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第二章
ようこそ、異世界へ 4
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その言葉に、レイヴンの顔が一瞬で強張った。すぐさまシンから視線を逸らし、彼は次第に肩を震わせた。わざとそうしているわけではない。人としての本能が、彼をそうさせていた。
シンには逆らえない。レイヴンに対する態度も、紡ぐ言葉も、向ける表情も、初めて会った頃から変わりないというのに、この魔界に来てからシンとレイヴンの間には、はっきりとした線引きができてしまった。
主従関係だ。
今、レイヴンのすべてはこのシンの手中にある。行動も、意志も、感情も、かつては村の為にあった自身のすべてが、シンのもとに渡ってしまったのだ。
切り落とした髪の扱いすら、自分で決めることができない。改めて告げられた事実から、レイヴンは自分の立場をよく思い知ったのだ。
「そう怯えるなよ。お前が囚われていたあの村の連中と違って、オレはすこぶる優しいぞ?」
「……っ、それ……は……」
囁かれるそれは確かに優しいのに、残酷だった。言葉に詰まるレイヴンに、シンは嘯いてみせる。
「何て言ったっけ? あの村の名前……外道村? いや、鬼畜村だったか?」
レイヴンに対する村人の制裁は凄惨を極めていた。その仕打ちだけに焦点を当てれば、シンの言うように揶揄されても致し方ないことではある。しかしレイヴンは、シンに向かって心苦しそうな顔を向けた。
「あの村を……わ……悪く言うのは……やめて、ください……。そもそも、村の人達をそうさせてしまった元凶は、僕にあるんですから……」
どこまでも自分が悪いと、レイヴンは思っている。実際に非道な仕打ちをレイヴンへ行っていた村人よりも、そうなるきっかけを作ってしまった自分に非があると言いたいのだ。
レイヴンのその台詞にシンは「うーん」と唸った後、記憶を辿るようにトントンと自身の蟀谷を指で叩いた。
「あー……なるほど。性善説というやつか」
「え……?」
「お前の信仰心はわかったよ。だが今回に限り、オレはそれを否定する」
二人のやり取りに足下でオロオロとするゴブリンの頭を、シンはポンポンとあやすように撫でた後、シンはレイヴンの顎を持ち上げながら滔々と語り出した。
「いいか、レイヴン。お前はあの村で、オレに死なないよう願ったな? 代わりにお前は自分のすべてをオレに捧げた。その時点で、お前が背負うその罪も今はオレのものとなったんだ。つまり、お前が過去の罪の責任を感じる必要はなくなったということだ。今後はあの鬼畜村に対して、お前が心苦しくすることもない。だがもしもこれ以上、お前が犯したという罪に苛まれるというのなら、それはただのマゾヒストというやつだよ」
「違いますっ……!」
レイヴンはシンの手を振り払うように、即座に首を振った。
「実際に村を焼いたのは……人を殺したのは僕です……! それはシンさんのものになったからといって消せる事実ではありません! それに……過去にはあなたの仲間だって、僕は……」
「シーッ」
すると、捲し立てるレイヴンの唇を閉じるように、シンは人差し指を添えた。
そして普段と変わらぬ柔らかな微笑みを浮かべながら、シンは恐ろしいことを口にする。
「そんなに甚振られたいのなら、今後はあの連中に代わってオレが与えてやる。この可愛い口がもう止めてと歪み、懇願し、泣き叫ぶまでな」
シンには逆らえない。レイヴンに対する態度も、紡ぐ言葉も、向ける表情も、初めて会った頃から変わりないというのに、この魔界に来てからシンとレイヴンの間には、はっきりとした線引きができてしまった。
主従関係だ。
今、レイヴンのすべてはこのシンの手中にある。行動も、意志も、感情も、かつては村の為にあった自身のすべてが、シンのもとに渡ってしまったのだ。
切り落とした髪の扱いすら、自分で決めることができない。改めて告げられた事実から、レイヴンは自分の立場をよく思い知ったのだ。
「そう怯えるなよ。お前が囚われていたあの村の連中と違って、オレはすこぶる優しいぞ?」
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「あの村を……わ……悪く言うのは……やめて、ください……。そもそも、村の人達をそうさせてしまった元凶は、僕にあるんですから……」
どこまでも自分が悪いと、レイヴンは思っている。実際に非道な仕打ちをレイヴンへ行っていた村人よりも、そうなるきっかけを作ってしまった自分に非があると言いたいのだ。
レイヴンのその台詞にシンは「うーん」と唸った後、記憶を辿るようにトントンと自身の蟀谷を指で叩いた。
「あー……なるほど。性善説というやつか」
「え……?」
「お前の信仰心はわかったよ。だが今回に限り、オレはそれを否定する」
二人のやり取りに足下でオロオロとするゴブリンの頭を、シンはポンポンとあやすように撫でた後、シンはレイヴンの顎を持ち上げながら滔々と語り出した。
「いいか、レイヴン。お前はあの村で、オレに死なないよう願ったな? 代わりにお前は自分のすべてをオレに捧げた。その時点で、お前が背負うその罪も今はオレのものとなったんだ。つまり、お前が過去の罪の責任を感じる必要はなくなったということだ。今後はあの鬼畜村に対して、お前が心苦しくすることもない。だがもしもこれ以上、お前が犯したという罪に苛まれるというのなら、それはただのマゾヒストというやつだよ」
「違いますっ……!」
レイヴンはシンの手を振り払うように、即座に首を振った。
「実際に村を焼いたのは……人を殺したのは僕です……! それはシンさんのものになったからといって消せる事実ではありません! それに……過去にはあなたの仲間だって、僕は……」
「シーッ」
すると、捲し立てるレイヴンの唇を閉じるように、シンは人差し指を添えた。
そして普段と変わらぬ柔らかな微笑みを浮かべながら、シンは恐ろしいことを口にする。
「そんなに甚振られたいのなら、今後はあの連中に代わってオレが与えてやる。この可愛い口がもう止めてと歪み、懇願し、泣き叫ぶまでな」
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