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「じゃあ、今日はこのまま作戦会議をするわ。まずは荷物持ちと留守番の希望を聞くわ。序列順に答えなさい。ちなみにアリアナのための買い物だから、アリアナは一緒に街に行くわよ」
「分かりました」
 素直にうなずくアリアナに、ロゼは満足そうにうなずくと、ネオに視線を向けた。その視線を受けてネオが口を開く。
「俺は一緒に行く」
「ネオが行くなら、私は留守を守りましょう」
「俺も、女の買い物は長いからな。付き合ってられねぇ」
「……行きたいが、万が一戦闘になった時、俺は近接戦が苦手だ。残る」
「港に降りるなら市場には行きたいけど、ロゼさんたちの買い物に付き合ったら夕飯の準備が出来なくなりそうだから止めておく」
「右に同じく~」
「女の買い物には付き合うつもりはない」
「えっ、皆さん行かないんですか! じゃあ僕は一緒に行きたいです! 荷物持ちでもなんでもしますよ」
 各々が希望を言うと、ロゼは一緒に行きたいと言う人が少ないことに驚いて「あら、みんな釣れないのね」と目を丸くした。
「じゃあ、ネオとソヴァンとテトの三人が付いてきなさい。ソヴァン、近接戦が苦手なら、さっさと距離を取っちゃえばいいのよ。荷物持ちも必要なんだからついてらっしゃい」
「ん、了解」
「いい子。じゃあ、効率よく店を回るために事前にルートを決めておくわよ」
 ロゼはそう言うや、剣の代わりに差していたらしい地図を引き抜いてテーブルの上に広げる。その地図はどうやら降りる予定の港町の地図らしく、その地域は海軍基地を中心に観光名所にもなっているようで、華やかな地図だった。
「軍の基地を観光名所にするってどうよ。考えられないわよね」
 ケッと悪態をついてから、コンコンと港を短剣で指す。
「まずは港。海軍基地が近すぎるからさすがにドクロは外して入港するわ。あと、服装も上品なものを全員着用しなさい。幸いこの船はとても豪華で美しいから、服装さえちゃんとしていればこれがまさか海賊船だなんて誰も思わないわ。明日は全員タキシード着用ね。私とアリアナはドレスを着るわ。そして次、港から一番近いのは――」
 短剣で一つずつ差しながら、細かく指示を出していくロゼに、クルー達は真剣に聞き入り、時に改善案を提案した。そして全ての動きが決まると、ロゼは一度黙ってじっくりと地図を眺めた後「うん、良いわね」と笑顔に戻る。
「それじゃ、今日は武器の点検に重点を置き、今日中に武装を完璧に整えておきなさい。万が一戦闘になった時は、私達の恐ろしさを海軍どもに知らしめてやりましょう」
「はっ!」
 ロゼの言葉に、クルー達はそれぞれ不敵に笑いながら一糸乱れぬ軍隊のように声をそろえて応じ、それぞれの武器を点検するべく食堂を出て行った。それを見ていたアリアナは相変わらず団結力が強いなと感想を抱きながらふと自分は戦うことが出来ない事に不安を覚えた。
「ロゼさん。私、武器なんて触った事ないし戦えないのですが…」
「アリアナに戦う能力なんて求めてないわ。可愛い可愛い私の宝物ですもの。…でもそうね、不安ならデュオに護身術でも習うと良いわ」
「デュオさんに、ですか?」
 意外な人物の名前にキョトンとして名前を復唱するアリアナに、ロゼは笑顔でうなずく。
「えぇ、デュオは体術に秀でているから、護身術を習うならデュオがいいわ。簡単なものなら今日中に覚えられるんじゃないかしら。習っておく?」
「はい、何もできないよりはいいかなと思うので」
「いい心がけね。じゃあ、一緒にデュオの所に行きましょうか」
 ロゼは立ち上がると、アリアナの手を引いて一緒にデュオの所へ向かった。

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