最恐の精霊姫様は婚活を希望します

梛桜

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自称勇者様

罪状確認

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 屋敷に戻り早速向かったのは地下にある、牢屋のような場所です。鉄格子とかではなく、普通の壁に扉です。なので、ようなもの。周りは石壁ですけど、床には藁とかありますし、毛布も薄いのですがちゃんとありますし、食事だってだします。悪魔や鬼ではありませんからね。

「ですが、フローライト家に敵対するなら話は別ですわ」

 にっこりと微笑みを浮かべて、愛用の杖を左の掌にポンポンとやっているのは、辺境侯爵家夫人のお母様です。辺境侯爵家夫人だからといって、お母様を只の貴族だと侮ってはいけません。お母様は元冒険者なのです。

 しかも

「な、何で、爆炎の魔術師ルシアンが此処にいて、さらに爆華の女王と呼ばれたティファーナ様まで!?」
「あ、あっちは狂戦士と呼ばれたフォルスだと!?」

 二つ名ってどうしてこう、厨二っぽいんでしょうね?というか、二つ名を持つほど王都のギルドで貢献しているなんて聞いてませんでしたわよ?兄様達に、お母様。
 ずっと狂ったように泣いていた魔術師はお母様が強制睡眠術を施して落とし、脳筋戦士はフォルス兄様が物理的に落としたそうです。喚いているのは回復術師と自称勇者の二人です。

(それにしても…)

 先程は気にしていませんでしたが、回復術師のお姉さんは『それって本当に防具になってるの?』と言いたくなるような魅惑的なお姿をしています。オフショルダーで肩は剥き出し、ささやかな胸は守れているようですが臍だしでは虫に食われませんか?足もニーハイソックスならまぁ多少は擦り傷から守れましょう。でも、冒険するんですよね?マントみたいなローブも鑑定したけど只の布でした。
 回復術師さんの外見は茶髪のドリルですよ、腰までの長さがありそのままにしていたから、今は乱れてます。チラチラとクレイオ兄様に視線を向けてくねくねしてますが、じっと出来ないんですか?

「ルシアン、まだ何かあるのか?」
「奥様やセラフィナ姫には、ここの部屋は寒いのではありませんか?」
「あ~うん、もういいかな?君達、フローライト領について下調べもしてないの~?そんなのでよく護衛の任務所か、冒険者って名乗れるよね~」
「…っ」
「それとね~、君たちのパーティって一人足りないよね?王都を出た時はちゃんと五人いたよね?もう一人は何処?」

 ルシアン兄様の質問に、部屋の温度が下がりました。笑っているはずなのに、目が笑っていませんわよルシアン兄様。
 面倒なので一応の地下牢と呼んでいるこの場所には、お母様、フォルス兄様、ルシアン兄様、そして私とクレイオ兄様の五人が面会をしています。お父様とリアン兄様は領主としての仕事がありますので、後ほど来られるそうです。

(ルシアン兄様が言いたいのは、オニキスが連れていた銀狼の少女の事ですよね)

 オニキスの話では、飛んで向かっていた場所に偶然居合わせた自称勇者パーティがいて、混乱した自称勇者パーティはあろう事か、銀狼の少女を囮にして逃げ出したのだとか。
 戦闘する気が無かったオニキスは話を聞こうと人型になりましたが、其れよりもボロボロだった少女が倒れてしまい、精霊仲間に癒して貰おうと、フローライト領の森へとやってきたそうです。

 私のしている精霊の腕輪には、猫精霊の石が四つ嵌めこまれています。軽く触れると、淡く光りだす腕輪をぎゅっと握りこみ、クレイオ兄様の背後から自称勇者パーティを見つめました。

「あ、あいつは、ドラゴンとの戦闘で一人身勝手に逃げ出したんだ!」
「そうよ!私達を囮にして、自分だけ逃げ出したのよ!」
「だから、何処にいようが俺達は知らない。目をかけてやっていたのに、恩知らずな獣人なんて仲間にしなければ良かった!あんなやつ追放だ!」

「つまり、仲間ではないと?」

 誘うようなルシアン兄様の言い方に、自称勇者は引寄せられ、最後の言葉を口にしてしまう。『あの少女は、うちのパーティとは関係ない』と。
 ニヤリとルシアン兄様の口に浮かぶ笑み、フォルス兄様は指をぽきぽきと鳴らし、クレイオ兄様は苦笑を浮かべて私とお母様を後ろへと下がらせました。

「そうか、関係無いか」
「うん、それが聞きたかった」

 フォルス兄様が自称勇者を掴み壁へとぶん投げ、『ぶべはっ』と下っ端の呻き声をあげて惨めに壁と抱き合っています。ルシアン兄様の愛用の杖が淡く光だし、小規模の火炎玉を次々に構成していきます。

「罪状は沢山あるよ~、獣人の少女への虐待・迫害、治療すべき怪我にも関わらず放置し、報酬も自分達で取り上げたらしいね?食事も満足に与えていない。依頼も受けても獣人の少女のみがこなしていたし、自分達でやるのは少女が狩った獲物をボロボロになるまで殲滅したこと」
「一ルースにもならない素材に価値の無い戦果、なのにギルドでは賞金を出させていた。それも、某上級貴族の名前をちらつかせて」

 ルシアン兄様が一個一個罪を読み上げて、その度に回復術師の側で火炎玉を爆発させる。意識を飛ばさないようにと、逃げ出さないように、クレイオ兄様がマントを踏みつけているので、回復術師の顔は蒼白から真っ白です。
 そしてお母様の杖が輝き、回復術師と自称勇者を無数の花弁が取囲み、痛みを感じさせる小さな破裂音がパチンッ、パチン!一定のリズムで聞こえ出す。



 ああ、まるで、兎を甚振る狼の群れですわね。


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