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新婚生活スタートです
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……ん?
なんか、いつの間にかだけど。校門の方がざわざわと騒がしいような気がする。
葉月と廻が下校したのかな?
「ね。柳くんの好きな人って……誰?」
元気を取り戻しつつある宮本さんが、涙をハンカチで拭いながら聞いてきた。
「ほら、さっき言ってたじゃない。この気持ちがわかるって。いるんでしょ?」
「あ、ああ。うん……でも」
「教えてくれたら、このまま素直に引ける気がする」
振られたからって、好きなことをやめられる訳じゃないもん、と。
宮本さんはちょっとだけ意地悪な顔をする。でも可愛い。
……う~ん。
実はその人なんだけど、誰のことを言ったのか、自分でもよくわかんないんだよね。なんか、ポロポロっと口から出ちゃってたし。
はて。誰だったか……。
「この学校の子……じゃ、なさそうだよね。牧村さんでもなさそうだし」
「う、ん……それがちょっと、教えられなくて……」
名前も顔も出てこなくてですね。
「教えられない相手ってこと?」
「いや、それが……」
「公にはできない関係なものですから」
「そうそう……へっ?」
いきなり。
頭上からすごく低くて綺麗な声が落ちてきた。
と、同時に。
背後からふわっとぎゅっと、僕は大きな何かに身体を抱き締められた。
「きゃっ!」
宮本さんが小さく悲鳴をあげて、一瞬で顔を真っ赤っかに染め上げる。
その視線の先は僕の背後。
そしてその正体は!
「か、海さん!!?」
見上げれば、綺麗な真紅の髪を持った僕の旦那さまが微笑を浮かべながらそこにいた。
あの。背後からのがっちりホールドは背中がとても温かいんですけれども! どうしてここに!?
「学校からなかなか出て来ないものだから、待ちきれなくなってしまいました」
「なんで!? なんでここに?」
こんなとこにいるの!?
確か今朝は一緒に家を出て、僕は学校へ。海さんはお仕事へ出掛けたはずなのに。
もう終わったんですか!?
「そんなに驚かなくてもいいでしょう。夫なのですから妻を迎えに行くことくらい珍しくもない」
海さんは心外だとばかりに息をついた。
いやいやいや!
ここに来る予定なんてなかったでしょ。絶対!
というかあなたですか!
さっきから校内がざわざわしてる原因は!
「夫……夫って……え。柳くん……それって……え……?」
慌てふためく僕の前では、宮本さんが今度は青ざめた表情で金魚みたいに口をパクパクさせてる。
ちょっと海さん!
公にはできない関係だって言ったのはどこの誰ですか!
彼女、めちゃくちゃ混乱してますよ!?
「じゃ、じゃあ、もしかして……このカッコいい人が……柳くんの……」
「違うんだ、宮本さん! 確かにこの赤い人は僕の旦那さまだけど、僕の好きな人はこの人じゃなくてっ……あ」
たらりと、いや~な汗が僕の額から垂れ落ちた。
その三秒後。
ギギギ……と、ゆ~っくり後ろを振り返れば……。
「なるほど。これは帰ってからよく話し合う必要があるようですね」
こわーっ!!!
表情は笑ったままだけど、目が凍ってるよ海さん~!?
「違うんです、海さん! 多分好きの種類を履き違えてらっしゃるから言い訳させてください! 僕は……」
「理由はどうあれ、勢いで間違えてしまうほど、私以上に想う相手が他にいることは確かなようですね」
これまでに見たことがないほど、に~っこり微笑む海さん。
うんうん。可愛いね。やっぱり笑顔は男女関係なく可愛いし、生きていく上では必要だと思うよ!
でも、できれば心から笑って欲しいかな!
冷や汗をだらだらと流す僕に、海さんはスッと瞳を閉じて頷いた。
「いいでしょう。帰ってからたっぷりと言い訳を聞かせてもらいましょうか?」
そして僕の耳元に唇を寄せて、一層低く囁いた。
「その身体で」
「はい!?」
「かっ……!?」
何言ってるのー!?
ちょっと宮本さんが卒倒しかけてるんだけど!
身体で言い訳ってどうやんのさー!?
「では、失礼します」
「ばっ、ばいばいっ!」
半ば、攫われるような形で海さんに引きずられる僕。
そして。
真っ青で意識がどこかにいっちゃったっぽい宮本さんをその場に置いて、僕らは校舎を後にした。
なんか、いつの間にかだけど。校門の方がざわざわと騒がしいような気がする。
葉月と廻が下校したのかな?
