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初☆デート!
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――――…
「お、お待たせしました。チョコレートパフェです」
館外にあるカフェテリアに、僕たちはいた。
ようやく泣き止んだ僕を落ちつかせるためか、海さんがここへ連れてきてくれて、好きな物を食べていいと店内にある豊富なメニューから選ばせてくれた。
中でも美味しそうにお薦めされていたのがチョコレートのパフェだったから、僕はそれを選んだ。
店員のお姉さんが、若干緊張気味に持ってきてくれたパフェを、僕は長いスプーンで掬って口に運ぶ。ほろ苦さと蕩けるような甘さが口の中に広がると、それまでのムシャクシャが自然と和らいでいくのがわかった。
うん。すごくおい……
「美味しいですか?」
「……」
「美味しい? 柳」
海さんは優しげに聞いてくる。
僕は黙って首を縦に振った。
「もぐもぐ」
冷たいアイスを口いっぱいに頬張ってみせる。口いっぱいに。
「柳。少し食べますか?」
「もぐ……」
海さんが頼んだのはチェリーパイ。僕の好物の一つ。
コクコクと頷く。
「口を開けなさい」
「もぐ。……んく」
アイスを飲み込んでから、僕は口を開けた。そこへ、海さんが一口サイズに切り分けたパイを口の中へ運んでくれる。甘酸っぱいチェリーが、まだなお口の中に残るカカオと苦く混じり合った。
好きなものと好きなものが合わさっているのに、なんだか変な味がする。好きなのに。あんまり好きじゃない味。
好きなのに。
「美味しいですか?」
海さんはやっぱり優しげに聞いてきた。
コクリ。
僕は手前にあるパフェのクリームを一口大サイズに掬って頬張った。その際、口に運ぶには多すぎたのか、頬張りきれなかったクリームが口端に付いてしまった。
あ、って気づいたけど、それは同時に目の前の海さんもそうだった。
「ああ、唇にクリームがついていますよ」
そう言って、僕の顎を片手で支えて、もう片手で取った紙ナプキンで僕の口端を……
「……っ!」
拭こうとしたんだろうけど、それを僕が拒んで、首を振って海さんの手を振り解いた。
「……」
「……」
手元にある紙ナプキンで、自分の口端を拭う。
もぐもぐ。
やっぱり、パフェ美味しい。
「もぐもぐ」
「りゅ……」
ヴ―…… ヴ―……
突然のマナー音。僕のかなって確認する前に、海さんが「チッ」と小さく舌打ちをした。
そしてスッと取り出したのは、僕が知っている海さんのスマホとは別のスマホだった。あれ?
疑問が顔に出てたのか、海さんが「業務用です」と教えてくれた。二台持ちだったんだ。ということは、お仕事の電話なのかな?
すると案の定。
「すみません。少しだけ失礼します」
そう短く言って、席を外した。
僕一人だけがその場に残って、パフェを頬張る。
チェリーパイは、僕が食べた一口分だけ減って残っていた。
「……海さんのばか」
「お、お待たせしました。チョコレートパフェです」
館外にあるカフェテリアに、僕たちはいた。
ようやく泣き止んだ僕を落ちつかせるためか、海さんがここへ連れてきてくれて、好きな物を食べていいと店内にある豊富なメニューから選ばせてくれた。
中でも美味しそうにお薦めされていたのがチョコレートのパフェだったから、僕はそれを選んだ。
店員のお姉さんが、若干緊張気味に持ってきてくれたパフェを、僕は長いスプーンで掬って口に運ぶ。ほろ苦さと蕩けるような甘さが口の中に広がると、それまでのムシャクシャが自然と和らいでいくのがわかった。
うん。すごくおい……
「美味しいですか?」
「……」
「美味しい? 柳」
海さんは優しげに聞いてくる。
僕は黙って首を縦に振った。
「もぐもぐ」
冷たいアイスを口いっぱいに頬張ってみせる。口いっぱいに。
「柳。少し食べますか?」
「もぐ……」
海さんが頼んだのはチェリーパイ。僕の好物の一つ。
コクコクと頷く。
「口を開けなさい」
「もぐ。……んく」
アイスを飲み込んでから、僕は口を開けた。そこへ、海さんが一口サイズに切り分けたパイを口の中へ運んでくれる。甘酸っぱいチェリーが、まだなお口の中に残るカカオと苦く混じり合った。
好きなものと好きなものが合わさっているのに、なんだか変な味がする。好きなのに。あんまり好きじゃない味。
好きなのに。
「美味しいですか?」
海さんはやっぱり優しげに聞いてきた。
コクリ。
僕は手前にあるパフェのクリームを一口大サイズに掬って頬張った。その際、口に運ぶには多すぎたのか、頬張りきれなかったクリームが口端に付いてしまった。
あ、って気づいたけど、それは同時に目の前の海さんもそうだった。
「ああ、唇にクリームがついていますよ」
そう言って、僕の顎を片手で支えて、もう片手で取った紙ナプキンで僕の口端を……
「……っ!」
拭こうとしたんだろうけど、それを僕が拒んで、首を振って海さんの手を振り解いた。
「……」
「……」
手元にある紙ナプキンで、自分の口端を拭う。
もぐもぐ。
やっぱり、パフェ美味しい。
「もぐもぐ」
「りゅ……」
ヴ―…… ヴ―……
突然のマナー音。僕のかなって確認する前に、海さんが「チッ」と小さく舌打ちをした。
そしてスッと取り出したのは、僕が知っている海さんのスマホとは別のスマホだった。あれ?
疑問が顔に出てたのか、海さんが「業務用です」と教えてくれた。二台持ちだったんだ。ということは、お仕事の電話なのかな?
すると案の定。
「すみません。少しだけ失礼します」
そう短く言って、席を外した。
僕一人だけがその場に残って、パフェを頬張る。
チェリーパイは、僕が食べた一口分だけ減って残っていた。
「……海さんのばか」
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