【完結】ルームメイト〜僕と彼の関係〜

天白

文字の大きさ
32 / 51
王道と非王道の違いが未だにわかりません

しおりを挟む


 心の中での突っ込みは疲れます。そろそろお引き取り頂きたいので、僕はげんなりしたまま二人に声を掛けました。

「それよりお二人とも……ダブルスならそろそろお時間なんじゃ?」

「そうなんだよね~。会長不在時に君と絡めるならラッキーって思ってたんだけど、そういう時に限ってタイミング合わないんだよねぇ」

 わざとらしく肩を竦めてみせる左側の橘君。右側の橘君も残念そうにため息を吐くも、ようやっと僕を解放してくれました。誰だ。さながら僕が捕らわれの宇宙人みたいだとか思った奴は。

「それより、こっちの子は? 見慣れない顔だけど」

 右側の橘君が紫瞠君に視線を向けて尋ねました。ああ、そうだった。紫瞠君、置いてけぼりになっちゃいましたね。橘君たちのことを知らないでしょうからね。ぽか~んとしています。可愛い。

「こちらは転校生の紫瞠君ですよ。特進クラスに編入された二人の内の一人です。紫瞠君、こちらは橘会計と書記さんです。生徒会の人達なんですよ」

 軽く他者紹介。どっちが会計でどっちが書記なのかはわかりませんが。

 すると、電球に明かりがついたとばかりに「ああ」と声を出して頷く橘兄弟。

「噂の二人の内の一人ね~。ごめんねぇ、紫瞠君。俺ら、もう一人の方の片岡君とばかり仲良くなっちゃってさ~」

 そう言えば……橘兄弟にお気に入りが出来たって最近噂になってたな。そうか。片岡君だったのか。なら安心。うんうん。

「ただいま平凡君から紹介頂きました~。橘真と~こっち実です~。生徒会会計&書記をやってま~す。よろしくねっ」

 橘兄弟が二人揃って紫瞠君に手を差し出しました。決して何かをくれと言っているわけではありません。挨拶の時に差し出される手といえば、アレしかありません。ええ。そのはずなのに……?

「紫瞠君?」

 紫瞠君、自分より背の高い橘兄弟を見上げたまま、ぽか~んとしています。ぽか~んとしたままです。ええ。可愛いけれど、ぽか~んとしています。口が半開きになって橘兄弟を見つめています。ど、どうしたの?

 僕の視線に気づいたのか、紫瞠君は我に返ったとばかりにハッとしました。

「へ? ああ、うん。よろしく……」

 シェイクハンズ。ようやく差し出された手はその意味を成しました。橘兄弟は片方ずつですが、紫瞠君は両手を差し出してそれぞれの手を握りました。

 ぶんぶんぶん。

 何やら、シェイクハンズに力が込められている様にも見えましたが、僕の気のせいでしょうか?

「お前達、何をしているのですか?」

 そこへやって来たのは、うへぇ……貴方でしたか。僕があからさまに口角を下げるのと同時に、同じ顔のお二人も同じように肩を竦めました。

「うげっ……会長じゃん~」

「ほんと、タイミング最悪~」

 皇君。上下ともに学校指定のジャージ姿ではありますが、どうしてこうも眩しく見えるのでしょう? 特に恰好良く着こなしているわけでもないのに……何なんだ、一体。後ろの方で目をハートにさせているチワワ達がきゃあきゃあ騒いでいます。とはいえ、この双子から解放されるのなら今は良しといったところでしょうか?

 しかしほっと一息吐いたのも束の間。橘兄弟は再び僕の腕に抱きつき……

「「そんな睨まなくてもいいじゃない。会長だってわかってんでしょ~? 俺らの平凡君に対する気持ちをさ」」

「ひっ!?」

 僕の頬にそれぞれ自分の頬を擦りつけてきやがったのです! ひいいっ!? す、すべすべしてるううっ!?

 髭とか皆無なんでしょうか。もっちりと、それでいてさらりとした触感……本当に男か!?

