悪役執事

梛桜

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プロローグ

其の三

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 一応王太子からの手紙を執事に見せても良いのか悩みますが、リーユお嬢様からの信頼の厚さは昔からです。リーユお嬢様が五歳の幼少の頃から護衛も兼ね専属として御使えしておりますので、見せて頂けたのだと思います。

ー が。

 リーユお嬢様が困惑するのも当然でした。まさかこんな意味不明の内容とか。この国終わってますね。

『レリーユエル=ヴェルヴェーヌ公爵令嬢殿

 話があるので本日、中庭にて待つ。

            エアレズ=アイクロメア 』

 
 日付は?時間は?コレを書いたのは何時なんですか?書いて其の日に指定をするなら、郵便配達を頼まず城に居る早馬を出しなさい。とまぁ、色々言いたいことは有りますが、これは旦那様に要相談としか言いようがありません。この王太子頭悪くないですか?教育係はとんだ無能ですよね。

「明日の行事に何か御参加を?」
「私は留学生ですもの、免除されているわ。そもそも王太子殿下と何かを一緒になんて、絶対に嫌よ」

 確かに、リーユお嬢様は初めてアイクロメアの王太子殿下にお逢いになった時、とても嫌な思いをされたと旦那様より聞いております。ですから、自分から近付いていくなんて事はありえません。というか、私がさせません。

(封筒の封蝋は確かに王家の物、ですが…。筆跡が表と裏では違うような…?)

 そもそも、リーユお嬢様はここ二週間程、授業の予定が無かったので、学園には登校されておりません。極寒の寒さの中、こんなにも儚げなリーユお嬢様を中庭といえど外に呼び出すなど以ての外です。
 花の月の朔の日だとしても、漸く暖かくなってきたばかり。大切なリーユお嬢様を、幾らアイクロメアの王太子殿下だからといえ気軽に呼び出さないで欲しいものです。

「旦那様に至急ご連絡を」
「お願い、こんな意味不明の手紙にわざわざ手を煩わせてごめんなさいね?ヴァル」

 着替えを済ませて一階の食堂で朝食を取るとリーユお嬢様が仰ったので、私はそこで侍女と交替して、食事の支度をしているルファエルに話しをする為に、一旦食堂へと向かう。本来なら、リーユお嬢様の着替えを扉の外で待ち、いつも付けられている瞳を隠す為のヴェールを付けるのが私の役目だったのに。

(王太子といえど、私の朝の楽しみを奪うなんて…。徹底的にやらせて頂きましょうか)

「旦那様にお手紙ですか?」
「ああ、急ぎ頼みたいんだが、日にちを思うと手紙の主がこの屋敷に乗り込んで来そうなんだ」
「それでしたら、僕の鳥を使いましょう。ゼルクとイスラを屋敷から離れさせるのは得策ではありませんから」
「そうだな、ゼルクも騒いでいないから大丈夫だとは思うが、速い方がいい」
「面倒な相手ですか?」
「ルファエルに頼む程ではない」

(この手紙の王太子殿下が、昔のままなら私だけでも軽く追い払える)

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