29 / 32
花の朔祭編
其の十二
しおりを挟む側妃の放った言葉に、そろそろリーユお嬢様がお怒りになるだろうなと予測し、秘密裏に事を運ぶという配慮は諦めました。まぁ、遠慮する必要もないのですがね?アチラは、公爵令嬢を誘拐されたのですから。
「噂に違わずの我が儘さですね、癇癪だけかと思ってました」
「この我が儘に付き合いたくない侍女達の間では、仕事は押し付け合いですよ」
視線を向けゼルクとイスラを呼び寄せ、イスラにはスティヒ家へと走ってもらう事にして、三人で行動開始致しましょう。
『忌々しい、魔女の娘なんてっ。馬車に括りつけて引き摺ってしまえばいいのよ』
『母上、流石にそれは人目が…』
『貴方は王子なのですよ!?他国の人民を気にする必要などありません。貴方は聖女である私の息子なのですから。折角王太子にまでしたのに、この娘の所為で…』
馬車の中からは、傲慢でしかない会話が聞こえる。その会話に、馬車周辺の空気が明らかに変わっていく。ピリッと張り詰めた威圧感は、居心地を悪くさせるはずなのに、変わらずに会話を続ける側妃様はやはりエアレズの母親ですね。
「相変わらずの態度に、遠慮せずにいけそうです」
「私情は控えろよ、ゼルク」
「エアヴァル様も、殺気が駄々漏れですよ」
からかう様に言って花が咲いたかのような笑顔を浮かべるゼルクを窘めると、またからかわれてしまった。殺気が漏れているなら、ルファが先に教えてくれているはずだろ。溜息を零し内ポケットに入れていた書状をゼルクに渡し準備に入るとしましょうか。
「使いたくありませんでしたが、此方を。旦那様のサインが入った正式な書状です」
「はい、確かに」
「それで、あの側妃が従うとは思えないけどね。僕はリーユ様の警護に」
悠長に構えて居ましたが、これ以上待っていては大切なリーユお嬢様に怒られてしまいます。ゼルクが馬車の前に出て書状を見せると同時に扉を開き、此方を向いて驚きの表情をしている、エアレズに微笑みを向けてやりました。
「懲りないようだな、リーユお嬢様を返して頂きましょう」
「お、お前は!?」
「遅いわ、ヴァル」
「申し訳ありません。直ちに終わらせて御覧に入れますので」
私の声に身体を上げたリーユお嬢様に怒られてしまいました、自分でヴェールも取ってしまったので、相当側妃様の言葉が気に触ってしまったようです。にっこりと微笑みを浮かべているからこそ、リーユお嬢様の怒り具合がわかるといえばいいでしょうね。
(手加減無用だと、リーユお嬢様の目が言ってます)
10
あなたにおすすめの小説
彼女が高級娼婦と呼ばれる理由~元悪役令嬢の戦慄の日々~
プラネットプラント
恋愛
婚約者である王子の恋人をいじめたと婚約破棄され、実家から縁を切られたライラは娼館で暮らすことになる。だが、訪れる人々のせいでライラは怯えていた。
※完結済。
悪役令嬢のビフォーアフター
すけさん
恋愛
婚約者に断罪され修道院に行く途中に山賊に襲われた悪役令嬢だが、何故か死ぬことはなく、気がつくと断罪から3年前の自分に逆行していた。
腹黒ヒロインと戦う逆行の転生悪役令嬢カナ!
とりあえずダイエットしなきゃ!
そんな中、
あれ?婚約者も何か昔と態度が違う気がするんだけど・・・
そんな私に新たに出会いが!!
婚約者さん何気に嫉妬してない?
悪役令嬢ですが、兄たちが過保護すぎて恋ができません
由香
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢・セレフィーナに転生した私。
破滅回避のため、目立たず静かに生きる――はずだった。
しかし現実は、三人の兄による全力溺愛&完全監視生活。
外出には護衛、交友関係は管理制、笑顔すら規制対象!?
さらに兄の親友である最強騎士・カインが護衛として加わり、
静かで誠実な優しさに、次第に心が揺れていく。
「恋をすると破滅する」
そう信じて避けてきた想いの先で待っていたのは、
断罪も修羅場もない、安心で騒がしい未来だった――。
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
幼馴染みが描いた悪役令嬢ものの世界に「メイド」として転生したので、6年後の断罪イベントをどうにか回避したい
ゆずまめ鯉
恋愛
通勤途中、猫好きではないのに轢かれそうな黒猫をうっかり助けてしまい、死んでしまった主人公──水縞あいり(26)
鳥の囀りで目を覚ますとそこは天国……ではなく知らない天井だった。
狭い個室にはメイド服がかかっている。
とりあえず着替えて備えつけの鏡を見ると、そこには十代前半くらいの子どもの姿があった。
「この顔……どこか見覚えが……」
幼馴染みで漫画家、ミツルギサイチ(御剣才知)が描く、人気漫画「悪役令嬢が断罪されるまで」の登場人物だということに気がつく。
名前はミレア・ホルダー(本名はミレア・ウィン・ティルベリー)
没落貴族の令嬢で、現在、仕えているフランドル侯爵によって領地と洋館を奪われ、復讐のために、フランドル侯爵の長女イザベラが悪役令嬢になるのを止めず、むしろ後押しして見事断罪されてしまうキャラだった。
原作は未完だが、相談を受けていたのでどういう結末を迎えるのか知っている。
「二期アニメもまだ見てないし、どうせ転生するなら村人Aとかヒロインの母親がよかった……!!」
幼馴染みの描く世界に転生してしまった水縞あいり=ミレアが、フランドル侯爵家で断罪回避するべく、イザベラをどうにかお淑やかな女性になるように導いている途中。
病弱で原作だと生死不明になる、イザベラの腹違いの兄エミールに、協力してもらっているうちに求愛されていることに気づいてしまい──。
エミール・ディ・フランドル(20)×ミレア・ウィン・ティルベリー(18)
全30話の予定で現在、執筆中です。2月下旬に完結予定です。
タイトルや内容が変更になる場合もあります。ご了承ください。
悪役令嬢ってもっとハイスペックだと思ってた
nionea
恋愛
ブラック企業勤めの日本人女性ミキ、享年二十五歳は、
死んだ
と、思ったら目が覚めて、
悪役令嬢に転生してざまぁされる方向まっしぐらだった。
ぽっちゃり(控えめな表現です)
うっかり (婉曲的な表現です)
マイペース(モノはいいようです)
略してPUMな侯爵令嬢ファランに転生してしまったミキは、
「デブでバカでワガママって救いようねぇわ」
と、落ち込んでばかりもいられない。
今後の人生がかかっている。
果たして彼女は身に覚えはないが散々やらかしちゃった今までの人生を精算し、生き抜く事はできるのか。
※恋愛のスタートまでがだいぶ長いです。
’20.3.17 追記
更新ミスがありました。
3.16公開の77の本文が78の内容になっていました。
本日78を公開するにあたって気付きましたので、77を正規の内容に変え、78を公開しました。
大変失礼いたしました。77から再度お読みいただくと話がちゃんとつながります。
ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる