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新婚生活スタートです

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 その話を持ち出すと、葉月は膨れ面になった。僕より大きくて大学生にも間違えられるような身体なのに、なんだか少し可愛く見える。

「ずるいなぁ。真実。これから毎日柳の手料理食べられるんだもん」

「羨ましい」

 そう言いながら、僕の作ったゼリーを食べる二人。

「これからの昼がつまんねー」

「私たち、二人きりになっちゃう」

「二人とも付き合ってることになってるんだから、いいんじゃないかな」

 この学校では、二人の関係はそういうことになってるんだし。でも、本当のところは……。

「廻に男を寄せ付けないための嘘なんか、この際どうだっていいよ。俺にとっては柳が一番なんだから」

「柳さえいてくれれば、葉月は割とどうでもいい。そもそも、彼氏役は柳がよかった」

「しょうがないだろ。廻の両親が、俺が適任だとか言って勝手に決めたんだから」

 ……というわけなんだ。

 二人がこういう設定だし、学校側にとっても、僕がいなくなって特に問題はないと思うんだよね。

 もちろん、二人の気持ちはわかるし、その想いはすごく嬉しいよ。僕だって二人のことが大好きなんだから。

 でも……。

「僕が転校しても、またすぐに会えるよ。門限は決められちゃったけど、『ロワゾ』へ行くことは止められなかったし。今までみたいに通うから」

 だから寂しくないんだよ。

 そう言いながら、僕はすっかりむくれている二人を宥めた。

 いつも以上に静かになった。けれど、決して僕を無視せず話を聞いてくれる。

 そして、しばらくすると。葉月が烏龍茶を飲みながら、怒り口調で尋ねてきた。

「でもさ、本当によかったの?」

「転校の事?」

「違う。真城を出た事のほう」

「あ。そっちか」

 よかったの? って、聞かれても、それこそ龍一様が決めた事だから、僕にはどうにもできないんだけど。それを抜きにしたって、僕は……

「うん」

 そもそも「奉公」先だしね。いいも悪いもないよ。

 そりゃあ、真城の中はとても居心地がよかったよ。お兄さんたちも、よくしてくれて、毎日が楽しかった。

 悪いことなんて、何もないんだって思えるくらい。

 でも。やっぱり、どうあがいたって僕は真城の家族にはなれない。

 いつかは、出ていかなければならない場所だったんだから。

 それが、少し早かっただけのことで、問題はない。

「これでよかったんだよ」

 葉月に向かってにっこり笑う。すると、彼は頬を赤くして目を見開いた。

 どうしたの? って尋ねると、僕からぷいって目を逸らすんだ。

「柳はずるいよ……」

 ずるい、って何が?

 そう聞こうとすると、廻が葉月に向かって静かに諭す。

「言ってもムダ。柳は鈍感」

 えっ、ちょっとそれはひどいよ。

 僕のショックが顔に出ていたのか、二人は互いに顔を見合わせ、そして同時にため息を吐いた。それも盛大に。

 うん。なんか……ごめんね?
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