 あまりにも自分と異なる肌質に驚きを隠せませんが、やはり野郎は野郎です。ゾワリと下から上に、鳥肌が立ちました。ひいいいっ!

「じゃ、バイバ~イ」

「今度は会長がいない時にね~。坂本君と紫瞠君もまったね~」

 固まる僕をよそに、二人は息ぴったりに動きを合わせて僕から離れると、皇君とは反対の方向に向かって手を振りながら去って行きました。皇君もそうですが、生徒会に関わると碌な目に遭いませんね……気持ち悪っ。

「今度の新刊は双子モノで決定ですね……ふへへ」

 こっちはこっちで何かほざいてやがるし。

 ブツブツと粟立つ腕を摩りながら、ぐったりと項垂れる僕。長い長い溜め息を吐くと、頭上がふっと暗くなりました。僕より背の高い人間は今この場に一人しかいません。

「な、何です?」

「いや、衣服から出ているお前の肌が、羽を毟られ皮を剥がされた鳥のようになっているものですからつい……気持ち悪いな、と」

 こんの野郎~!! 冷やかに見下ろしながらなんつーこと言いやがるっ! バ会長め!!

 奥歯をギリギリと噛みしめながらコヤツを睨み上げます。するとそこへ……

「皇君、皇君」

 紫瞠君が皇君の腕の裾をクイクイしながら声を掛けました。だ、駄目ですよっ。紫瞠君っ。こんなヤリチン男に声なんか掛けちゃっ。純粋な紫瞠君が穢れてしまいますっ。それにチワワが紫瞠君に目をつけちゃいますよっ。

 あわあわと僕は一人で慌てていると、紫瞠君は皇君に柔らかい笑みを浮かべました。

「皇君もお昼のお弁当、僕達と一緒に食べない? ヘーボン君達とね、食べようと思っててお弁当を多めに作って来たの。おにぎりの数は足りると思うし、おかずもたくさん作ったから」

 魔王を昼食に誘ったあ!? 駄目だって! こんな野郎にそんな微笑み向けながら自分の手料理を誘っちゃ駄目だってば!

 何度か紫瞠君お手製のお弁当を味見させてもらったことがありましたが、絶品です。結婚するなら奥さんにしたいナンバー1! と言っても過言でないくらいのメシウマ少年なのです。しかもお洒落な洋風料理だけじゃなくて、煮物とか煮付けとか、実家のお母さんを彷彿とさせる様な茶色い系のおかずがとってもとっても美味しいのです。何で女の子じゃないんだろ……おーあーるぜっと。

 そんなオカン紫瞠君からの嬉しいお誘いを、この男はあろうことか。あろうことかああ!

「いいえ、結構です。大会の運営もありますし、ゆっくりと昼食を摂る時間がありませんので……失礼」

 紫瞠君に掴まれていた裾を引くように解くと、自身がやって来た方向へ踵を返し去っていったのです。あんにゃろ~! 紫瞠君の誘いをあっさりと断りやがって~!

 僕はすぐさま、紫瞠君のフォローに回りました。

「気にしないで下さいね、紫瞠君。あの野郎は普段から猫を何百匹と被っているんです。その分、僕が紫瞠君の結んでくれたおむすびを頂きますよ!」

 絶対に美味しいに違いないおむすび! 早くもお腹が鳴りそうです。

 しかし紫瞠君は、皇君に断られたことを気にしていないのか、僕を見つめて……

「ヘーボン君って……」

「ん?」

「愛されてるんだね~」

「へ?」

 にこっと笑いました。可愛いっ……けど、へ? 誰に?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

laugh~笑っていて欲しいんだ、ずっと~

seaco
BL
バー「BIRTH」で働くイケメン久我 侑利(くが ゆうり)は、雨続きで利用したコインランドリーで辛い過去を持つ美人系男子の羽柴 慶(はしば けい)と出会う。 少しずつお互いに気になり始めて、侑利の家に居候する事になる慶。 辛い過去や、新しい出会い、イケメン×無自覚美形の日常の色々な出来事。 登場人物多数。 基本的に「侑利目線」ですが、話が進むにつれて他の登場人物目線も出て来ます。その場合はその都度、誰目線かも書いて行きます。何も無いのは全て「侑利目線」です。 また、予告なく絡みシーンが出て来る事がありますが、グロいものではありません(^^; 初めての投稿作品なので…表現などおかしい所もあるかと思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです。

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

僕の恋人は、超イケメン!!

