生まれて初めてではない。けれど、記憶に記録として残っていても、その体験を自分自身の物として認識していないのだから、間違っていないはず。そんなことを、考えるあたり思いのほか余裕がある、のにびっくり。もしかして、全力ではなかったかも。
「それにしても、本当に消えるんだな。」
さっきまでいた方向に目を向ける。僕らより先に出入口へと向かっていったネズミの姿かたちは一つもない。僕らのあとかた出てきたであろうネズミは外に出るなり、空気に溶けけむように消える。こういうのを揮散というのだろう。その結果、空気の中に流れ込む魔力的要素。もしここに、魔力測定器というものがあれば、出入口付近はかなりの高密度になっているに違いない。人体にどのくらい影響ってあるのかな。濃い魔力にあてられて酔う、だけでは済まない気もするが。気にしても仕方がないか。そういうのは学者の仕事だろう。
少なくとも、今すぐに、どうこうなる、ということにはならない。はず。多分。
「それより、それ、そろそろ下ろしたらどうですか。」
肩に抱えている者を土水門さんが指さす。完全な物扱いである。膝を折り、頭を右手で押さえ、背中に左手を添えて、前かがみになりながら、ゆっくりと膝を伸ばす。所謂、背負い投げ、のような形になった。肩から滑るように、頭から地面に向かいゆっくりと動く土水門くんが一回転する。踵が地面に勢いよくぶつかった。1人でおろしたのだから仕方ない。背中や、膝裏辺りはぶつけていない。怪我していなければいいけど。
こういう場合は、所謂、御姫様抱っこ、前で抱きかかえるか、背中に背負くか、するのが普通なのかもしれない。だが、申し訳ないことに、インスタント麺の出前のパッケージ、それか、米俵を持ち運ぶや、木材を持ち運ぶ、がごとく、肩に担いでの来た。実を言うと、初めは小脇に抱えて、走り出したのだが、残念なことに、僕の腕はほんの少し足りなかったようだ。腰に手を回して持ち上げたが、髪と手足が水につきそうなうえに、走るのに安定性を欠いていた。足りないのは手の長さではなくて、身長と筋肉? 画面上で活躍する主人公は、遠い。彼ら簡単にやっていたと思うんだけどな。脇に抱えて走るって思っていたよりも邪魔になる。一つ賢くなった気分だ。腕を振る動作が大事なのかな?
結果、肩で担ぐのが丁度いい、と思った。気絶しているから軽いと思ったのだが。人の体は、思いのほか重い。
「これでも起きませんか。むしろ、感心します。」
何に対しての、むしろ? むしろ、なんなのか聞かないでいよう。
「睡眠薬でも飲んでたりして。」
「電源が切れただけじゃないですか。」
適当なことを言ったら、適当なことが返ってきた。家電製品じゃあるまいし。よっぽどネズミが嫌いなのだろう。
「そんなことより、あれは、何をしているんでしょうか。」
土水門さんが顔を向けた先、大人が群がりながら、パソコン画面を食い入るように見ている。最初なのだから、出迎えがいてもおかしくはないと思ったが、それがない理由。
「えっと、映像確認?」
「見ればわかります。」
怒られた? 予想できることを言ったつもりだったが、そうではないようだ。ラジコンヘリがコード付きで飛んでいた。出力する先があるなら、そこに張り付くように見ていても不思議ではない。条件がそろっている。
「出てこないか。」
実際、逃げるのに夢中で、アレがどのくらいの速さで動いているのか知らない。時間単位どころか、きっと、30分も経ってはいない現状では、アレが出てくる、と思う方がおかしいのかもしれない。そして、仮に出てきたとしても、空気中に分解して溶け込む。それなのに、何故か、不安でしかない。アレは外まで来ない。それが、なんとなくそう思わせるのかもしれない。
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「そうかもしれない。」
いまのところ、会ったことがある神様は、基本、沸点が低い分類に入っているらしいので、触ったとしても、一回か、2回は、見逃してくれそう。
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土水門くんを放置するのは、少し後ろめたさがある。けれど、好奇心の方が強かった。それにしても、本当に起きないな。何故だ?
「透明な触手からすると、定番のスライムでしょうか。ここに出たんですね。」
土水門さんの口ぶりからすると、ここには、ファンタジーゲームでよく見るモンスターの類は、聞いたことがないようだ。
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何が、ちょっと見てみる、だよ。クソが。
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