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王道と非王道の違いが未だにわかりません
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しおりを挟む心の中での突っ込みは疲れます。そろそろお引き取り頂きたいので、僕はげんなりしたまま二人に声を掛けました。
「それよりお二人とも……ダブルスならそろそろお時間なんじゃ?」
「そうなんだよね~。会長不在時に君と絡めるならラッキーって思ってたんだけど、そういう時に限ってタイミング合わないんだよねぇ」
わざとらしく肩を竦めてみせる左側の橘君。右側の橘君も残念そうにため息を吐くも、ようやっと僕を解放してくれました。誰だ。さながら僕が捕らわれの宇宙人みたいだとか思った奴は。
「それより、こっちの子は? 見慣れない顔だけど」
右側の橘君が紫瞠君に視線を向けて尋ねました。ああ、そうだった。紫瞠君、置いてけぼりになっちゃいましたね。橘君たちのことを知らないでしょうからね。ぽか~んとしています。可愛い。
「こちらは転校生の紫瞠君ですよ。特進クラスに編入された二人の内の一人です。紫瞠君、こちらは橘会計と書記さんです。生徒会の人達なんですよ」
軽く他者紹介。どっちが会計でどっちが書記なのかはわかりませんが。
すると、電球に明かりがついたとばかりに「ああ」と声を出して頷く橘兄弟。
「噂の二人の内の一人ね~。ごめんねぇ、紫瞠君。俺ら、もう一人の方の片岡君とばかり仲良くなっちゃってさ~」
そう言えば……橘兄弟にお気に入りが出来たって最近噂になってたな。そうか。片岡君だったのか。なら安心。うんうん。
「ただいま平凡君から紹介頂きました~。橘真と~こっち実です~。生徒会会計&書記をやってま~す。よろしくねっ」
橘兄弟が二人揃って紫瞠君に手を差し出しました。決して何かをくれと言っているわけではありません。挨拶の時に差し出される手といえば、アレしかありません。ええ。そのはずなのに……?
「紫瞠君?」
紫瞠君、自分より背の高い橘兄弟を見上げたまま、ぽか~んとしています。ぽか~んとしたままです。ええ。可愛いけれど、ぽか~んとしています。口が半開きになって橘兄弟を見つめています。ど、どうしたの?
僕の視線に気づいたのか、紫瞠君は我に返ったとばかりにハッとしました。
「へ? ああ、うん。よろしく……」
シェイクハンズ。ようやく差し出された手はその意味を成しました。橘兄弟は片方ずつですが、紫瞠君は両手を差し出してそれぞれの手を握りました。
ぶんぶんぶん。
何やら、シェイクハンズに力が込められている様にも見えましたが、僕の気のせいでしょうか?
「お前達、何をしているのですか?」
そこへやって来たのは、うへぇ……貴方でしたか。僕があからさまに口角を下げるのと同時に、同じ顔のお二人も同じように肩を竦めました。
「うげっ……会長じゃん~」
「ほんと、タイミング最悪~」
皇君。上下ともに学校指定のジャージ姿ではありますが、どうしてこうも眩しく見えるのでしょう? 特に恰好良く着こなしているわけでもないのに……何なんだ、一体。後ろの方で目をハートにさせているチワワ達がきゃあきゃあ騒いでいます。とはいえ、この双子から解放されるのなら今は良しといったところでしょうか?
しかしほっと一息吐いたのも束の間。橘兄弟は再び僕の腕に抱きつき……
「「そんな睨まなくてもいいじゃない。会長だってわかってんでしょ~? 俺らの平凡君に対する気持ちをさ」」
「ひっ!?」
僕の頬にそれぞれ自分の頬を擦りつけてきやがったのです! ひいいっ!? す、すべすべしてるううっ!?
髭とか皆無なんでしょうか。もっちりと、それでいてさらりとした触感……本当に男か!?
あまりにも自分と異なる肌質に驚きを隠せませんが、やはり野郎は野郎です。ゾワリと下から上に、鳥肌が立ちました。ひいいいっ!
「じゃ、バイバ~イ」
「今度は会長がいない時にね~。坂本君と紫瞠君もまったね~」
固まる僕をよそに、二人は息ぴったりに動きを合わせて僕から離れると、皇君とは反対の方向に向かって手を振りながら去って行きました。皇君もそうですが、生徒会に関わると碌な目に遭いませんね……気持ち悪っ。
「今度の新刊は双子モノで決定ですね……ふへへ」
こっちはこっちで何かほざいてやがるし。
ブツブツと粟立つ腕を摩りながら、ぐったりと項垂れる僕。長い長い溜め息を吐くと、頭上がふっと暗くなりました。僕より背の高い人間は今この場に一人しかいません。
「な、何です?」
「いや、衣服から出ているお前の肌が、羽を毟られ皮を剥がされた鳥のようになっているものですからつい……気持ち悪いな、と」
こんの野郎~!! 冷やかに見下ろしながらなんつーこと言いやがるっ! バ会長め!!
奥歯をギリギリと噛みしめながらコヤツを睨み上げます。するとそこへ……
「皇君、皇君」
紫瞠君が皇君の腕の裾をクイクイしながら声を掛けました。だ、駄目ですよっ。紫瞠君っ。こんなヤリチン男に声なんか掛けちゃっ。純粋な紫瞠君が穢れてしまいますっ。それにチワワが紫瞠君に目をつけちゃいますよっ。
あわあわと僕は一人で慌てていると、紫瞠君は皇君に柔らかい笑みを浮かべました。
「皇君もお昼のお弁当、僕達と一緒に食べない? ヘーボン君達とね、食べようと思っててお弁当を多めに作って来たの。おにぎりの数は足りると思うし、おかずもたくさん作ったから」
魔王を昼食に誘ったあ!? 駄目だって! こんな野郎にそんな微笑み向けながら自分の手料理を誘っちゃ駄目だってば!
何度か紫瞠君お手製のお弁当を味見させてもらったことがありましたが、絶品です。結婚するなら奥さんにしたいナンバー1! と言っても過言でないくらいのメシウマ少年なのです。しかもお洒落な洋風料理だけじゃなくて、煮物とか煮付けとか、実家のお母さんを彷彿とさせる様な茶色い系のおかずがとってもとっても美味しいのです。何で女の子じゃないんだろ……おーあーるぜっと。
そんなオカン紫瞠君からの嬉しいお誘いを、この男はあろうことか。あろうことかああ!
「いいえ、結構です。大会の運営もありますし、ゆっくりと昼食を摂る時間がありませんので……失礼」
紫瞠君に掴まれていた裾を引くように解くと、自身がやって来た方向へ踵を返し去っていったのです。あんにゃろ~! 紫瞠君の誘いをあっさりと断りやがって~!
僕はすぐさま、紫瞠君のフォローに回りました。
「気にしないで下さいね、紫瞠君。あの野郎は普段から猫を何百匹と被っているんです。その分、僕が紫瞠君の結んでくれたおむすびを頂きますよ!」
絶対に美味しいに違いないおむすび! 早くもお腹が鳴りそうです。
しかし紫瞠君は、皇君に断られたことを気にしていないのか、僕を見つめて……
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「ん?」
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「へ?」
にこっと笑いました。可愛いっ……けど、へ? 誰に?
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