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夢に咲く花
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ナキイは単に、孝宏が落ち込む必要はないと言いたかっただけなのだが、真意が伝わっているとは思えなかった。
ただ、ナキイは孝宏が落ち込む気持ちも分からなくもなかった。同じ民間人でも他の四人とは、戦闘のレベルが違い過ぎた。彼らと比べると、自分の至らなさが浮き彫りになるのだろう。
「君はもっと自分に自信を持つべきだな。嫌な言い方になるが、変わっているのは君の友人たちの方だ」
マリーやカダンたちとを比べると出来ない事が多く、孝宏は自分が情けなくなる事もしばしだ。
孝宏は自信が持てなくなるほど己を卑下しているつもりはなかったものの、ナキイにそう見えたのは、自分自身でも気づかない内に負い目を感じていたからだろう。
孝宏も薄々は気づいていた。ソコトラで負った罪悪感は、己を変えるには十分過ぎた。
孝宏は自信を持てというナキイのアドバイス自体は理解できたものの、その後が解らない。まさか侮辱しよういうつもりでないだろうが、愉快な単語でもない。
「変わってるって、どういう意味ですか?」
孝宏が不快感をあからさまにしても、ナキイは真剣そのものだった。
「決して悪い意味じゃない。君の友人たちは、その……あくまでも俺の主観だが、訓練を受けた者のような動きをする。特にあの三人、狼の双子と白髪の少年は……あれは……まるで………そうだな、優秀な新兵のようだった」
「皆あんなものじゃないんですか?」
孝宏のイメージする異世界とは、身近に戦いがあり戦闘になれた者が多くいる印象だ。
カダンたちが多少戦い慣れていても、さほど珍しくない思っていた。自分専用の武器を持っているのも、戦闘用の魔術を見事に操るのも、この世界では当たり前なのだと。
だが、ナキイは驚いた様子で言った。
「まさか。普通に暮らしていて戦いに慣れるものか。彼らは兵士たちの使う合図にも反応していたし、動きも……俺の見慣れたものだった」
ナキイは個人的な主観と言いながらも、はっきりとした物言いをする。
「まさか……」
信じられない。今度は孝宏が驚く番だ。
「それから、もう一人の女性は三人とは違う動きをしていたが、あれも何らかの訓練を受けている、そんな動きだった。それから彼女はとても良い感を持っている。初めは動きこそ気ごちなかったが、あっと言う間についてこれるようになった」
マリーの化け物じみた出来の良さは、今に始まった事でない。この世界に来た直後の時点で、カウルの牛から余裕で逃げ切れたというから、元々の身体能力が高いのだろう。
とはいえ、魔術を操り、剣で戦えるのは教えてくれた人物がいたからだ。
(ルイが魔法を教えてくれて、カウルが武器を持つ戦い方を教えてくれて………普通じゃない……のか?)
普通じゃなければ何だろう。戦闘、しかも実戦に正通している民間人程怪しいものはない。
「ああ、何も君たちを疑っているわけじゃないんだ。身元もはっきりしているしな。魔女の息子たちなんだろう?」
「魔女?」
「……魔女オウカ。アノ国始まて以来の天才魔術師だよ。発明した魔法は数多く、国民の生活が一転したほどだ。学校でも習うはずなんだけど?」
「そう言えばそんな話もあったかなぁ……と思います」
孝宏は笑って誤魔化す。
「授業は真面目に受けないと」
呆れつつ溜息を吐くナキイに、孝宏も愛想笑いで返した。
「それにしても、自分の子供に兵士と同じ訓練をするなんて……」
「駄目ですか?」
双子の両親を侮辱するようは発言に、孝宏は再びナキイを凄んだ。
双子がどれだけ両親の死を悲しんでいるか身近で見ている。あれだけ愛されている人達が悪い人であるはずがない。孝宏の中にある親とは、そう言うものだった。
「あ、いや、駄目とかではなく……ただ俺なら自分の息子に、あんな厳しい訓練を強いるのは無理だと思っただけだ。気分を害するような事を言ってすまなかった」
その後ナキイは逃げるように部屋出ていったが、一人部屋に残された孝宏はナキイとの会話を頭の中で反芻していた。
息子に厳しい訓練を強いるのは、決してありえなくはない。
日本のアスリートだって、成功者の中には父親がコーチとして厳しく育て上げた例もある。本人が望むなら親としては叶えてあげたいと思うのも当然といえるかもしれない。
しかしだ。考えてみれば、孝宏にも少し奇妙に思えた。
そもそも軍隊式の訓練を知っているのは何故か。ナキイは親が訓練したと思い込んでいた。カダン曰く、両親共に強い戦士であるらしいから、どちらか、あるいは両方が兵士だったのかもしれない。
「あいつらは19歳で15になると家を出るって言ってたから、それまでには今くらい強かった、のか?……としてもえっと……」
ナキイは優秀な新兵のようだとも言っていた。と言うことは15歳の時点でほぼ完成されていたと考えるべきか。しかし、指導者を離れ訓練がなくなれば、突然起こった事件で優秀な新兵のように立ち回るのは難しいはずだ。
それとも離れてからも訓練を続けていたのか。
しかしそれだとナキイは優秀な新兵でなく、マリーと似た様な感想を持つはずだ。
同じ訓練内容をこなすだけではモチベーションも上がらず、指導者いなければ同じだけのクオリティーを保つのも難しい。
四年以上も離れて訓練を続け、且つ強くあり続けるには必然的にオリジナル要素も増えただろう。モチベーションを保ちつつも我流にならずに、忙しい合間をぬって訓練し続けるのは何か理由があるはずだ。
よっぽど生真面目ならそれもありえただろうが、彼らから堅苦しい程の生真面目さは感じられない。彼らには程よい緩さがある。
「確かに変だ……何であいつらはあんなに強いんだ?」
固定概念とはある意味恐ろしい。
自分たちを勇者と呼び、親切にしてくれる彼らに対し、孝宏はこの時初めて疑問を持ったのである。
ただ、ナキイは孝宏が落ち込む気持ちも分からなくもなかった。同じ民間人でも他の四人とは、戦闘のレベルが違い過ぎた。彼らと比べると、自分の至らなさが浮き彫りになるのだろう。
「君はもっと自分に自信を持つべきだな。嫌な言い方になるが、変わっているのは君の友人たちの方だ」
マリーやカダンたちとを比べると出来ない事が多く、孝宏は自分が情けなくなる事もしばしだ。
孝宏は自信が持てなくなるほど己を卑下しているつもりはなかったものの、ナキイにそう見えたのは、自分自身でも気づかない内に負い目を感じていたからだろう。
孝宏も薄々は気づいていた。ソコトラで負った罪悪感は、己を変えるには十分過ぎた。
孝宏は自信を持てというナキイのアドバイス自体は理解できたものの、その後が解らない。まさか侮辱しよういうつもりでないだろうが、愉快な単語でもない。
「変わってるって、どういう意味ですか?」
孝宏が不快感をあからさまにしても、ナキイは真剣そのものだった。
「決して悪い意味じゃない。君の友人たちは、その……あくまでも俺の主観だが、訓練を受けた者のような動きをする。特にあの三人、狼の双子と白髪の少年は……あれは……まるで………そうだな、優秀な新兵のようだった」
「皆あんなものじゃないんですか?」
孝宏のイメージする異世界とは、身近に戦いがあり戦闘になれた者が多くいる印象だ。
カダンたちが多少戦い慣れていても、さほど珍しくない思っていた。自分専用の武器を持っているのも、戦闘用の魔術を見事に操るのも、この世界では当たり前なのだと。
だが、ナキイは驚いた様子で言った。
「まさか。普通に暮らしていて戦いに慣れるものか。彼らは兵士たちの使う合図にも反応していたし、動きも……俺の見慣れたものだった」
ナキイは個人的な主観と言いながらも、はっきりとした物言いをする。
「まさか……」
信じられない。今度は孝宏が驚く番だ。
「それから、もう一人の女性は三人とは違う動きをしていたが、あれも何らかの訓練を受けている、そんな動きだった。それから彼女はとても良い感を持っている。初めは動きこそ気ごちなかったが、あっと言う間についてこれるようになった」
マリーの化け物じみた出来の良さは、今に始まった事でない。この世界に来た直後の時点で、カウルの牛から余裕で逃げ切れたというから、元々の身体能力が高いのだろう。
とはいえ、魔術を操り、剣で戦えるのは教えてくれた人物がいたからだ。
(ルイが魔法を教えてくれて、カウルが武器を持つ戦い方を教えてくれて………普通じゃない……のか?)
普通じゃなければ何だろう。戦闘、しかも実戦に正通している民間人程怪しいものはない。
「ああ、何も君たちを疑っているわけじゃないんだ。身元もはっきりしているしな。魔女の息子たちなんだろう?」
「魔女?」
「……魔女オウカ。アノ国始まて以来の天才魔術師だよ。発明した魔法は数多く、国民の生活が一転したほどだ。学校でも習うはずなんだけど?」
「そう言えばそんな話もあったかなぁ……と思います」
孝宏は笑って誤魔化す。
「授業は真面目に受けないと」
呆れつつ溜息を吐くナキイに、孝宏も愛想笑いで返した。
「それにしても、自分の子供に兵士と同じ訓練をするなんて……」
「駄目ですか?」
双子の両親を侮辱するようは発言に、孝宏は再びナキイを凄んだ。
双子がどれだけ両親の死を悲しんでいるか身近で見ている。あれだけ愛されている人達が悪い人であるはずがない。孝宏の中にある親とは、そう言うものだった。
「あ、いや、駄目とかではなく……ただ俺なら自分の息子に、あんな厳しい訓練を強いるのは無理だと思っただけだ。気分を害するような事を言ってすまなかった」
その後ナキイは逃げるように部屋出ていったが、一人部屋に残された孝宏はナキイとの会話を頭の中で反芻していた。
息子に厳しい訓練を強いるのは、決してありえなくはない。
日本のアスリートだって、成功者の中には父親がコーチとして厳しく育て上げた例もある。本人が望むなら親としては叶えてあげたいと思うのも当然といえるかもしれない。
しかしだ。考えてみれば、孝宏にも少し奇妙に思えた。
そもそも軍隊式の訓練を知っているのは何故か。ナキイは親が訓練したと思い込んでいた。カダン曰く、両親共に強い戦士であるらしいから、どちらか、あるいは両方が兵士だったのかもしれない。
「あいつらは19歳で15になると家を出るって言ってたから、それまでには今くらい強かった、のか?……としてもえっと……」
ナキイは優秀な新兵のようだとも言っていた。と言うことは15歳の時点でほぼ完成されていたと考えるべきか。しかし、指導者を離れ訓練がなくなれば、突然起こった事件で優秀な新兵のように立ち回るのは難しいはずだ。
それとも離れてからも訓練を続けていたのか。
しかしそれだとナキイは優秀な新兵でなく、マリーと似た様な感想を持つはずだ。
同じ訓練内容をこなすだけではモチベーションも上がらず、指導者いなければ同じだけのクオリティーを保つのも難しい。
四年以上も離れて訓練を続け、且つ強くあり続けるには必然的にオリジナル要素も増えただろう。モチベーションを保ちつつも我流にならずに、忙しい合間をぬって訓練し続けるのは何か理由があるはずだ。
よっぽど生真面目ならそれもありえただろうが、彼らから堅苦しい程の生真面目さは感じられない。彼らには程よい緩さがある。
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