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王道って何ですか?
END
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「ん……」
ここは……部屋?
「目が覚めましたか?」
「うわあ……」
最悪です。部屋の次に皇君の顔を見ちゃいました。
そして何が起こったのか、瞬時に思い出しました。そうだった。僕、血を見て倒れたんでしたっけ。だから喧嘩は嫌いなんです。
「そう嫌そうな顔、しないであげて。すっごい心配してたんだから、こいつ」
「七海」
上体を起こせば、変わらずニコニコ微笑む副会長と、ニマニマと気持ち悪い腐男子君の姿も飛び込んできました。そしてなぜか、皇君が副会長を睨んでます。七海って、副会長の名前でしたよね?
「ホントのことでしょ~? まぁ、よかったじゃない。大事なくて」
「ホントホント。大事なくてよかったですよ~。や~、あの時は生徒会に飛び込んで正解でした」
逃げたんじゃねえのか。よし、呼び名を腐男子から友人へと戻してやろう。
助かった事にはホッとしたので、僕は頭を下げました。
すると、副会長が。
「にしても、ホント良い物見させてもらいました。まさか若が血相変えて走り出すなんてさ! いっつもクールで二手三手先の事を考える奴がなりふり構わず君の下まで駆けつけたんだよ。いや、駆けつけたんじゃなく、飛び降りた、かな?」
は? 飛び降りた?
首を傾げると、いつもの猫の皮はどこへやら。皇君がものすごく恐い顔で、副会長こと七海君の胸倉に掴みかかり、部屋の外へと出て行ってしまいました。
わけわからないのですが。
すると、その説明は友人がしてくれました。
「僕たち、なんで三階から見下ろしてたんだと思う? 会長ね、君を見つけた瞬間、あそこの窓から飛び降りたんだよ」
足、痛そ~!!
何してんの!? あの人、何て無茶してんの!?
「王道キタコレ。御馳走様でした。エッチについては、また今度クワシク~♪」
友人はやっぱりニマニマ顔で、手を軽く振りながら退室。え……それを言う為だけにここにいたの?
わけがわからない人間が多すぎて、平凡の僕はついていけません。
入れ替わりに、皇君が戻ってきました。いつもの澄まし顔で。
「気分は?」
「え? ああ、大丈夫です。ここまで運んでくれたの、皇君ですか? ありがとう」
「別に」
お礼言ってるのに、そっけない。
まぁ、いつものことだけど。
「あ、そういえば」
忘れてた。あのチワワ軍団とゴリラさんたち、どうなったんだろ?
皇君に聞いてみました。
「制裁を与えました」
「は?」
いま、なんと?
「制裁です」
「はあ」
「心配には及びません」
「うん」
「証拠は全て隠滅しました」
何したの、この人。
ちょっとだけ、離れました。
「冗談です。しかし、今回は七海からも念を押されましたが、生徒会として事態を収拾しました。勿論、教員の方にもこの件を把握してもらいましたが」
やけに生徒会、って単語が強調されたな。まぁ、あの場には七海君……副会長もいたし、大丈夫でしょう。仮にもこの人、生徒会長やってるし。あ、そうじゃん。この人、生徒会長じゃん。本来の役職を見失ってました。
「それよりも」
「え?」
「本当に大丈夫ですか?」
「あ……うん。大丈夫ですけど」
「本当に?」
「う、ん……」
血が駄目なだけで、殴られたとこは痛いだけで平気だし、びっくりしたけど事態は収まったわけだし。
「大丈夫です」
「そうですか」
あれ。気にしてるんでしょうか。珍しいこともあるもんですね。攻めるなら、今?
ここは一つ、駄目もとで言ってみましょうか。
「まあ、気にしているのなら、今後は少しでも優しくしてください」
この一言。
まぁ、絶対にあり得ないでしょうけど……って思って、発したのですが。
「わかりました」
と、驚くべきお返事が。
明日、隕石が落ちてもおかしくない発言です。どうしたの。頭ぶったの?
と、慌ててしまった僕。すぐに後悔しました。
「極力、優しく抱きましょう」
「そっちじゃねぇよ」
なんなの。馬鹿なの?
成績優秀って、実は嘘? 昨夜の集会、何してるの?
はぁ。ため息ばかりが出ます。もぞもぞと布団の中に潜り込みました。
「寝ますか?」
「うん」
疲れたので。
すると、冷やりと。
「おやすみ」
おでこが気持ちいいです。皇君は、なんだか人みたいな微笑みを見せました。あ……一応人間だった。
なんだか恰好いいな、って思ってしまう微笑みでした。
確かに、この人と部屋が一緒になってから、散々な目に遭ってますけど。でも、嫌なことばかりじゃありません。なぜかは知らないけど、抱かれた次の日は必ず僕の好きな物が置いてありますし、テストの前の日などは鬼畜ながらも勉強を教えてもらってます。
あ。あと一回だけ。バイクに乗せてもらったことがあるんですよ。スピードが気になりましたけど、風がすごく気持ち良くて。僕の好きな海へと連れてってくれました。
本当に意地悪な人だったら、僕はあの時……初めて抱かれたあの日に飛び出してたと思うけど。彼のその手からは不器用ながらも、あったかいものを感じたから。だから、多分、今も。
この手を払うことができないんですよね。自分はつくづく甘い人間だって思います。
本当に……。
バックは身体への負担が少ないのだと流され受け入れた僕は、本当に甘くて優しい人間だって思います。ええ。
END.