「ね。柳くんの好きな人って……誰?」
元気を取り戻しつつある宮本さんが、涙をハンカチで拭いながら聞いてきた。
「ほら、さっき言ってたじゃない。この気持ちがわかるって。いるんでしょ?」
「あ、ああ。うん……でも」
「教えてくれたら、このまま素直に引ける気がする」
振られたからって、好きなことをやめられる訳じゃないもん、と。
宮本さんはちょっとだけ意地悪な顔をする。でも可愛い。
……う~ん。
実はその人なんだけど、誰のことを言ったのか、自分でもよくわかんないんだよね。なんか、ポロポロっと口から出ちゃってたし。
はて。誰だったか……。
「この学校の子……じゃ、なさそうだよね。牧村さんでもなさそうだし」
「う、ん……それがちょっと、教えられなくて……」
名前も顔も出てこなくてですね。
「教えられない相手ってこと?」
「いや、それが……」
「公にはできない関係なものですから」
「そうそう……へっ?」
いきなり。
頭上からすごく低くて綺麗な声が落ちてきた。
と、同時に。
背後からふわっとぎゅっと、僕は大きな何かに身体を抱き締められた。
「きゃっ!」
宮本さんが小さく悲鳴をあげて、一瞬で顔を真っ赤っかに染め上げる。
その視線の先は僕の背後。
そしてその正体は!
「か、海さん!!?」
見上げれば、綺麗な真紅の髪を持った僕の旦那さまが微笑を浮かべながらそこにいた。
あの。背後からのがっちりホールドは背中がとても温かいんですけれども! どうしてここに!?
「学校からなかなか出て来ないものだから、待ちきれなくなってしまいました」
「なんで!? なんでここに?」
こんなとこにいるの!?
確か今朝は一緒に家を出て、僕は学校へ。海さんはお仕事へ出掛けたはずなのに。
もう終わったんですか!?
「そんなに驚かなくてもいいでしょう。夫なのですから妻を迎えに行くことくらい珍しくもない」
海さんは心外だとばかりに息をついた。
いやいやいや!
ここに来る予定なんてなかったでしょ。絶対!
というかあなたですか!
さっきから校内がざわざわしてる原因は!
「夫……夫って……え。柳くん……それって……え……?」
慌てふためく僕の前では、宮本さんが今度は青ざめた表情で金魚みたいに口をパクパクさせてる。
ちょっと海さん!
公にはできない関係だって言ったのはどこの誰ですか!
彼女、めちゃくちゃ混乱してますよ!?
「じゃ、じゃあ、もしかして……このカッコいい人が……柳くんの……」
「違うんだ、宮本さん! 確かにこの赤い人は僕の旦那さまだけど、僕の好きな人はこの人じゃなくてっ……あ」
たらりと、いや~な汗が僕の額から垂れ落ちた。
その三秒後。
ギギギ……と、ゆ~っくり後ろを振り返れば……。
「なるほど。これは帰ってからよく話し合う必要があるようですね」
こわーっ!!!
表情は笑ったままだけど、目が凍ってるよ海さん~!?
「違うんです、海さん! 多分好きの種類を履き違えてらっしゃるから言い訳させてください! 僕は……」
「理由はどうあれ、勢いで間違えてしまうほど、私以上に想う相手が他にいることは確かなようですね」
これまでに見たことがないほど、に~っこり微笑む海さん。
うんうん。可愛いね。やっぱり笑顔は男女関係なく可愛いし、生きていく上では必要だと思うよ!
でも、できれば心から笑って欲しいかな!
冷や汗をだらだらと流す僕に、海さんはスッと瞳を閉じて頷いた。
「いいでしょう。帰ってからたっぷりと言い訳を聞かせてもらいましょうか?」
そして僕の耳元に唇を寄せて、一層低く囁いた。
「その身体で」
「はい!?」
「かっ……!?」
何言ってるのー!?
ちょっと宮本さんが卒倒しかけてるんだけど!
身体で言い訳ってどうやんのさー!?
「では、失礼します」
「ばっ、ばいばいっ!」
半ば、攫われるような形で海さんに引きずられる僕。
そして。
真っ青で意識がどこかにいっちゃったっぽい宮本さんをその場に置いて、僕らは校舎を後にした。
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