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俺達の学園生活はこれからだ! みたいな王道最終回…です?
最終話
しおりを挟む春休みに入る前のテスト週間、体調不良でしばらく学校を休んでいた紫瞠君が久々に元気な姿を見せてくれました。
僕よりも少しだけ目線が上になった状態で。
「久しぶりだね、ヘーボン君! 今日ね、マドレーヌを持ってきたんだ。テストって頭を使うでしょ? 甘いもの欲しいかな~って昨日焼いてきたの。ヘーボン君はプレーンとチョコ、どっちが好き?」
「紫瞠君。すごく背が伸びましたね」
「あ、そうなの! 十センチと少しくらいかな? 一気にぐんっと伸びたんだ。成長痛が辛くて学校を休んじゃってたけど、もう大丈夫だから」
天使がっ……! 僕の弟がっ……!
僕よりも背が低く、小柄だった紫瞠君が成長してくれたのは我が弟のように素直に嬉しいです。ええ。
でも、僕より高くなっちゃった……!!
「ヘーボン君? 大丈夫? もしかして具合、悪い?」
心配してくれるその声がもうっ……前より少しだけ低くなってるっ! 声変わりしちゃってる~!! めっちゃいい声だけど!
元よりスラリとした体型はそのまま、でもヒョロヒョロと背だけが伸びたわけじゃなく。細いのに男ながらスタイルが良く、それでいて紫瞠君の柔らかい顔立ちにマッチしているのです。元々は可愛らしかったお顔立ちが、成長したことでどえりゃー美人さんになっちゃってます。イケメンなどという単語では括っちゃいけないような存在になっちゃってます。そりゃ朝からチワワ達が騒ぐわけだわ。
しかし、それよりも何よりも。紫瞠君に目がいってしまうのが……
「大丈夫?」
「ひゃっ!?」
頭を抱える僕の顔を上げさせて、紫瞠君が僕のおでこに自分のおでこをぴったりとくっつけてきました。美人がっ! 美人がものすごく近いっ!!
そしてその瞳の色がっ……!
「熱とかないみたいだけど……ヘーボン君?」
「し、紫瞠君っ……瞳のお色っ……!」
僕がそう言うと、紫瞠君がはっとした様子で僕からおでこを離して少しだけ照れたように告白してくれました。
「実はこっちがほんとの色なんだ……変、かな?」
紫の瞳。初めて目にするその珍しいお色は、紫瞠君の顔立ちにぴったりでした。黒よりも断然、こちらの方がいいです。まるでボサボサ鳥の巣頭が実は金髪サラサラヘアだった! みたいな後出し感はありましたが。
「宝石みたいです。すごく綺麗です。似合ってます」
「えへへ。ありがとう」
くしゃりと破顔する紫瞠君。以前の愛らしさはそのままでした。良かった。大人の階段をスキップで登っちゃっても、お兄ちゃんちょっと安心しましたよ。
僕がじーんと感動していると、紫瞠君の背後から忍びのように気配を消した奴が現れました。
「紫瞠君。あまり彼に近づくと、脳内を侵されますよ。気を付けてください」
「へ? 皇君?」
紫瞠君の手を取るや否や、僕からべりっと引き剥がし自身へと引き寄せやがります。コラー! 僕の天使に触るんじゃありません!
しかしその構図に歓喜したのが……
「きゃー!! スパダリ生徒会長攻めと無自覚美人転校生受けキター!!」
「坂本君、抑えて抑えて」
「腐男子と七海君っ」
もうここの二人はもはやコンビですね。二人一緒でないと現れない何かなのではないかとさえ思えてきます。そして彼らに続くように僕の両脇から。
「「かーいちょ~! あんまり俺らをイラつかせると、どうなっちゃっても知らないよ~?」」
「橘兄弟!?」
どこから湧いて出てきやがったのか、橘会計&書記が僕をサンドイッチするかのように腕を組んでピッタリとくっついてきやがりました。だからお前ら、僕に頬擦りすんじゃねー! てめーらの推しは紫瞠君だろうが!
「ちょっと皇会長。柳を離してくんない? ちょいプッツンしそうだから」
「片岡君!」
もうやったれ! いてもうたれ! いつの間にか髪の色を金から黒にしている片岡君ですが、そのイケメン振りは衰えてない! チワワたちが嘆いていても僕が許す!
「大丈夫だよ、皇君。僕は旦那さま一筋だから!」
ちょっとよくわからないぞ、紫瞠君! 今は君が貞操の危機だからね! その魔王から離れてー!
「はあ……もう色々とごちゃごちゃうるせえな……」
ボソッと皇君が何かをボヤいたかと思ったら、紫瞠君をポイッと開放し橘兄弟に挟まれ宇宙人状態の僕の前へ……なんだ、なんだ。皆して僕を囲んで背の高い自慢か!
「お前は本当に……至って普通の顔をしていますね」
「は……はあ?」
「悪くないです。良くはないだけで」
「んだと、この野郎!」
そう言うと、魔王はフッと悔しいくらいの格好いい笑みを浮かべて僕の顎を持ち上げながら……
「ああ……本当にイイな、その憎らしいツラ」
「は……んんう!?」
当たり前のように僕の唇を食むように奪いやがって……!
「きゃー!! やっぱり平凡受け萌える! 尊い~!! トゥルーエンド後はハーレム展開希望します!」
ほら! 腐男子がわけわからんことを言って狂喜乱舞してんでしょうよ! なんでこんなクラスのど真ん中で!? ましてや天使紫瞠君の前でなして!?
「やっぱり仲良いね~、二人とも」
片岡君と橘兄弟に抱き着かれながらほのぼのとしている紫瞠君、違うから! 仲良くないから! ニコニコうんうんしながら納得しないでね!
「ほら、若。そろそろ離してあげないと。また、平凡君が狙われちゃうから」
「ああ、それは困りますね。生徒の風紀が乱れます」
乱してんのは誰のせいだ、誰の!
唇を離され、精一杯の睨みを利かせながらバ会長を見上げてみせると、僕の耳元へ唇を寄せて僕だけに聞こえるように信じられない台詞を吐いたのです。
「そんな目で見るなよ。犯したくなるだろ」
この男の思考回路はどうなってんでしょう? もはや脳神経外科へ受診させた方がいいのではないでしょうか?
「ああ、ほら。休憩時間も終わるし、平凡君と坂本君、それから橘ズは教室へ戻らないと……ほら、坂本君。涎は拭ってね」
「今度の新刊は王道に戻って平凡君総受けで決まりですね……ふへへ」
「「柳~! 後でお昼は俺たちと食べようね! 絶対、絶対だかんね~!」」
「おい、お前ら。ここがなんも言わねえクラスだからってここぞとばかりに柳の匂いを嗅いでんじゃねえよ。俺だってハスハスしてえわ」
「ごめんね、三人とも。でも僕、旦那さまがいるから。これ以上は浮気になっちゃうから」
もうなんなの、このホモォ学校は……。僕の常識が常識でないってどういうことなの。
平凡な僕にはお似合いの、平凡な人生、平凡な学生生活を望んでたはずなのに。
それもこれもは……
「君とルームメイトになってしまったせいですよ。このバ会長」
「残念でしたね。あと一年、お前は私と同室ですよ」
死ねばいいのに。
僕が平凡な生活に戻るのは、まだまだ先になりそうです。
END.
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