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王道って何ですか?

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「こっ……の……」

「野郎! ただじゃおかねぇからなっ!」

 あ~あ。なんという展開でしょう。

 この隙に逃げようと試みたのですが、数では無理。てんで無理。

 すぐさま僕は捕まりました。そして一発、お見舞いされました。

「ぐっ……!」

 それにわかってたんです。あの会長が、僕を助けに来るなんて、絶対にないってこと。腐男子君の妄想するような王道展開があるはず、ないんだってこと。

 だって、皇君は……僕の事をただのルームメイトとしか思ってないんですから。あ、セフレって自分でいうのが哀しかっただけです。

 ああ、もう。最悪で……

 バキッ!!

「ぐあっ!?」

 す?

「え?」

「これは何です?」

 なんか聞いたことあるような声ですね。うん。昨夜さんざん耳元で囁かれたバリトンと同じです、はい。

「どうして君が、こんなむさくるしい連中に取り囲まれているんですか」

 と、聞かれましても。僕もどうしてかわかりません。何せ王道らしいですから。

 それに。

「君が原因ですし」

「そうですか。それは悪いことをしました」

 夢でも見ているんでしょうか?

 少しだけ霞む視界に現れた、冷やかな目の色の黒髪バージョン皇君がここにいるんです。そして僕に謝りました。

 なんと言うことでしょう! あの皇バ会長が僕に謝った!! やったぜ、こんちくしょう!!

 なんて、ちょっと喜んでる場合じゃない。

「なんで?」

 ここにいるんですか? 皇君は王道じゃないでしょう? たまたま? たまたまなんですか? だったら、なんで……そんなに恐い顔、してるんですか?

 尋ねたら、皇君は。

「そこにいる君の友人に聞きました」

 と、上の方に指を向けました。

 へ?

 首を上げて視線をやれば、三階の窓からこちらを見下ろす腐男子君と、ニコニコと微笑む副会長がいました。

「まったく……僅かで貴重な休憩時間に。昨夜はあまり寝てないんです。面倒を起こさないでください」

「いやいやいや。貴方の所為でこうなっているんでしょうが。てか、睡眠を削ってるのも貴方でしょうが」

「最終的に私に屈服し、腰を振って離さなかったのはお前です」

「それは……「「いやあああああああ!!」」……であって、僕じゃ……「「皇生徒会長がああああ!!」」……ああ、もううっせぇなチワワ!」

 これじゃ僕が淫乱みたいじゃねぇか!

「淫乱受けキタコ……「うっせぇ! 腐男子!」……口悪い平凡受け萌えー!!」

 萌えんな!

「それはそうとさ~」

 ん? 副会長?

 こちらを依然、ニコニコと微笑みながら観覧に徹するお方がのんきな声で皇生徒会長へと意見しました。

「そいつらの処分どうすんの?」

 まぁ、事は明らかですしね。いてて……殴られたとこ、早く冷やさないとですし。

 自分の頬を手の甲で撫でると、トロリとした生温かいものを感じました。視線を落としてハッとします。

 鉄の味。

「うわあ……」

 一気に目の前が暗くなりました。力が抜けて、ふらふらと地面に落ちました。

 僕、血が駄目なんですよね。全然駄目。なんでかしんないけど。

 でも、駄目なものは駄目なので、このまま意識も落ちようかと思います。踏ん張っても、瞼は閉ざされます。

「おい」

 皇君の声がしました。なぜかいつもと調子が違う気がしたけど……多分、意識が朦朧としているせいでしょう。

 願わくば。誰か僕を保健室へと運んでください。お願いします。

「てめぇら……赦さねぇ」

 最後に聞いたこの台詞。

 いったい、誰だったんでしょうか?
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