八乙女 忍
BL
僕は、普通の高校2年生。そんな僕にある日恋人ができた!それは超イケメンのモテモテ男子、あまりにもモテるため女の子に嫌気をさして、偽者の恋人同士になってほしいとお願いされる。最初は、嘘から始まった恋人ごっこがだんだん本気になっていく。お互いに本気になっていくが・・・二人とも、どうすれば良いのかわからない。この後、僕たちはどうなって行くのかな?

寡黙なオオカミαにストーカー気質のネコΩが嫁いだ話

かとらり。
BL
 誰もがケモミミとバース性を持つ世界。  澪は猫種のΩだった。  引っ込み思案の澪は半ばストーカーのように密かに追いかけている憧れの人がいる。  狼種のαの慶斗だ。  そんな慶斗にいきなり嫁ぐことが決定した澪。話しかけるのも無理なのに結婚なんてできるの?  しかも慶斗は事情があるらしくー…

平凡ワンコ系が憧れの幼なじみにめちゃくちゃにされちゃう話(小説版)

優狗レエス
BL
Ultra∞maniacの続きです。短編連作になっています。 本編とちがってキャラクターそれぞれ一人称の小説です。

平凡な僕が優しい彼氏と別れる方法

あと
BL
「よし!別れよう!」 元遊び人の現爽やか風受けには激重執着男×ちょっとネガティブな鈍感天然アホの子 昔チャラかった癖に手を出してくれない攻めに憤った受けが、もしかしたら他に好きな人がいる!?と思い込み、別れようとする……?みたいな話です。 攻めの女性関係匂わせや攻めフェラがあり、苦手な人はブラウザバックで。    ……これはメンヘラなのではないか?という説もあります。 pixivでも投稿しています。 攻め:九條隼人 受け:田辺光希 友人:石川優希 ひよったら消します。 誤字脱字はサイレント修正します。 また、内容もサイレント修正する時もあります。 定期的にタグ整理します。ご了承ください。 批判・中傷コメントはお控えください。 見つけ次第削除いたします。

優しい檻に囚われて ―俺のことを好きすぎる彼らから逃げられません―

無玄々
BL
「俺たちから、逃げられると思う?」 卑屈な少年・織理は、三人の男から同時に告白されてしまう。 一人は必死で熱く重い男、一人は常に包んでくれる優しい先輩、一人は「嫌い」と言いながら離れない奇妙な奴。 選べない織理に押し付けられる彼らの恋情――それは優しくも逃げられない檻のようで。 本作は織理と三人の関係性を描いた短編集です。 愛か、束縛か――その境界線の上で揺れる、執着ハーレムBL。 ※この作品は『記憶を失うほどに【https://www.alphapolis.co.jp/novel/364672311/155993505】』のハーレムパロディです。本編未読でも雰囲気は伝わりますが、キャラクターの背景は本編を読むとさらに楽しめます。 ※本作は織理受けのハーレム形式です。 ※一部描写にてそれ以外のカプとも取れるような関係性・心理描写がありますが、明確なカップリング意図はありません。が、ご注意ください

僕の部下がかわいくて仕方ない

まつも☆きらら
BL
ある日悠太は上司のPCに自分の画像が大量に保存されているのを見つける。上司の田代は悪びれることなく悠太のことが好きだと告白。突然のことに戸惑う悠太だったが、田代以外にも悠太に想いを寄せる男たちが現れ始め、さらに悠太を戸惑わせることに。悠太が選ぶのは果たして誰なのか?

処理中です...