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初☆デート!
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「ふぇっ……ひっく、……うえっ……うえぇぇっ……!」
「りゅ……柳? まさか、怪我でも!? どこが痛いんですか?」
海さんが焦った様子で声を掛ける。でも、僕はそれに答えず、海さんを確かめるように強く抱きついた。
海さんだ。海さんだ!
海さんがいる。海さんがここにいる! 戻ってきてくれた! 戻ってきてくれた!
なんでだろう? 涙が止まらない。
海さんがいる。海さんがいる!
「海っさ……ひっぅ……こわ……こわかっ……か、海さんっ……海さんっ……ごめっ……ごめんなさいっ……」
「柳……」
「もう……もう、怒らないからっ……我慢するっ、から……ひっく……、……だから海さんっ……おねが……捨てないで……!」
最初は些細な喧嘩から。ううん。喧嘩じゃなくて、一方的に僕が怒っていただけのことだけど。
そこから、僕が怒って、海さんが用事で離れて、少しの時間離れ離れになって。
海さんが喧嘩に巻きこまれているなんて噂を聞いて。そこから急に不安になって。悪い悪い方に考えがいってしまって。
そうしたら……!
もう、もう会えなくなっちゃうんじゃないかって……。いなくなっちゃうんじゃないかって……。
また……また! 捨てられるんじゃないかって……!
「そんなことはしない!」
「……っ!? ……海、さん?」
海さんが怒号を上げた。びっくりして海さんの顔を見上げると……怒ってた。
海さんが、すごく怒ってた。怒った顔をしていた。
なんで? なんで海さんが怒っているの? 僕……怒らせた?
自然と涙が引っこむ。でも、しゃっくりだけが残って、変な声が上がってしまう。
抑えようと必死になって俯くけど、海さんがそれを許さなかった。海さんは、僕の顎に手を宛がって、自身の方へと上げさせた。
海さんの黒い瞳の中に、僕の不細工な顔が映った。
「かいっ……ひっぅ……かいさっ……」
「誰が捨てるって? あんなに約束したのに。まだ不安なのか?」
「ち、ちが……でも……海さん……が……」
「オレは一生を約束した。それなのに、お前はまだオレを信用してくれないのか?」
「そ、そうじゃな……」
海さんが怒ってる。すごく、すごく怒ってる。
あんなに優しい海さんを、僕は怒らせた。……なのに。
海さんの怒っている理由が、とても優しい。
驚き、戸惑いを隠せないでいる僕。けれど海さんは、僕から目を逸らさずに、必死にお願いをした。
「柳。頼むから……。オレを信じて欲しい。オレを見て欲しい。オレに頼って欲しい……あの男なんかじゃなく、オレを……」
「……? あの男って……だれ……んんっ!」
海さんが僕にちゅーをする。
わぁっとした声が周りで上がったけれど、そんなのは気にならなかった。
だって、今は海さんが目の前にいるから。
「……んっ、……んぁっ……かい……っ……ふ、んぅ……」
角度を変えて、舌を絡ませて、何度も何度もちゅーをする。
腰ががくがくする。力が入らない。頭がぼーっとする。
そうしているのは海さんだけ。こんなことをするのは海さんしかいない。
そう、そうだ。海さんだ。海さんがいる。
海さんしかいない。海さんしか感じられない。海さんしか……
「んっ……はぁっ……はぁ……海……さ……」
ようやくちゅーから解放されると、海さんは僕の頬を撫でながら囁いた。
「柳。オレを……信じて?」
「はぁ……はぁ……っ……」
僕は頷く。
そしてもう一度抱きついた。今度は……安心して。
ぎゅ、って。
「……ってぇ……んだよ。ホモかよ」
「チッ、気持ち悪ぃ……」
そういえば。この人たち、いたんだっけ? というか、なんで頭と顔を抑えているの? 鼻血も出しているみたいだし……どうしたの? 何があったの?
って、ああ! 僕っ……僕っ、往来で海さんとっ……べべべっ、べろちゅーなんてしてっ……う、う、うっ……
うきゃー!!
「か、海さっ……わぶっ!?」
抱きついた状態で、海さんが僕の顔を自分の胸に抑えこむ。あれ? まっくらで何も見えないよ? あれ? どったの? 海さん? なぜにそんなに強く押し付けるの? 呼吸ががががっ……!
