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第一部
1 One Dark Forest
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1 One Dark Forest
強い風が私にまとわりつくように吹き荒れている。少しでも寒さが和らぐようにとマフラーをきつく巻きつける。そんなわけないんだけど……地元のポーション屋の店主、リーに頼まれてクリスタルマッシュルームを探している。彼女は親しい友人だからこそ引き受けたものの、この森に入るというのは命知らずというもの。どこまでも続く木々の間を更に奥地へと進んで歩いている。雷が暗雲を切り裂くように落ちている。
ずいぶん前に日は落ち、寒さと暗闇だけがそこにあった。怖い。この森に入る者は滅多にいない。考えなしの人間か、死ぬために入る人間かだけだ。私はきっと前者なんだろう。
稲光と共に雨が降り始めてきた。しかも土砂降りだ。すぐに視界が悪くなり黒い不気味な木々すら見えず、見えるのは白い世界だけ。ずぶ濡れで寒く、道に迷ってしまっていた。土砂降りの中を両手を伸ばして障害物がないかを確認しながら泳ぐように進む。遠くから風以外の背筋が凍るような何か唸り声のようなものが聞こえる。思わず硬直してしまった。こんなときに野獣の心配までする余裕がないというのに。
膝が耐え切れず冷たい泥の中に座り込んでしまった。空を見上げ、イライラしながら大声で叫んでいた。
「なんでこんな目にあわなきゃいけないのよ!!!」
「こっちだ」
何かが優しく語りかけてきた。
私はゆっくりと立ち上がった。
「誰?」
「ローズ……」
「出てきなさいよ!」
「私についておいで」
雨の中小さな光が輝いていた。
「きっとまずいことになるんだわ」
一人呟いていた。それでも私は森の奥深くへと導くその光のあとを追った。
洞窟が遠くに見えてきたとき、光が更に強く輝きはじめた。洞窟まであと少しのところまでやってきた。その光は洞窟の縁を取り囲むようにに生えているクリスタルから発せられていた。暖かく乾燥した洞窟の内部に引き寄せられるように入っていく。数歩入ったところで足を止め、クリスタルをじっとみつめる。クリスタルマッシュルームだわ。もう諦めかけていたっていうのに。
しゃがみこんでクリスタルを引っこ抜こうとしてみた。びくともしない様子にブーツに忍ばせていた小さなハンマーを取り出した。そのハンマーでクリスタルを打ち付け、緩めになってきたところを引っこ抜いた。クリスタルを自分のジャケットのポケットに詰め込みながら洞窟の奥に進んでいく。
洞窟の一番奥までくると、巨大なクリスタルが中央に鎮座している。眩しい白色で雲のような何かが中で渦巻いている。それが森の中で私を呼んでいたように、今も呼びかけているようだ。頭がおかしくなっちゃったのかもしれない。少しだけそのクリスタルに近づいてみる。すると自分の意思ではなく手がクリスタルに伸びていた。行きたくないのに足が勝手に近づいていく。指が冷たい表面に触れると、私の世界は暗闇に包まれた。
強い風が私にまとわりつくように吹き荒れている。少しでも寒さが和らぐようにとマフラーをきつく巻きつける。そんなわけないんだけど……地元のポーション屋の店主、リーに頼まれてクリスタルマッシュルームを探している。彼女は親しい友人だからこそ引き受けたものの、この森に入るというのは命知らずというもの。どこまでも続く木々の間を更に奥地へと進んで歩いている。雷が暗雲を切り裂くように落ちている。
ずいぶん前に日は落ち、寒さと暗闇だけがそこにあった。怖い。この森に入る者は滅多にいない。考えなしの人間か、死ぬために入る人間かだけだ。私はきっと前者なんだろう。
稲光と共に雨が降り始めてきた。しかも土砂降りだ。すぐに視界が悪くなり黒い不気味な木々すら見えず、見えるのは白い世界だけ。ずぶ濡れで寒く、道に迷ってしまっていた。土砂降りの中を両手を伸ばして障害物がないかを確認しながら泳ぐように進む。遠くから風以外の背筋が凍るような何か唸り声のようなものが聞こえる。思わず硬直してしまった。こんなときに野獣の心配までする余裕がないというのに。
膝が耐え切れず冷たい泥の中に座り込んでしまった。空を見上げ、イライラしながら大声で叫んでいた。
「なんでこんな目にあわなきゃいけないのよ!!!」
「こっちだ」
何かが優しく語りかけてきた。
私はゆっくりと立ち上がった。
「誰?」
「ローズ……」
「出てきなさいよ!」
「私についておいで」
雨の中小さな光が輝いていた。
「きっとまずいことになるんだわ」
一人呟いていた。それでも私は森の奥深くへと導くその光のあとを追った。
洞窟が遠くに見えてきたとき、光が更に強く輝きはじめた。洞窟まであと少しのところまでやってきた。その光は洞窟の縁を取り囲むようにに生えているクリスタルから発せられていた。暖かく乾燥した洞窟の内部に引き寄せられるように入っていく。数歩入ったところで足を止め、クリスタルをじっとみつめる。クリスタルマッシュルームだわ。もう諦めかけていたっていうのに。
しゃがみこんでクリスタルを引っこ抜こうとしてみた。びくともしない様子にブーツに忍ばせていた小さなハンマーを取り出した。そのハンマーでクリスタルを打ち付け、緩めになってきたところを引っこ抜いた。クリスタルを自分のジャケットのポケットに詰め込みながら洞窟の奥に進んでいく。
洞窟の一番奥までくると、巨大なクリスタルが中央に鎮座している。眩しい白色で雲のような何かが中で渦巻いている。それが森の中で私を呼んでいたように、今も呼びかけているようだ。頭がおかしくなっちゃったのかもしれない。少しだけそのクリスタルに近づいてみる。すると自分の意思ではなく手がクリスタルに伸びていた。行きたくないのに足が勝手に近づいていく。指が冷たい表面に触れると、私の世界は暗闇に包まれた。
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