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【番外編:お気に入り登録数50人到達記念】

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 某日。この日も絶好の航海日和の朝がやってきた。
「私の愛しいクルー達! 集まりなさい!」
 この船の船長であり、海の絶対的女王が手を三回叩いた後に声高らかに呼びかけると、船に乗るクルー達は主人の呼びかけに応えるために甲板に集まった。
「ロゼ、今日はどうした? 随分とご機嫌だな」
 第一の騎士……つまりロゼの最愛の人であるネオがどことなく嬉しそうなロゼの表情を敏感に察知して穏やかに問いかけると、ロゼはよくぞ聞いてくれましたと言わんばかりに目を輝かせた。
「フフ、聞いて驚かないでね? 私達とアリアナの今までの道のりを好きだと言ってくれた人が50人になったのよ。私の宝であるアリアナの可愛さにみんなが惚れたって事よね」
「えっ!? 私!? いや、えっと、それよりもロゼさんの人柄に惚れたんじゃないでしょうか? あと、他の皆さんもカッコいいですし……」
 ロゼの言葉にしどろもどろになりながら言うと、その言葉に反応してすかさずアリアナを狙う男たちがざわめいた。
「えっ、アリアナちゃん俺達のお嫁さんになってくれるって?」
「大歓迎」
 料理人のティオンとティタがそれぞれ大きく解釈を変えてアリアナに迫れば、それに乗っかるように横から狙撃手のソヴァンがアリアナの手を取り、その甲に触れるだけのキスをする。
「アリアナ……選ぶなら俺を選んでほしい……」
「ちょっとちょっと! 僕だってアリアナちゃんのこと好きだし、アリアナちゃんと一番年が近いのは僕なんだからね!」
 それを見た見習いのテトが反対側の腕に抱き着きながら抗議の声を上げる。そんな風にワイワイとアリアナに詰め寄る四人に、ロゼはすかさず男達からアリアナを引きはがして自分の懐の中に入れ、四人に鋭い視線を送った。
「ちょっと、アリアナは私の宝よ。アリアナを困らせる悪い男にはあげられないわ」
「というか、お前らロゼを一番に愛せよ。ロゼが傷つくだろ」
 アリアナをかくまうロゼの後ろからネオがロゼを抱き締め、本気で怒っている様子の顔で四人を睨む。しかし、それを船医のデュオが鼻で笑った。
「ネオ、それは多分あり得ませんよ。ネオがロゼを一番に愛している限りロゼはあまり気にしないでしょう」
「確かにな。でも、俺はロゼを愛してるぜ。アリアナとも寝てみたいが、ロゼの許しなく抱けねぇし。それなら、ロゼを愛している方がいい」
「ふふ、ジャンありがとう」
 喧嘩っ早いジャンもなんだかんだロゼ最愛主義者の一人であるため、ロゼの隣に立ち熱烈な愛の言葉をロゼに贈った。
「……それで? まさか俺達を呼んだのはただそれを伝える為だけじゃないだろう?」
 ただ一人、冷静にこの様子を見ていた航海士のジゼルが先を促すと、ロゼはウィンクをして続きを話し始めた。
「もちろん。私達のこれからの覇道をさらに多くの人に見てもらうために、今日は宴を開くわよ!」
 ロゼの一言にクルー達はワッと喜びに沸くが、すぐにロゼがパンッと手を叩いて静かになる。
「ただし、今回の宴はただの宴じゃないわ。読んでくれている、いわば私達の仲間に感謝をする会よ。だからみんな今日は一張羅に身を包み、目いっぱいめかし込んできなさい」
 ロゼの言葉に全員がやる気に満ちた目でロゼを見、すぐに「しゅの意のままに」と頭を下げてそれぞれが準備に向かった。

