超空想~異世界召喚されたのでハッピーエンドを目指します~

有楽 森

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夢に咲く花

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「せめて急を要している人たちだけでも、避難させなければなりません。あなた方に危険が及ばないよう、最大限の努力はします。協力して頂きたい」


 大佐、コオユイは孝宏たちに頭を下げ、それに続いて他の兵士達も頭を下げた。

 皆、孝宏やカウルよりずっと、歳も社会的地位も上の人たちばかりだ。
 正直なところ、孝宏は悪い気はしなかった。少しばかりの優越感と劣等感とがせめぎ合い、奇妙な気分だ。
 とはいえ孝宏がそれだけで調子づく性格なら簡単だったがそうではない。孝宏は元より人並みに臆病で恐がりだ。


(んなこと、協力させて頂きたくないに決まってんじゃん)


 孝宏の脳裏に思い出されるのは、ナキイの盾越しに見た、間地かに迫る巨大蜘蛛。それからシャワー室で襲われた死の感覚。
 便利な武器を持たない孝宏の対抗手段は一つしかない。
 凶鳥の兆しは実に素晴らしい炎だ。これまでも何度も助けられてきたが、今回もそれが助けになるとは限らない。
 何せ凶鳥の兆しを操るのは若干十五歳の、しかも魔術に不慣れな異世界の子供なのだ。

 カウルはどうするのだろうと、孝宏は彼に目をやる。
 カウルは食いしばった歯をむき出しにし、力み過ぎて目の下がピクピク痙攣している。尻尾の毛が逆立つ。
 カウルは感情が表に出やすい性格をしているが、我を忘れ、頭を下げる人たちに敵意をむき出しにするなど孝宏がイメージする彼ではない。


「おい、大丈夫か?」


 孝宏は肘でカウルの脇腹をかるく突く。
 彼らの提案がよほど嫌だったのだろう。孝宏はそう思った。


「孝宏が構わないなら、俺は……………協力したい」


 なのでカウルがこう言うのを孝宏はとても驚いた。
 兵士達が期待に目を輝かせ顔を上げる。


(協力?俺が?出来るほか?俺はただの……中学……生なの、に……)


 ソコトラでそうだったように、山の中で応戦した時のように、また炎をまき散らすのだろうか。

 彼らに協力する自分を想像し、孝宏はぞっとして顔面を青くした。


「あっ…………」


 カウルと目が合い、孝宏はとっさに目を逸らした。カウルに対する負い目が、孝宏の心を削っていく。

 答えなどはなから決まっていた。

 とうにカウルたちに協力すると自分で決めている。

 だがやはり怖いものは怖い。協力すると答えるのも、怖いのだと告白するのにも、彼らの対する負い目が孝宏の心に重くのしかかる。
 孝宏は唾を飲み込んだ。


「もちろん協力する。……俺に出来る事があれば……だけど」


 カウルから顔を背けたまま答えた孝宏の息は震えている。


「ああ、ありがとう」


 礼を述べるカウルは、引きつる頬と口元を手で隠した。


「万が一がないように出来る限りのことを約束します。あなた方の勇気に感謝します」


 コオユイがもう再度が頭を下げた。







 孝宏が昨日の昼間見た蜘蛛の巣を思い出したのは、民間人を避難させる作戦の説明を受けている最中だった。


「これらの不明生物たちの出現方法が特定されておらず、作戦の最中に現れる可能性もある。しかし現在同じ個所から二匹以上が表れた報告はなく…………」


 蜘蛛がどうやって現れるのか。孝宏はふと思い出されるものがあり、まだ説明の途中にも関わらずつい考え込んだ。
 巨大蜘蛛に襲われる直前、確か蜘蛛を見たはずだ。注意深く見ていなければ見落とす程に小さな蜘蛛とそれに不釣り合いな巨大な巣を。


「でも、あれは……ただの………」


 説明をしていた兵士は、孝宏の呟きを聞き逃さず目を向けた。卓上に広げた地図を見ているわけでもなく、説明している兵士に向けられているわけでもない瞳。他者から見れば、孝宏はぼんやりとして心ここにあらず言った雰囲気でいる。
 不自然に説明が途切れ周囲も変に思い始めると、視線は自然と兵士が見ている方向、孝宏へ集まった。


「どうかされましたか?」


 兵士は丁寧に孝宏に話しかけた。孝宏も声をかけられ初めて自分が進行を止めているのに気が付き、慌てて謝罪の言葉を口にした。


「何か気になる事でもあったのか?」


 腕組をしたカウルも孝宏に尋ねた。

 孝宏が何を考えているのか見当もつかないが、以前よりこうしていきなり考え込む癖があったのをカウルは何となくだが気付いていた。一見ぼんやりとしているだけに見える時もあるが、とはいえ、このような真剣な場でふざける性格でないことも承知している。


「気になることがあれば何でも仰ってください。これはとても重要な作戦です。僅かにでも疑問が残れば、それが失敗の元になりかねません」


 そこまで言われては、言わないとマズいだろうという気になる。


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