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新婚生活スタートです
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In.生徒会室。
校長室と同等の内装と装飾、そしてゆったりとした空間となる室内には、ただいま僕を含めてたった三人しかいない。
僕はポニーテールの女生徒、牧村廻からトートバックを受け取り、その中から魔法瓶、そして三段重ねの大きな弁当箱を取り出し、生徒会が普段休憩に使っているテーブルの上に、重なったそれを一つずつ並べる。気になる中身は、おかず用、おにぎり用、そしてもう一つはデザート用に分けてある。量はおおよそ三人分だ。
金髪の男子生徒こと片岡葉月は、戸棚からマグカップを三つ取り出し、魔法瓶の中身を均等に注ぎ入れる。温かな湯気を出すそれは、緑茶ではなく烏龍茶だ。
そうして、それぞれ用意が整い、三人がソファに腰を下ろすと、静かに手を重ねた。
「「「いただきます」」」
これがいつもの昼食風景。
「……だから今もコンタクトをつけてるの?」
「私たち以外誰もいないのに?」
「うん」
おにぎりをもぐもぐと咀嚼しながら、向かいに座る二人に、僕は首を縦に振る。ちなみに、僕から見て右にいるのが葉月。そして左が廻だ。
二人とは中学のときからの友達で、僕がいうのもなんだけど、すごく仲がいいんだよ。
そして、僕の本当の瞳の色を知っている数少ない人物でもある。
ここ、生徒会室はお昼の時だけ使わせてもらえる三人だけの場所だ。会長が葉月のファンらしくって、お昼は静かにできる場所が欲しいって言ったら、ここの鍵を渡してくれたらしい。そのおかげで、昼食中は僕ら以外誰も来ないから、いつも僕は眼鏡とコンタクトレンズを外してお弁当を食べるんだけど。
結婚してから発生してしまった問題に頭を悩ませ中のため、三人だけの今もコンタクト&眼鏡の装備のままだった。
「はぁ」
一週間前。
僕と旦那さま……海さんは、夫婦としてこれから先を共に過ごしていくことが決まった。互いに初対面だといっても過言ではない関係なのに、海さんは僕を受け入れた。そして僕は海さんと一緒に暮らしていきたいと思った。
でも。
ついつい盗み聞きしてしまった、海さんが僕を気に入っているところ。
それは海さんにはない、ごくごく平凡である純日本人の目立たない僕。
海さんに隠してる、嘘の僕だった。
「……」
結局、あの日に言えなかったんだ。今まで、厭われ続けたこの紫の目のことを。
僕の気に入っているところが平凡な僕であるなら、この奇抜な目の色を海さんが知ったら、どんな思いをするんだろうって考えたら言えなかった。
がっかりさせたくないなぁ……って。
けど、さっきの雑誌によると夫婦の間に秘密は禁物らしいんだよね。はて、どうするべきか。
「バレるのは時間の問題だと思うよ。もしも柳の目を知って別れるようなら、それまでの男だってことだし。告白するなら早い方がいいと思う」
まるで起き抜けのようにぼーっとした表情でそう言うのは葉月だった。
普段からこんな感じで抑揚のないしゃべり方をする彼だけど、数日前にこの結婚のことを話したら、目の色を変えて僕に迫ったんだ。また、それは葉月だけじゃなく、その事実を知った廻や他の友人たちも同じだった。
皆こぞって反対したよ。好きでもない相手と、ましてや男と結婚なんてふざけてる。こんな話があるかって、怒ったんだ。
その状況と言えば……。
『どういうこと!? 結婚って何!?』
『相手、誰?』
『まだ適齢期前だよ!?』
『殺す殺す殺す殺す』
『男ぉぉ!!? え、なに、な、な、何言ってんの……? 柳ちゃん? 何言ってるの? もっかい言って! ワンモアプリーズ!!』
『どんな人?』
『掘られた!? 掘られちゃったの!?』
『ぶっ殺すぶっ殺すぶっ殺す』
『はぁ!? 掘られてない!!? ばっかじゃないの! 柳を前にして勃起しねぇなんて……そいつEDなんじゃない!?』
『え。お茶を出してくれた? ピザも御馳走してもらった……よかったね。服をコーディネイトしてくれた? ほっぺが気持ちいい……って、何それ。初夜は結局魅色ちゃんと一緒に寝た……誰だよ、そいつ?』
『操は……無事……なの?』
『エッチは十八歳になってからぁ!?』
