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学園編
其の十
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第二王子がそのまま王太子となり、第三王子はいつしか第二王子と呼ばれるようになったが、行方不明になった元王太子の存在は闇に消されているはず。
「そ、それに、その黒縁の眼鏡の人だって!隠しキャラのエルフだし、私の幼馴染になるはずだったケレスだって居るじゃない!赤い髪の男は王太子の護衛騎士だったマーズだし!何でよ!」
「隠しキャラ?ローザリア、いったい何を…?それに、何年も前に行方不明になったアイツの事を、何でローザリアが知っているんだ」
「はっ…、ち、違うの!私、あの誰かに聞いて…、し、信じて!王太子様」
恐ろしい顔をしてリーユお嬢様に何やら叫んでいましたが、もしやこの方が、亡き奥様が遺言に残していた『転生者』というやつでしょうか?いつかリーユ様の害になるからと、旦那様にも厳重にお話されていたのを覚えています。
訝しむ王太子に、男爵令嬢は瞳に一杯涙を溜めて見つめていますが、それ、今更じゃないですか?それで騙されたら本当の馬鹿ですよ?
「そ、そうだな…、昔の話なだけだからな。誰かがローザリアの耳にいれたのだろう」
(正気か、この馬鹿)
「本当の馬鹿が居ましたわ」
「お嬢様、声に出ております」
「あら、いけない」
心の中で考えていた事を、あっさりとリーユお嬢様が口にしましたが、背後から見える口元は楽しそうに笑っています。悪いとは全然思っていませんよね。当たり前です、私だって本気で馬鹿だと思っていますので。
ですが、人への悪口というものはしっかりと聞こえているものです。今まで涙目の上目遣いで、王太子殿下(もう馬鹿でいいですかね?)を見つめていたのに、途端に怖い顔をリーユお嬢様に向けてきました。
「何ですって!?そもそもあんたが、その『魅了の瞳』の力を使って、セレスティン様達を連れ去ったんじゃないの!?何とか言いなさいよ、このアメジストの魔女!」
『アメジストの魔女』
その言葉は、『魅了の瞳』を持つリーユお嬢様を貶す最大の暴言です。ライラクス国では有りませんでしたが、『神の加護』を正しく理解しようとしない、アイクロメア王国ではこういった蔑みが結構あります。
そもそもアイクロメア王国では、『神の加護』ではなく、魔女の呪いと言われているようですが、ようは使いようです。魔力の安定する時期まで、面白半分に使わせないのが一番なのです。
(まぁ、人間あると分かれば使いたくなるものなのでしょうけどね)
「今の御言葉、聞き捨てなりませんね」
「エアヴァル様、前に出るのは俺の仕事です」
この状況を可笑しそうに見ていたゼルクが、私を制して前に出て来ました。私の背後にはリーユお嬢様、右側にはイスラが控えています。ルファの気配は先程から消えていたので、一人で先に動いているのでしょう。
「そ、それに、その黒縁の眼鏡の人だって!隠しキャラのエルフだし、私の幼馴染になるはずだったケレスだって居るじゃない!赤い髪の男は王太子の護衛騎士だったマーズだし!何でよ!」
「隠しキャラ?ローザリア、いったい何を…?それに、何年も前に行方不明になったアイツの事を、何でローザリアが知っているんだ」
「はっ…、ち、違うの!私、あの誰かに聞いて…、し、信じて!王太子様」
恐ろしい顔をしてリーユお嬢様に何やら叫んでいましたが、もしやこの方が、亡き奥様が遺言に残していた『転生者』というやつでしょうか?いつかリーユ様の害になるからと、旦那様にも厳重にお話されていたのを覚えています。
訝しむ王太子に、男爵令嬢は瞳に一杯涙を溜めて見つめていますが、それ、今更じゃないですか?それで騙されたら本当の馬鹿ですよ?
「そ、そうだな…、昔の話なだけだからな。誰かがローザリアの耳にいれたのだろう」
(正気か、この馬鹿)
「本当の馬鹿が居ましたわ」
「お嬢様、声に出ております」
「あら、いけない」
心の中で考えていた事を、あっさりとリーユお嬢様が口にしましたが、背後から見える口元は楽しそうに笑っています。悪いとは全然思っていませんよね。当たり前です、私だって本気で馬鹿だと思っていますので。
ですが、人への悪口というものはしっかりと聞こえているものです。今まで涙目の上目遣いで、王太子殿下(もう馬鹿でいいですかね?)を見つめていたのに、途端に怖い顔をリーユお嬢様に向けてきました。
「何ですって!?そもそもあんたが、その『魅了の瞳』の力を使って、セレスティン様達を連れ去ったんじゃないの!?何とか言いなさいよ、このアメジストの魔女!」
『アメジストの魔女』
その言葉は、『魅了の瞳』を持つリーユお嬢様を貶す最大の暴言です。ライラクス国では有りませんでしたが、『神の加護』を正しく理解しようとしない、アイクロメア王国ではこういった蔑みが結構あります。
そもそもアイクロメア王国では、『神の加護』ではなく、魔女の呪いと言われているようですが、ようは使いようです。魔力の安定する時期まで、面白半分に使わせないのが一番なのです。
(まぁ、人間あると分かれば使いたくなるものなのでしょうけどね)
「今の御言葉、聞き捨てなりませんね」
「エアヴァル様、前に出るのは俺の仕事です」
この状況を可笑しそうに見ていたゼルクが、私を制して前に出て来ました。私の背後にはリーユお嬢様、右側にはイスラが控えています。ルファの気配は先程から消えていたので、一人で先に動いているのでしょう。
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