悪役執事

梛桜

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花の朔祭編

其の七

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 一足先に宿へと辿りつき、ルファが着替えるのを待っていると、直ぐに宿の裏でリーユお嬢様の気配がした。ゼルクとイスラも勿論一緒ですが、気配を消しているのでしょう。イスラに言って公爵家の馬車は違う場所へと既に移動してあるし、宿に置いていたリーユお嬢様や私達の荷物、そして祭りで買い求めた品物は既に屋敷へと送り返しています。屋敷に馬車が戻れば使用人達が全て察して片付けてくれるでしょう。
 ルファエルには効かない毒は、神経を麻痺させて動けなくする類のものだった。体調が悪くなった振りをして宿へと戻って着ましたが、そんな食事を仕込んできた宿は取り潰し決定でいいでしょう。
 それに、何人か無断で通してますしね。

「他国の公爵家だと侮られたのだとすれば…。思い知らせてあげましょうか」
「あら、思い知らせるだけで宜しいの?」
「リーユお嬢様」

 アメジストの瞳に微笑みを浮かべたリーユお嬢様が、口元を扇で隠し近寄ってくる。歩くたびに揺れる綺麗な長い黒髪が、花の香りを纏って目の前に着くのを、私は跪いて其れを待つ。

(あと、ゼルクとイスラも部屋に着いたようだな)

 態と攫われるならルファの方が気が楽なんですけどね、ですがリーユお嬢様は嫌がるでしょう。皆リーユお嬢様が攫われたとなると、手加減しないので後始末が大変なのですけどね。狙われたのはリーユお嬢様なのに、最近は楽しんでさえいらっしゃる。

「だって、皆私の執事ですもの。貴族は仕えてくれる民を守るもの。なら、私は皆を守るわ。主ですもの」
「心得ております、リーユお嬢様ヴェールをお付け致します」
「お待ち下さい、リーユ様」
「ルファ」

 着替えを終えたルファエルがリーユお嬢様に近付き、その果実のような赤い唇に自分のを重ねる。何かを口移しで渡したのでしょうが、リーユお嬢様の扇で隠れていたので、内緒話をしたようにしか見えません。
 コクリと喉を通ったそれに、リーユお嬢様はにっこりと微笑みを浮かべられました。

「さ、リーユお嬢様。体調が悪いのでしたら一先ずベッドへ」
「僕は医者か薬師を捜して参りましょう、祭りですから時間がかかるかもしれませんんが…」

 リーユお嬢様を抱き上げてベッドへと寝かせていると、其れと共に気配が身動ぎし、隣の部屋に誰かが潜んでいるのを察知した。ゼルクは裏口、イスラは屋根裏だと気配は伝えている。

(この部屋と両隣は私達が予約を抑えているのに、それを通すなんて、この宿の主人は少し考えが足りないようだ。料理はリーユお嬢様のお気に入りだったのですが、料理長もどうにかしないと)

 本当に、このアイクロメア王国は昔から何一つ変わらなくて、頭が痛いですね。

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