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平穏はどこでしょう
振り返ると
しおりを挟む結婚式当日は、当然の様に陛下は自分の寝室には戻らないと仰いましたので、私は王妃専用の寝室で優雅にゆっくりと眠りました。
と、言いますか。
結婚当日から、約五年に渡り、陛下は後宮の私の部屋に来ることは有りませんでした。
一年目は何を思ったのか、公務にも欠席される始末です。私が困るとでも思ったのでしょうけど、私は前陛下より政務や外交に関しての勉強は実地で学んでいるのです。陛下はご存知無かったかもしれませんが、前陛下の体調が悪い時などは、代行だってやっていたのです。
宰相様から陛下が悔しがっていると聞いた時は、何を今更と思って居ましたが、何方かがこのままだと王弟殿下に王位を譲る話が出ていると聞き、慌てて政務に戻ってきました。馬鹿じゃないですか?自分の仕事を放り出して国王のままでいられると思ったのでしょうか?
二年目は私を外交のみに専念させる事で、国内に留まらせない作戦に出たようです。ですから、外交も何もかも教え込まれてますけど。浅慮な陛下のおかげとでもいいますか、国外に知り合いが沢山出来ましたし、繋がりも得られました。
その時に知ったのですが、アシュリーとケイリオスが隣国の貴族でした。貴族と言っても二男や三男だからと簡単に言っていましたが、隣国で護衛騎士をしているのはそうそう無いと思うのですが…。
外交へと送り出しても害どころか利益を生んできた為、王妃の名声は上がりましたが国王は何をしている?と今度は平民から声が上がっていると宰相様からの報告で、また国内へと戻されました。
私が外交で他国へ行っている間、愛妾のキディング男爵令嬢を連れ歩いているので、慈善活動で何かをやらかしたようですね。侍女達から沢山報告を頂いてますよ。孤児院で子供の手を振り払ったから始まり、街中での無意味な施し、何処へ届けられたか分からないチャリティーの売り上げ金額。
王家の財政は元に戻りつつあったというのに、結局は又赤字で公爵家からの借財を増やす始末だったとか。
三年目・四年目はその慈善事業でおった負債を取り戻す為に、国内外でも馬車馬のように働かされましたわね。愛妾は無駄遣いをしているのに。アシュリーとケイリオスが呆れて、この国を見限って隣国へときませんか?と言いたくなったのも頷けます。
でも、直ぐにいなくなったら逃げたと思われるじゃないですか?それは嫌なんですよね。
思いの他、私は負けず嫌いだったようです。そんなこんなで、五年も王妃としてやって居ましたが陛下のやり方が浅はか過ぎて少し退屈を覚えています。
「そういえば、五年も経ちますのにありませんわね…」
「何がですか?」
「愛妾が懐妊したとの知らせが」
ポツリと零した私の言葉に、侍女のミルフィーとサラも『そういえば…』と気付きました。あまりの忙しさに忘れて居ましたが、陛下は三十三歳です。五年は確実にべったりと一緒にいるのですから、そういう話になってもいい頃なのですけど?と首を傾げていると、難しい顔をした女官長のジュリアーナが実は…と声を潜めて話しかけてきました。
「陛下には秘密にされていますが、避妊薬を使われていたそうです」
「え?世継を産んでこそなのではないの?」
「…その、大変言い難いのですが、体形が変わるのが嫌だと言ってるらしく」
「体形?」
五年前から変わりもしない真っ直ぐな体形ですが、何を変わるのを危惧しているのやら…。
(でも、そうですわよね)
「陛下ですものね、確かに、御子ができたら大変かもね」
「ですけど、最近は陛下が期待しているようなそぶりを見せているらしいです」
「え?」
「愛妾付きの侍女からの情報ですが、王妃様の鼻をあかすには子供しかないか…。と漏らしていたそうです」
「勝手に、敵意を持たれても困るのですけど」
そうですよねーと苦笑を浮かべる女官長の言葉を、ただ流していいのか少し気になりました。コレは早急にラフィット兄様かお父様へと連絡を取ったほうが良いかも知れない案件です。
「王妃様、陛下が今宵夜会を開催すると」
「馬鹿なの?そんな時間と暇が何処にあるのか問い質すべきかしら?」
「王妃様…」
夜会には招待する貴族の都合や、夜会で出す料理にドレス、楽団などなど準備と言うものが必要なんですよ。と、何度言っても聞きもしない。
「宰相様に連絡を、それと公爵家にもお願い」
「畏まりました」
何か仕掛けてくるだろうと、予感がします。面倒で嫌な予感ですが、コレをそのままにしていると分が悪いのは私のような気がするので、早々に各場所へ話をつけるために侍女を向かわせたのでした。
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