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第一章
聖なる力の秘密 10
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「裏切り……」
「世の中には酷いやつがいるもんだ」
まるで他人事のように言ってのけるシン。昨日、うわ言を言っていた時との様子とは打って変わってけろりとしている彼に、レイヴンはきょとんとする。
シンはレイヴンへと首を傾け、ニヤリと笑った。
「その割には恨んでなさそうって?」
「そ、そんなことは……」
「まあ、恨んだところで仕方がないからなぁ」
そしてシンは、極々普通に言ったのだ。
「オレを刺したやつはもう、この世にいない。殺したから」
「殺し、た……」
レイヴンは僅かに目を見開き、シンの言葉を繰り返したものの、それ以上は何を言うでもなく、ただ静かに目を伏せる。
「オレが恐い?」
調子を崩さず、シンがレイヴンへと尋ねた。
レイヴンは彼に視線を合わせると、緩やかに首を振った。
「いいえ」
そして両手を前に揃えると、シンに向かって旋毛を見せた。
「ありがとうございます。質問に答えてくださって……」
正直に言えば、目の前の男が誰かを殺したという事実に、驚きはあった。決して許容できる行いでもない。だが、シンは余所者だ。どういった経緯で人を殺していたとしても、レイヴンには関係がなく、また知ったところで何もできない。
それ以前に、すでに大きな罪を犯したことのあるレイヴンに、彼を咎める権利はないのだ。
ようやく疑問が解明された。この事実に、彼は質問に答えてくれたシンへ素直に礼を言った。
そんなレイヴンを見て、シンはポカンと口を開けた後、くしゃりと破顔した。
「最高だな。レイヴンは」
そう言うと、シンはゴロンとレイヴンの方へ身体を傾ける。
「今のは質問のうちに入らなかったから、近日中にスリーサイズを測って、答える準備をしておくよ」
「? はあ……」
なぜシンはスリーサイズに拘るのだろう? いや、そもそもレイヴンにはスリーサイズというものがわからない。返事をしようにも、気の抜けた相槌しか出なかった。
対するシンは楽しいのか、笑いながら自身の口元へ人差し指を立てた。
「嘘。代わりに、レイヴンの願いを一つだけ聞くよ」
「願い?」
「そう。願い事」
唐突な発言をするシンに、レイヴンは視線を泳がせる。
「で、でも……」
「今すぐ言えって話じゃない。また何か考えておいてくれ。なければそれでいいし」
眠いのか、シンは大きな欠伸をした。またも交換条件を出されてはと、やや警戒をしたレイヴンだが、このまま入眠するならばと、シンに向かって口を開いた。
「じゃあ……一つだけ、約束してください」
「ん?」
「この村は昔から閉鎖的で……あ、村はこの山の下にあるんですけれど。その村は、あんまり外の人と関わりたくない人が多くて。だからその…………その…………シンさんの今の怪我が治ったら…………」
その願いは最後まで口にできなかった。
出ていってほしい。それだけのことが、レイヴンにはとても言い難いものだったのだ。
「世の中には酷いやつがいるもんだ」
まるで他人事のように言ってのけるシン。昨日、うわ言を言っていた時との様子とは打って変わってけろりとしている彼に、レイヴンはきょとんとする。
シンはレイヴンへと首を傾け、ニヤリと笑った。
「その割には恨んでなさそうって?」
「そ、そんなことは……」
「まあ、恨んだところで仕方がないからなぁ」
そしてシンは、極々普通に言ったのだ。
「オレを刺したやつはもう、この世にいない。殺したから」
「殺し、た……」
レイヴンは僅かに目を見開き、シンの言葉を繰り返したものの、それ以上は何を言うでもなく、ただ静かに目を伏せる。
「オレが恐い?」
調子を崩さず、シンがレイヴンへと尋ねた。
レイヴンは彼に視線を合わせると、緩やかに首を振った。
「いいえ」
そして両手を前に揃えると、シンに向かって旋毛を見せた。
「ありがとうございます。質問に答えてくださって……」
正直に言えば、目の前の男が誰かを殺したという事実に、驚きはあった。決して許容できる行いでもない。だが、シンは余所者だ。どういった経緯で人を殺していたとしても、レイヴンには関係がなく、また知ったところで何もできない。
それ以前に、すでに大きな罪を犯したことのあるレイヴンに、彼を咎める権利はないのだ。
ようやく疑問が解明された。この事実に、彼は質問に答えてくれたシンへ素直に礼を言った。
そんなレイヴンを見て、シンはポカンと口を開けた後、くしゃりと破顔した。
「最高だな。レイヴンは」
そう言うと、シンはゴロンとレイヴンの方へ身体を傾ける。
「今のは質問のうちに入らなかったから、近日中にスリーサイズを測って、答える準備をしておくよ」
「? はあ……」
なぜシンはスリーサイズに拘るのだろう? いや、そもそもレイヴンにはスリーサイズというものがわからない。返事をしようにも、気の抜けた相槌しか出なかった。
対するシンは楽しいのか、笑いながら自身の口元へ人差し指を立てた。
「嘘。代わりに、レイヴンの願いを一つだけ聞くよ」
「願い?」
「そう。願い事」
唐突な発言をするシンに、レイヴンは視線を泳がせる。
「で、でも……」
「今すぐ言えって話じゃない。また何か考えておいてくれ。なければそれでいいし」
眠いのか、シンは大きな欠伸をした。またも交換条件を出されてはと、やや警戒をしたレイヴンだが、このまま入眠するならばと、シンに向かって口を開いた。
「じゃあ……一つだけ、約束してください」
「ん?」
「この村は昔から閉鎖的で……あ、村はこの山の下にあるんですけれど。その村は、あんまり外の人と関わりたくない人が多くて。だからその…………その…………シンさんの今の怪我が治ったら…………」
その願いは最後まで口にできなかった。
出ていってほしい。それだけのことが、レイヴンにはとても言い難いものだったのだ。
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