こんな感じで、なんとか説明を終えると、納得はいかないけど様子を見るって形で、しぶしぶだけど落ち着いてくれたんだ。
校長室と同等の内装と装飾、そしてゆったりとした空間となる室内には、ただいま僕を含めてたった三人しかいない。
僕はポニーテールの女生徒、牧村廻からトートバックを受け取り、その中から魔法瓶、そして三段重ねの大きな弁当箱を取り出し、生徒会が普段休憩に使っているテーブルの上に、重なったそれを一つずつ並べる。気になる中身は、おかず用、おにぎり用、そしてもう一つはデザート用に分けてある。量はおおよそ三人分だ。
金髪の男子生徒こと片岡葉月は、戸棚からマグカップを三つ取り出し、魔法瓶の中身を均等に注ぎ入れる。温かな湯気を出すそれは、緑茶ではなく烏龍茶だ。
そうして、それぞれ用意が整い、三人がソファに腰を下ろすと、静かに手を重ねた。
「「「いただきます」」」
これがいつもの昼食風景。
「……だから今もコンタクトをつけてるの?」
「私たち以外誰もいないのに?」
「うん」
おにぎりをもぐもぐと咀嚼しながら、向かいに座る二人に、僕は首を縦に振る。ちなみに、僕から見て右にいるのが葉月。そして左が廻だ。
二人とは中学のときからの友達で、僕がいうのもなんだけど、すごく仲がいいんだよ。
そして、僕の本当の瞳の色を知っている数少ない人物でもある。
ここ、生徒会室はお昼の時だけ使わせてもらえる三人だけの場所だ。会長が葉月のファンらしくって、お昼は静かにできる場所が欲しいって言ったら、ここの鍵を渡してくれたらしい。そのおかげで、昼食中は僕ら以外誰も来ないから、いつも僕は眼鏡とコンタクトレンズを外してお弁当を食べるんだけど。
結婚してから発生してしまった問題に頭を悩ませ中のため、三人だけの今もコンタクト&眼鏡の装備のままだった。
「はぁ」
一週間前。
僕と旦那さま……海さんは、夫婦としてこれから先を共に過ごしていくことが決まった。互いに初対面だといっても過言ではない関係なのに、海さんは僕を受け入れた。そして僕は海さんと一緒に暮らしていきたいと思った。
でも。
ついつい盗み聞きしてしまった、海さんが僕を気に入っているところ。
それは海さんにはない、ごくごく平凡である純日本人の目立たない僕。
海さんに隠してる、嘘の僕だった。
「……」
結局、あの日に言えなかったんだ。今まで、厭われ続けたこの紫の目のことを。
僕の気に入っているところが平凡な僕であるなら、この奇抜な目の色を海さんが知ったら、どんな思いをするんだろうって考えたら言えなかった。
がっかりさせたくないなぁ……って。
けど、さっきの雑誌によると夫婦の間に秘密は禁物らしいんだよね。はて、どうするべきか。
「バレるのは時間の問題だと思うよ。もしも柳の目を知って別れるようなら、それまでの男だってことだし。告白するなら早い方がいいと思う」
まるで起き抜けのようにぼーっとした表情でそう言うのは葉月だった。
普段からこんな感じで抑揚のないしゃべり方をする彼だけど、数日前にこの結婚のことを話したら、目の色を変えて僕に迫ったんだ。また、それは葉月だけじゃなく、その事実を知った廻や他の友人たちも同じだった。
皆こぞって反対したよ。好きでもない相手と、ましてや男と結婚なんてふざけてる。こんな話があるかって、怒ったんだ。
その状況と言えば……。
『どういうこと!? 結婚って何!?』
『相手、誰?』
『まだ適齢期前だよ!?』
『殺す殺す殺す殺す』
『男ぉぉ!!? え、なに、な、な、何言ってんの……? 柳ちゃん? 何言ってるの? もっかい言って! ワンモアプリーズ!!』
『どんな人?』
『掘られた!? 掘られちゃったの!?』
『ぶっ殺すぶっ殺すぶっ殺す』
『はぁ!? 掘られてない!!? ばっかじゃないの! 柳を前にして勃起しねぇなんて……そいつEDなんじゃない!?』
『え。お茶を出してくれた? ピザも御馳走してもらった……よかったね。服をコーディネイトしてくれた? ほっぺが気持ちいい……って、何それ。初夜は結局魅色ちゃんと一緒に寝た……誰だよ、そいつ?』
『操は……無事……なの?』
『エッチは十八歳になってからぁ!?』
こんな感じで、なんとか説明を終えると、納得はいかないけど様子を見るって形で、しぶしぶだけど落ち着いてくれたんだ。
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