53 / 241
新婚生活スタートです
17
しおりを挟む
それまでの事を忘れてすっかり上機嫌になった僕は、海さんの隣に座ると、自分用のオレンジジュースをグラスに注いだ。
海さんは何も言わないけど、龍一様と同様、お酒を飲みながらおつまみを食べている。嬉しいね!
「しっかしあれだな。毎朝毎朝、せっせと弁当を作っていたお前があの学校からいなくなるんだから、今度からはあの嬢ちゃんが小僧のために弁当を作んのか」
ジュースをちびちび飲んでると、金平を箸で摘まんだ龍一様がしみじみと呟く。
「廻は料理が苦手だから、多分購買です」
「めぐる?」
「あ。海さんは知らないよね。僕の友達の女の子の事です。一緒の学校の」
って、そうそう!
「廻が言ってた! 海さんを見かけたことがあるって」
お昼に言われた事を思い出した。
廻は海さんを見たことがあるかもなんだった。
もしかしたら、海さんも廻を見たことがあるかもしれない!
さっそく、彼女の特徴を知らせようと思ったんだけど。
「私を? 人違いなのでは?」
「そうかもしれないけど。でも、海さんは髪の色が特徴的だから……」
「どこかで会ったとしても、場所が限られるでしょう。おそらく、人違いですよ」
「けど……」
「例えあったとしても、残念ながら私はその子を知りません」
……まだ廻の特徴すら言ってないんだけど。
でもこれ以上は食い下がれないと雰囲気で悟った僕は問うのをやめた。
けど、なんで海さんはこうも断言できるんだろ?
あれかな? 女子高生に会う機会がないのかな?
いやでも、当時は中学生……いや、高校生? 中学……ん~どっちでもいいや。
二年も前だしね。
それにないって言われちゃしょうがない。
僕は手元のオレンジジュースに再び口付けた。
「それよりも、柳」
なに? 海さん。
「これは買ってきたのですか?」
海さんが唐突に翳した一冊の雑誌。
『妻必読。夫を落とす48の方法。子供は読んじゃダメ♪ ここから先はオトナのじ・か・ん編 part.1』
「ぶほっ!!?」
口に含んだオレンジジュースを盛大に吹き出した。
そのうえ……
「えほっ、げほげほっ……けほんっ!」
き、気管にっ……オレンジジュースがっ……!?
く、苦しいっ!!
「えほっ、げほっ、ぐはっ」
「新妻必見。手練手管はこれで完璧。倦怠期なんてもうバイバイ。旦那の性欲もこれでアップ。二人の夜もフィ……」
「もぐどぐっ! げほっ……黙読っ、ぷりーずっ! げほんっ!」
「……」
なに!?
なんの嫌がらせ!?
僕を殺す気!? 殺す気なの!?
というかそれっ、真城から届いた僕の荷物の中に入っていた雑誌だよね? しかもエッチだったから封印したやつ!
丸まった僕の背を、海さんは擦りながら涼しい顔で雑誌をパラパラと流し見る。向かいでは龍一様が「ああ~」とどこか納得がいくような口ぶりで頭を振った。
「奴らがお前の荷物に入れてたモンか。面白そうな顔で何を入れてんのかと思えば……くだらねぇ」
やっぱこれ、真城のお兄さんたちが入れたんだ。
ちなみに、海さんが今持っている物は、今朝持っていった雑誌とは別の物です……だってエッチだったから。
「読了したんですか?」
涼しげな海さんの問いに、僕はぶんぶんと首を横に振った。
なんだっけ? 雁か首とか、だるま返しとか……あと宝船とか書いてあったけど。よくわかんない単語ばかり書いてあったから、読むの途中で止めちゃったんだよね……それにエッチだったし。
しかし喉がっ……涙がっ……!
ぜーはーを繰り返すこと数十回。
「ふぃ~……」
なんとか生還。
海さんから無言でお水を手渡される。
ありがとう、旦那さま。
僕はお礼を言いながらそれを受け取った。
ゆっくりと口付ける。
「で、どれを試してみますか?」
「?」
「せっかく頂いたんです。どれか一つくらいは目星も付けてあるのでしょう?」
サッと翳されたのは見開きカラー、一ページ。
そこにあったのは素っ裸の男の人と素っ裸の女の人がふにゃらら~してるシーン。
「げふぅっ!!」
なっ、なっ、なっ……なんてページを見せつけるの!?
そ、そ、そんなっ……お、お、女の人がっ……!
お、お、お、男の人のあ、あれっ、あれをっ……!
く、く、口っ……口でっ……!!
「えほっ、えほっ……!」
「まぁ、これとは言いませんが。他にも……ああ、これなど」
パラリ。
「……っ……!!? 無理ムリむり! そんなの無理! 一人でエッチもできないのにそんなの絶対ムリだから!!」
「……」
「……」
「……はぅあ!!?」
バッと口を押さえる僕。
ニヤリと笑う大人二人。
こわっ!!
「そ~か、そ~か。そりゃあ俺様知らんかったなぁ~。いや、知らんかったわ~」
「そうですか。ではここは妻のために夫が一肌脱ぎましょうか」
「だめ! 今のナシ! 一人でできます! エッチくらいできるもん! 大丈夫だ! 問題ないっ!」
精一杯のグッドポーズ。
ホントはよくわかんないんだけど!