ここは……部屋?
「目が覚めましたか?」
「うわあ……」
最悪です。部屋の次に皇君の顔を見ちゃいました。
そして何が起こったのか、瞬時に思い出しました。そうだった。僕、血を見て倒れたんでしたっけ。だから喧嘩は嫌いなんです。
「そう嫌そうな顔、しないであげて。すっごい心配してたんだから、こいつ」
「七海」
上体を起こせば、変わらずニコニコ微笑む副会長と、ニマニマと気持ち悪い腐男子君の姿も飛び込んできました。そしてなぜか、皇君が副会長を睨んでます。七海って、副会長の名前でしたよね?
「ホントのことでしょ~? まぁ、よかったじゃない。大事なくて」
「ホントホント。大事なくてよかったですよ~。や~、あの時は生徒会に飛び込んで正解でした」
逃げたんじゃねえのか。よし、呼び名を腐男子から友人へと戻してやろう。
助かった事にはホッとしたので、僕は頭を下げました。
すると、副会長が。
「にしても、ホント良い物見させてもらいました。まさか若が血相変えて走り出すなんてさ! いっつもクールで二手三手先の事を考える奴がなりふり構わず君の下まで駆けつけたんだよ。いや、駆けつけたんじゃなく、飛び降りた、かな?」
は? 飛び降りた?
首を傾げると、いつもの猫の皮はどこへやら。皇君がものすごく恐い顔で、副会長こと七海君の胸倉に掴みかかり、部屋の外へと出て行ってしまいました。
わけわからないのですが。
すると、その説明は友人がしてくれました。
「僕たち、なんで三階から見下ろしてたんだと思う? 会長ね、君を見つけた瞬間、あそこの窓から飛び降りたんだよ」
足、痛そ~!!
何してんの!? あの人、何て無茶してんの!?
「王道キタコレ。御馳走様でした。エッチについては、また今度クワシク~♪」
友人はやっぱりニマニマ顔で、手を軽く振りながら退室。え……それを言う為だけにここにいたの?
わけがわからない人間が多すぎて、平凡の僕はついていけません。
入れ替わりに、皇君が戻ってきました。いつもの澄まし顔で。
「気分は?」
「え? ああ、大丈夫です。ここまで運んでくれたの、皇君ですか? ありがとう」
「別に」
お礼言ってるのに、そっけない。
まぁ、いつものことだけど。
「あ、そういえば」
忘れてた。あのチワワ軍団とゴリラさんたち、どうなったんだろ?
皇君に聞いてみました。
「制裁を与えました」
「は?」
いま、なんと?
「制裁です」
「はあ」
「心配には及びません」
「うん」
「証拠は全て隠滅しました」
何したの、この人。
ちょっとだけ、離れました。
「冗談です。しかし、今回は七海からも念を押されましたが、生徒会として事態を収拾しました。勿論、教員の方にもこの件を把握してもらいましたが」
やけに生徒会、って単語が強調されたな。まぁ、あの場には七海君……副会長もいたし、大丈夫でしょう。仮にもこの人、生徒会長やってるし。あ、そうじゃん。この人、生徒会長じゃん。本来の役職を見失ってました。
「それよりも」
「え?」
「本当に大丈夫ですか?」
「あ……うん。大丈夫ですけど」
「本当に?」
「う、ん……」
血が駄目なだけで、殴られたとこは痛いだけで平気だし、びっくりしたけど事態は収まったわけだし。
「大丈夫です」
「そうですか」
あれ。気にしてるんでしょうか。珍しいこともあるもんですね。攻めるなら、今?
ここは一つ、駄目もとで言ってみましょうか。
「まあ、気にしているのなら、今後は少しでも優しくしてください」
この一言。
まぁ、絶対にあり得ないでしょうけど……って思って、発したのですが。
「わかりました」
と、驚くべきお返事が。
明日、隕石が落ちてもおかしくない発言です。どうしたの。頭ぶったの?
と、慌ててしまった僕。すぐに後悔しました。
「極力、優しく抱きましょう」
「そっちじゃねぇよ」
なんなの。馬鹿なの?
成績優秀って、実は嘘? 昨夜の集会、何してるの?
はぁ。ため息ばかりが出ます。もぞもぞと布団の中に潜り込みました。
「寝ますか?」
「うん」
疲れたので。
すると、冷やりと。
「おやすみ」
おでこが気持ちいいです。皇君は、なんだか人みたいな微笑みを見せました。あ……一応人間だった。
なんだか恰好いいな、って思ってしまう微笑みでした。
確かに、この人と部屋が一緒になってから、散々な目に遭ってますけど。でも、嫌なことばかりじゃありません。なぜかは知らないけど、抱かれた次の日は必ず僕の好きな物が置いてありますし、テストの前の日などは鬼畜ながらも勉強を教えてもらってます。
あ。あと一回だけ。バイクに乗せてもらったことがあるんですよ。スピードが気になりましたけど、風がすごく気持ち良くて。僕の好きな海へと連れてってくれました。
本当に意地悪な人だったら、僕はあの時……初めて抱かれたあの日に飛び出してたと思うけど。彼のその手からは不器用ながらも、あったかいものを感じたから。だから、多分、今も。
この手を払うことができないんですよね。自分はつくづく甘い人間だって思います。
本当に……。
バックは身体への負担が少ないのだと流され受け入れた僕は、本当に甘くて優しい人間だって思います。ええ。
END.
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