悪役執事

梛桜

文字の大きさ
8 / 32
学園編

其の八

しおりを挟む
「レリーユエル=ヴェルヴェーヌ公爵令嬢、聞こえているのか!?」
「はい、聞こえていますわ。婚約を破棄とはどういった意味でしょう?」
「そのままの意味だ!私とローザの仲に嫉妬に狂って悪逆非道を行う等と、お前の態度には愛想が尽きた!私は…っ」
「申し訳ありませんが、それ別の公爵令嬢とお間違えではありませんの?」

 何かを演説する気だった王太子殿下の言葉をぶった切り、リーユお嬢様は首を傾げて王太子殿下に尋ねます。その態度も気に入らないのか、段々怒りで顔が赤くなっていってますよ。
 王太子殿下の取り巻きでもある、背後の生徒達も驚きの表情を浮かべています。

(そもそも、王太子殿下と話が噛み合ってませんね。リーユお嬢様は気付いているようですが…)

「仕方有りませんね、ヴァル」

 リーユお嬢様の溜息混じりの言葉に、私は王太子殿下へと一歩近付き、丁寧なお辞儀をしてにっこりと仕事用の微笑みを浮かべます。隣に居たローザリア令嬢が何やら見ていますが気にしません。

「はい、大変申し上げ難いのですが…。まず、王太子殿下の仰っている婚約破棄ですが、王太子妃候補は一応いらっしゃいますが、まだどなたも決まっておりません。破棄も何も王太子殿下に、婚約者はいらっしゃらないのです」
「は!?」
「え?」

 私の言葉に初めて知ったと驚くこの二人、本当に馬鹿だ。

「レリーユエルお嬢様はライラクス国の公爵令嬢です、アイクロメア王国の王太子殿下のお妃候補は、アイクロメア王国内より正妃となる令嬢を選ぶと、国王陛下がお決めになられた国家規約にございますが?」
「ええ!?」
「王太子殿下、国家規約をご存知ではなかったのですか?」
「兄上は八歳の頃から婚約者だと言ってましたよね?」

 更に驚いている令嬢は兎も角、初耳だったのか背後の取り巻きも驚いています。お前ら確認くらいしっかりとしろよ。と言いたいですが、声に出さないのが執事です。ヴェールで顔は隠れていますが、隣にいる私にもリーユお嬢様の呆れ顔はしっかりと見えています。
 しかも、段々愚か過ぎて笑えてきたようで、必死に笑いを沈めようと努力されていますね。背後からは見えていますが、そんなリーユお嬢様が我々は凄く好きです。

(そんな顔をされていても、大変可愛らしいだけなのですが)

「し、しかしローザはレリーユエルに虐められたと!!」
「私、そのローザリア嬢のお声を存じませんの。お顔は見ることが出来ませんので、執事を伴いましたが…。誰か此方の御令嬢に見覚えは?」
「有りません」
「私も、初めてお見掛けいたします」
「知らない」
「僕は学園に来るのが初めてです!」

 一番多く学園へのお供をしている私がローザリア嬢を見た事が無いのなら、他の執事が知っている事は殆どありません。背後でも呆然とした顔のご子息達は、何を考えているのやら。リーユお嬢様が加護の力を無意味に使わないようにヴェールをしているというのは、アイクロメアの宰相子息なら知ってるでしょう。

(旦那様と手紙のやり取りをしているし、何度か顔も合わせているのに忘れるとか)

 呆れて物も言えないとは、この事ですね。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~

プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。 ※完結済。

悪役令嬢のビフォーアフター

すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。 腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ! とりあえずダイエットしなきゃ! そんな中、 あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・ そんな私に新たに出会いが!! 婚約者さん何気に嫉妬してない?

悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません

由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。 破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。 しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。 外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!? さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、 静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。 「恋をすると破滅する」 そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、 断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。

悪役令嬢の末路

ラプラス
恋愛
政略結婚ではあったけれど、夫を愛していたのは本当。でも、もう疲れてしまった。 だから…いいわよね、あなた?

婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。

風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。 ※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。

幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい

ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26) 鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。 狭い個室にはメイド服がかかっている。 とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。 「この顔……どこか見覚えが……」 幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。 名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー) 没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。 原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。 「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」 幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。 病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。 エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18) 全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。 タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。

悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた

nionea
恋愛
 ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、   死んだ  と、思ったら目が覚めて、  悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。   ぽっちゃり(控えめな表現です)   うっかり (婉曲的な表現です)   マイペース(モノはいいようです)    略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、  「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」  と、落ち込んでばかりもいられない。  今後の人生がかかっている。  果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。  ※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。 ’20.3.17 追記  更新ミスがありました。  3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。  本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。  大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。  ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。

記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?

ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」 バシッ!! わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。 目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの? 最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故? ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない…… 前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた…… 前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。 転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?

処理中です...