海さんの胸の内でわたわたと慌てる僕に、海さんは小さく一言、「大丈夫」と言った。
そして……
「さっさと失せろ……殺したくなる」
と、誰に向かって言ったのか。一度だって聞いたこともないような恐い声を出したんだ。
「りゅ……柳? まさか、怪我でも!? どこが痛いんですか?」
海さんが焦った様子で声を掛ける。でも、僕はそれに答えず、海さんを確かめるように強く抱きついた。
海さんだ。海さんだ!
海さんがいる。海さんがここにいる! 戻ってきてくれた! 戻ってきてくれた!
なんでだろう? 涙が止まらない。
海さんがいる。海さんがいる!
「海っさ……ひっぅ……こわ……こわかっ……か、海さんっ……海さんっ……ごめっ……ごめんなさいっ……」
「柳……」
「もう……もう、怒らないからっ……我慢するっ、から……ひっく……、……だから海さんっ……おねが……捨てないで……!」
最初は些細な喧嘩から。ううん。喧嘩じゃなくて、一方的に僕が怒っていただけのことだけど。
そこから、僕が怒って、海さんが用事で離れて、少しの時間離れ離れになって。
海さんが喧嘩に巻きこまれているなんて噂を聞いて。そこから急に不安になって。悪い悪い方に考えがいってしまって。
そうしたら……!
もう、もう会えなくなっちゃうんじゃないかって……。いなくなっちゃうんじゃないかって……。
また……また! 捨てられるんじゃないかって……!
「そんなことはしない!」
「……っ!? ……海、さん?」
海さんが怒号を上げた。びっくりして海さんの顔を見上げると……怒ってた。
海さんが、すごく怒ってた。怒った顔をしていた。
なんで? なんで海さんが怒っているの? 僕……怒らせた?
自然と涙が引っこむ。でも、しゃっくりだけが残って、変な声が上がってしまう。
抑えようと必死になって俯くけど、海さんがそれを許さなかった。海さんは、僕の顎に手を宛がって、自身の方へと上げさせた。
海さんの黒い瞳の中に、僕の不細工な顔が映った。
「かいっ……ひっぅ……かいさっ……」
「誰が捨てるって? あんなに約束したのに。まだ不安なのか?」
「ち、ちが……でも……海さん……が……」
「オレは一生を約束した。それなのに、お前はまだオレを信用してくれないのか?」
「そ、そうじゃな……」
海さんが怒ってる。すごく、すごく怒ってる。
あんなに優しい海さんを、僕は怒らせた。……なのに。
海さんの怒っている理由が、とても優しい。
驚き、戸惑いを隠せないでいる僕。けれど海さんは、僕から目を逸らさずに、必死にお願いをした。
「柳。頼むから……。オレを信じて欲しい。オレを見て欲しい。オレに頼って欲しい……あの男なんかじゃなく、オレを……」
「……? あの男って……だれ……んんっ!」
海さんが僕にちゅーをする。
わぁっとした声が周りで上がったけれど、そんなのは気にならなかった。
だって、今は海さんが目の前にいるから。
「……んっ、……んぁっ……かい……っ……ふ、んぅ……」
角度を変えて、舌を絡ませて、何度も何度もちゅーをする。
腰ががくがくする。力が入らない。頭がぼーっとする。
そうしているのは海さんだけ。こんなことをするのは海さんしかいない。
そう、そうだ。海さんだ。海さんがいる。
海さんしかいない。海さんしか感じられない。海さんしか……
「んっ……はぁっ……はぁ……海……さ……」
ようやくちゅーから解放されると、海さんは僕の頬を撫でながら囁いた。
「柳。オレを……信じて?」
「はぁ……はぁ……っ……」
僕は頷く。
そしてもう一度抱きついた。今度は……安心して。
ぎゅ、って。
「……ってぇ……んだよ。ホモかよ」
「チッ、気持ち悪ぃ……」
そういえば。この人たち、いたんだっけ? というか、なんで頭と顔を抑えているの? 鼻血も出しているみたいだし……どうしたの? 何があったの?
って、ああ! 僕っ……僕っ、往来で海さんとっ……べべべっ、べろちゅーなんてしてっ……う、う、うっ……
うきゃー!!
「か、海さっ……わぶっ!?」
抱きついた状態で、海さんが僕の顔を自分の胸に抑えこむ。あれ? まっくらで何も見えないよ? あれ? どったの? 海さん? なぜにそんなに強く押し付けるの? 呼吸ががががっ……!
海さんの胸の内でわたわたと慌てる僕に、海さんは小さく一言、「大丈夫」と言った。
そして……
「さっさと失せろ……殺したくなる」
と、誰に向かって言ったのか。一度だって聞いたこともないような恐い声を出したんだ。
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