 そして丸一日かけてみんなで宴の準備を行い、夜のとばりが落ちる頃に宴が始まった。
 船は甲板の手すりから帆を張る縄に至るまで飾りが施され、ロウソクもたくさん使ってまるで昼のような明るさが甲板にはあった。そして何よりも、甲板に立つクルー達の装いがその場を一層華やかにさせた。
 船長であるロゼはこの船の装飾に負けずとも劣らない華やかな白いドレスを身にまとう。ロゼのドレスはその美しい体のラインがはっきりと出るオフショルダーのマーメイドラインドレスで、ウェディングドレスを連想させるような美しい物だった。
 もう一つの花であるアリアナは可愛らしいピンクのドレスを身にまとっている。アリアナがまとう優しさを体現するかのようなふわふわとした膝丈のチュールのドレスだが、そんなふわふわに反して背中が大きく出るタイプのホルターネックをセレクトしており、どこか魅惑的な雰囲気も持ち合わせるアリアナにピッタリなドレスだった。
「ウフフ、やっぱりみんなが着飾ると眼福ね。ほら、アリアナも恥ずかしがってないでよく見ておきなさいよ。皆で着飾る事なんてあまりないんだから」
「で、でも……私のドレス、背中開き過ぎじゃないですか!? 首元のリボンを解かれたら胸とか全部出ちゃいますし……うう~、は、恥ずかしいです~」
 男たちの装いもそろって華やかで、ネオはロゼと示し合わせたかのような白いタキシードを着用し、髪の毛もしっかりと整えてオールバックで決めていた。
 デュオはいつもの白衣とは逆の全身黒の装いに、さりげなくゴールドのタイピンやカフスなどの装飾品で遊んでおり、危険な大人の色香が漂っていた。
 ジャンはハイネックのシャツにクロスタイをし、ワイン色のベストとジャケットを着ており、いつもの粗雑なイメージは全くなっていた。
「ロゼもそれを着ると思って、揃いのタキシードを着て良かった。綺麗だ、ロゼ」
「ネオ、今日の宴の趣旨をちゃんと理解してますか? 感謝の宴ですよ。まったく」
「デュオの言うとおりだ。見せつけるんじゃねぇよ。シバくぞ」
 ソヴァンもハイネックシャツにループタイという装いで濃紺のベストとジャケットを着、左目の傷を隠す眼帯もいつもの物よりもデザイン性に優れたオシャレなものを着用していた。
 ティタとティオンはお揃いの物だが分かりやすいように別々の色を着用していた。ティタは黒いシャツに赤いネクタイを締め、さりげないストライプの入った灰色のスーツを着用し、逆にティオンは白いシャツに青いネクタイを締め、同じくさりげないストライプの入った黒いスーツを着ていた。
 ジゼルは皆とは趣向が違い、華やかな貴族のような服装だった。レースがあしらわれたスカーフを首に付け、刺繍の入ったベストとコートを、さらにズボンの裾にも刺繍が入っているオシャレな物を着ていた。
 テトはサーカス団員時代に着ていた派手なスーツで、白いシャツにさりげなくバラのデザインが施された黒いネクタイ、赤い上下のスーツを着ていた。それでも滑稽に見えないどころか、それが当たり前であるかのような風貌を出している所が彼のすごい所でもあった。
「恥ずかしがるアリアナも可愛い……」
「不本意だが、それは同意する」
「ねー、ロゼちゃんとは違ってふわふわのドレスも可愛いったらないよね」
「鼻の下を伸ばしてみっともないぞ」
「ジゼルさんの服、カッコいいですね! 今度僕も着てみたいです。あと、ジゼルさんだって可愛い二人を見て表情が緩んでいたの、僕は見逃してませ…あでッ! ちょ、無言で殴らないで下さいよ!」
 ワイワイと騒ぐクルー達に、ロゼはパンッと一つ手を叩いて静かにさせると、もう一度全員の姿を見て満足そうに笑い、声高らかに宴の開始を宣言する。
「さあ、今日は感謝の宴よ! 私達を応援してくれる皆に感謝をし、これからの覇道へ突き進むための英気を養うために、今日は目いっぱい食べて飲んで、歌って、踊りなさい!」
「おぉ~!」
「でも、どんちゃん騒ぎになる前にちゃんと感謝の言葉を言わないとね。さ、一人ずつ言っていくわよ! 言葉を考えておきなさい」
 ロゼの言葉はいつも唐突でクルー達は一瞬どよめくが、それでも笑ってどうしようかと悩み始めた。

・ロゼ・イーガン
「私がアリアナを拾った時、まさかこんなに気に入ってくれる人がいるとは思わなかったわ。でも、気に入った事を後悔させないわよ。私達の行く末を、最後まで見ていってちょうだいね」

・アリアナ・ロステル
「えっと……お気に入りにしてくれてありがとうございます。船での生活は大変ですが、楽しいので気に入っています。私も頑張るので、これからもよろしくお願いします」

・ネオ・アヴィア
「お気に入り登録、ありがとう。俺はロゼにしか興味が無いからあまり気にしていないんだが、ロゼが嬉しそうだと俺も嬉しい。だから、ロゼを笑顔にしてくれた皆には感謝してる。これからもよろしくな」

・デュオ・レティア
「お気に入り登録ありがとうございます。皆様の応援は確実に届いています。おかげで私達は航海を続けられる。心から感謝していますよ」

・ジャン・デューク
「あー、よく分かんねぇけど、ありがとな! これから先、俺のカッコいい姿をもっと見せてやるから、見逃すんじゃねぇぞ!」

・ソヴァン・デュオール
「……お気に入り登録、だったか? ありがとう。……俺は必ずアリアナと一緒になる。だから、応援してくれると嬉しい」

・ティタ・ウェース
「お気に入り登録ありがとう。俺達もアリアナを口説き落とすつもりでいるから、応援してくれたらティオンと一緒に喜ぶよ」

・ティオン・ウェース
「お気に入り登録ありがとね~! 俺、ロゼちゃんの笑顔も好きだから、たくさんの人に応援されて喜ぶロゼちゃんを見れて嬉しいよ。あ、でもアリアナちゃんも可愛いよね。口説き落とすために俺も頑張っちゃうから応援よろしく~」

・ジゼル・ヴィオーラ
「お気に入り登録、ありがとうございます。最初は女が増えた事を絶望しました。何なら今もまだ残念に思います。ですが、アリアナが全くの無能でなかったことは幸いでした。……この船がどんな行く末をたどるのか、楽しみでもあります。なので、引き続き応援をよろしくお願いします」

・テト・ニーゼン
「50人もお気に入り登録してくれたんですよね? すごいですよね。応援ありがとうございます! 僕、全然アリアナちゃんにアプローチできてないけど、アリアナちゃんは僕も狙ってますから、応援してくれると嬉しいです! よろしくお願いします!」

「うん、良いわね。じゃあ、みんなで乾杯するわよ」

「「乾杯!!」」

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