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冬に咲く花
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しおりを挟む後から来た方の兵士が目を丸くして、二頭仕立ての牛車を指差した。
「もしかして、君がカダンの知り合いかい?」
驚いたのは孝宏のほうだった。先にこの村に来ているのはわかっていたが、まさか兵士から名前が出るとは思っていなかった。
「カダンから魔女の息子達が来るって聞いていた……あれ?伝えてあるって聞いてたんだけど、カダンから連絡なかったかい?」
カダンから連絡はもちろんあったし、その時こちらも行くと伝えたと聞いていたが、孝宏は細かい内容は伝え聞かないまま、準備に追われ出発したのだった。
「すみません、直接連絡を受けたのは俺じゃないんです。連絡はあったらしいですけど、えっと軍人さんの事は…………すみません。連れが戻ってきたら分かると思うのですが」
「いや、大丈夫だ。さっきまでカダンと一緒にいたから、呼んでこよう。待っててくれ」
この兵士は、ポーズを決めたままの兵士に頼むと言い残し、来た道を戻っていった。背中の小さな羽が大きく変化しはためき、空を飛びはしなかったが、軽やかにジャンプしながら駆けていく。
「君はカウルとルイのどちらでもないね?彼らは赤毛に狼の耳を持っているはずだからね。では君はタリーとかいう付き添いかい?」
残ったヘンタイもとい、兵士が孝宏に尋ねた。
「タリー?マリーならカウルとルイに付いて行きました。俺は孝宏っていいます」
「ふむ、そういえばそのような名前だった気がする。それより君、見たまえ」
兵士は右足を軽く曲げ、左足に体重を乗せた。僅かに背中を反らし空を仰ぎながら、プラチナブロンドの短髪をかき上げる仕草をした。
「酷いと思わないかい?兵士は髪を伸ばしてはいけないというのだよ!?」
孝宏の感覚からすると、それがどうしたと言いたい。
地球でも兵士の髪型は皆短髪のイメージがあるし、確かに女性ならば、もう少し長いのも見たことはあるが、規則なら仕方ないだろうしか思わなかった。兵士は悲痛な面持ちで孝宏の肩を掴んだ。
「美しい髪は伸ばして、愛でるのが常識だろう!?」
「はい!?」
近くで見ても綺麗な顔は崩れないが、いくら美人でも距離を詰められれば、自然と引いてしまう。孝宏は顔をひきつらせた。
(んな、常識知らねぇよ。あと距離が近い)
「やはり君もそう思うか。私には性別を問わず、人を魅了する美しさがあるからね」
(何を言ってんだ、こいつ)
兵士は孝宏を正面に捉え、手を一回鳴らしてから、両手を広げた。その表情には喜びが、満面の笑みとなり現れている。
孝宏としては同意したつもりも、称賛したつもりも、一ミリたりともない。だがきっと彼女の脳内の孝宏は、憧れの眼差しで彼女を見ているに違いない。
「お話があまりにも高次元過ぎて、俺が理解するのは難しそうです」
孝宏には真顔でそう返すのが精一杯だった。
「おお、美しすぎるのは罪だね」
「私は自分の美しさが恐ろしいよ」
「やはり、美しい者はより美しくあるべく、努力するべきだ」
「君だって美しい者は好きだろう?その美しいモノが醜く退化する様を、君は見たいと思うかい?」
「思わないだろうとも!同士よ!」
両手を広げたまま、笑顔で迫る女はすごく不気味で、どれだけ美しくても嬉しくない。
「何すんですか!?」
孝宏は抱きつかれる寸前、体を引いた。
孝宏は健全な15歳、男子中学生だ。女性に抱き着かれるのを、想像した事がないわけではないが、怖いものは怖いのだ。
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