魔剣のある生活

HAIJIN

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魔剣と日常と非日常

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桐島 裕介。高校2年生、17歳。
運動神経、成績共に秀でるところはなく、良くも悪くも普通の高校生。一人暮らし。

高校生で一人暮らしは如何のものかと思うかもしれないが、徒歩3分のところに俺以外の家族が住んでいるため、完全な一人暮らしではない。たまたまこの家に住んでいた親戚が急遽引っ越すことになり、また戻ってくるかもしれないからそれまでは自由に使っていいよと貸してもらっている。
うちの母親に
「もう裕も高校生だし、部屋の数も足りないからあそこに住んでみたら?」
と言われたので、遠慮なく住まわせていただいてる。
気分としては、大きな一人部屋を持った感じだ。
まぁ、一人部屋にしては2階建て+庭は少々大きすぎたかもしれないが。

「ただいまー…っと誰もいないか」
家に帰ると癖でつい言ってしまう。

俺は家に上がるとバッグを降ろし、お湯を沸かすために電気ポッドに水をいれ、スイッチを押した。
この電気ポッドというものはは非常に便利で、手軽に素早く安全にお湯を沸かすことができる。なおかつ安い。生活の必需品と言えるだろう。

カチッ

どうやら沸いたようだ。
先ほど買ってきたカップ麺をテーブルに乗せ、お湯を注ぐ。時間は2分30秒。俺はちょい固めが好みだ。

きっかり2分30秒でフタを開ける。 

「いただきます」

ズルズルと麺をすする。この少し固い感じがなんとも旨い。
腹が減っていたためか、あっという間に食べ終えてしまった。早く作れて早く食べれる。カップ麺の利点だ。
今のうちに片付けておこう。放っておくといつまでも片付けなさそうだしな。
ささっと水ですすぎ、発泡スチロール用のゴミ箱に入れておく。  

「これでよし、と」

片付けた後はやることが無くなってしまった。
現在春休み真っ只中。
夏休みや冬休みに比べて期間が短く、課題も少ないため暇を持て余しがちだ。食って寝ての繰り返しにはもう飽き飽きしていた俺は、ふと魔剣のことを思い出し、玄関の脇に置きっぱのそれを居間に持ってきた。
今日は魔剣観察でもして時間つぶそう。

バッグから取り出してテーブルの上に置いてみる。
長さは1m弱、横幅は30cm程だろうか。質感は金属。色は黒。所々に赤いラインが入っている。
シンプルな見た目だ。
鞘から抜いてみる。
刀身は黒く、金属光沢が美しい。刃の部分は銀色で、良く研がれているのがわかる。
重さは両手で持てる程度。とてもじゃないが振り回せない。漫画とかアニメでよくある、方に担いだり高速で切り刻んだりは絵空事というのが実感できる。単に俺が非力なだけかもしれないが。
一通り満足したので、鞘に収めてバッグに入れようとした。
「ん?紙?」
バッグを開けてみると、中に一枚の紙が入っていた。

『取扱説明書』

……魔剣にも取説、あるんだな。
内容は至ってシンプルで、 

『この魔剣は、水につけることで本来の力を発揮します。湯船に1晩つけるのが最適です』

とだけ書かれていた。
俺はアホらしくなって取説と魔剣をバッグにしまい、押し入れに突っ込んだ。 

魔剣とか水につけるとか、実にバカバカしい。

まだ昼の3時過ぎだったが、今日は寝ることにした。
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