海さんは何も言わないけど、龍一様と同様、お酒を飲みながらおつまみを食べている。嬉しいね!
「しっかしあれだな。毎朝毎朝、せっせと弁当を作っていたお前があの学校からいなくなるんだから、今度からはあの嬢ちゃんが小僧のために弁当を作んのか」
ジュースをちびちび飲んでると、金平を箸で摘まんだ龍一様がしみじみと呟く。
「廻は料理が苦手だから、多分購買です」
「めぐる?」
「あ。海さんは知らないよね。僕の友達の女の子の事です。一緒の学校の」
って、そうそう!
「廻が言ってた! 海さんを見かけたことがあるって」
お昼に言われた事を思い出した。
廻は海さんを見たことがあるかもなんだった。
もしかしたら、海さんも廻を見たことがあるかもしれない!
さっそく、彼女の特徴を知らせようと思ったんだけど。
「私を? 人違いなのでは?」
「そうかもしれないけど。でも、海さんは髪の色が特徴的だから……」
「どこかで会ったとしても、場所が限られるでしょう。おそらく、人違いですよ」
「けど……」
「例えあったとしても、残念ながら私はその子を知りません」
……まだ廻の特徴すら言ってないんだけど。
でもこれ以上は食い下がれないと雰囲気で悟った僕は問うのをやめた。
けど、なんで海さんはこうも断言できるんだろ?
あれかな? 女子高生に会う機会がないのかな?
いやでも、当時は中学生……いや、高校生? 中学……ん~どっちでもいいや。
二年も前だしね。
それにないって言われちゃしょうがない。
僕は手元のオレンジジュースに再び口付けた。
「それよりも、柳」
なに? 海さん。
「これは買ってきたのですか?」
海さんが唐突に翳した一冊の雑誌。
『妻必読。夫を落とす48の方法。子供は読んじゃダメ♪ ここから先はオトナのじ・か・ん編 part.1』
「ぶほっ!!?」
口に含んだオレンジジュースを盛大に吹き出した。
そのうえ……
「えほっ、げほげほっ……けほんっ!」
き、気管にっ……オレンジジュースがっ……!?
く、苦しいっ!!
「えほっ、げほっ、ぐはっ」
「新妻必見。手練手管はこれで完璧。倦怠期なんてもうバイバイ。旦那の性欲もこれでアップ。二人の夜もフィ……」
「もぐどぐっ! げほっ……黙読っ、ぷりーずっ! げほんっ!」
「……」
なに!?
なんの嫌がらせ!?
僕を殺す気!? 殺す気なの!?
というかそれっ、真城から届いた僕の荷物の中に入っていた雑誌だよね? しかもエッチだったから封印したやつ!
丸まった僕の背を、海さんは擦りながら涼しい顔で雑誌をパラパラと流し見る。向かいでは龍一様が「ああ~」とどこか納得がいくような口ぶりで頭を振った。
「奴らがお前の荷物に入れてたモンか。面白そうな顔で何を入れてんのかと思えば……くだらねぇ」
やっぱこれ、真城のお兄さんたちが入れたんだ。
ちなみに、海さんが今持っている物は、今朝持っていった雑誌とは別の物です……だってエッチだったから。
「読了したんですか?」
涼しげな海さんの問いに、僕はぶんぶんと首を横に振った。
なんだっけ? 雁か首とか、だるま返しとか……あと宝船とか書いてあったけど。よくわかんない単語ばかり書いてあったから、読むの途中で止めちゃったんだよね……それにエッチだったし。
しかし喉がっ……涙がっ……!
ぜーはーを繰り返すこと数十回。
「ふぃ~……」
なんとか生還。
海さんから無言でお水を手渡される。
ありがとう、旦那さま。
僕はお礼を言いながらそれを受け取った。
ゆっくりと口付ける。
「で、どれを試してみますか?」
「?」
「せっかく頂いたんです。どれか一つくらいは目星も付けてあるのでしょう?」
サッと翳されたのは見開きカラー、一ページ。
そこにあったのは素っ裸の男の人と素っ裸の女の人がふにゃらら~してるシーン。
「げふぅっ!!」
なっ、なっ、なっ……なんてページを見せつけるの!?
そ、そ、そんなっ……お、お、女の人がっ……!
お、お、お、男の人のあ、あれっ、あれをっ……!
く、く、口っ……口でっ……!!
「えほっ、えほっ……!」
「まぁ、これとは言いませんが。他にも……ああ、これなど」
パラリ。
「……っ……!!? 無理ムリむり! そんなの無理! 一人でエッチもできないのにそんなの絶対ムリだから!!」
「……」
「……」
「……はぅあ!!?」
バッと口を押さえる僕。
ニヤリと笑う大人二人。
こわっ!!
「そ~か、そ~か。そりゃあ俺様知らんかったなぁ~。いや、知らんかったわ~」
「そうですか。ではここは妻のために夫が一肌脱ぎましょうか」
「だめ! 今のナシ! 一人でできます! エッチくらいできるもん! 大丈夫だ! 問題ないっ!」
精一杯のグッドポーズ。
ホントはよくわかんないんだけど!
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
562
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる